第三十一話 妖精の森へ出発!
「そうか!いや、良く分かった!」
「ハンク、疑ってすまなかった!!許してくれ!!」
村長はハンクに頭を下げました。
「分かればいい。疑われるのは、子供の頃から慣れているからな」
「それではハンク。その人たちと一緒に、妖精の杖を探しに行ってくれるのだな?」
「あぁ、村長さんの奥さんも、いつまでもその姿じゃ困るだろうからな」
「すまんハンク!よろしく頼む」
「その代わり、俺が帰って来るまで、ルナをここで預かってもらえないか?」
「・・・・・・・・」
「ダメだ!お前は一緒に連れて行けない!とても危険な所なんだ!!」
「・・・・・・・・」
「お~っ、ほっ、ほっ、ほっ・・・。それは良い考えですわ!」
「このお嬢様が行けるような場所ではございませんからね!」
「ご安心なさい!このお嬢様は、わたくしが責任を持ってお預かりいたしますわ!」
そう言うと、貴族風の夫人は、ルナをハンクから引き離しました。
「よし!じゃ、行こうか。フレディア、カーナ!」
「う、うん・・・」
村長の家を出る時、フレディアは、ルナが気になって立ち止まりました。
その時です。
「いけませんよ!あなたはわたくしがお預かりいたします!!」
ドン!
ルナは夫人を突き飛ばし、家を出ようとしていたハンクにしがみつきました。
「・・・・・・・・」
「お、おい、ルナ!」
「・・・・・・・・」
ルナはハンクにしがみついて、離れようとしません。
その必死な姿を見たフレディアとカーナは、二人を引き離してはダメだと直感しました。
「ねえ、ハンク!ルナも連れて行ってあげようよ・・・」
「言っておきますけどハンク!あたしたちって、けっこう強いのよ!」
フレディアとカーナは、ルナが一緒に行けるようハンクにお願いしました。
「まぁ、確かにお前たちはCランクの冒険者だったな・・・」
「ルナの事は、わたしたちで守ってあげるから!」
「・・・・・・・・」
「ふ~~~っ!仕方がないな、一緒に行くか!」
フレディアとカーナの必死の説得で、ルナも一緒に行く事になりました。
ルナとてもは嬉しそうにしています。
貴族風の夫人は、忌々しそうにハンク達を睨みつけていましたが、足元にスカーフが落ちている事に気付きました。
先ほどルナが突き飛ばした時に落とした物です。
「こ、このスカーフは!!」
拾ったスカーフを広げた夫人は、驚きの声を上げました。
「間違いありませんわ!やはりあの娘は・・・」
魔物の巣窟となっている坑道を、探索しながら進むというので、フレディアたちは入念に旅の準備を行いました。
目的の妖精の里まで何日かかるのか分からないので、食料と、お菓子をどっさりと買いこみました。特にお菓子はフレディアとカーナが入念に時間をかけて選んでいるので、ハンクはすごくダルそうに見ています。
けど厳選したお菓子をルナに渡すと、すごく喜んでいたので、ハンクも納得したようです。
「女の子って、こんな物が好きなのか・・・」
ルナからもらったアメをなめながら、首をかしげています。
次に訪れたのは武器屋です。
フレディアとカーナの武器は、ミントの町で予算10ゴールドで買った量産型のチャッチイ武器なので、今回一新する事にしました。
お金はBランクの依頼で稼いだお金がまだ残っているので、ちょっといい武器を買います。
フレディアは70ゴールドのロングボウを、カーナは槍先にミスリルを使った85ゴールドのロングスピアを買いました。
ルナは回復魔法が得意なので、魔石が埋め込まれたロッドを80ゴールドで買います。
ハンクは、今使っているブロードソードと、ミスリルソードの2本を鍛冶屋で研いでもらいました。ハンクは怪力の持ち主なので、重い剣を片手で振り回す二刀流です。
魔法は、坑道や洞窟での戦闘に特化している、土属性の魔法を得意としています。
魔法といえば、天使のフレディアとカーナがずば抜けていますが、ルナもかなりの魔力を秘めていたのには、二人とも驚いていました。
『フレディア』
・リカバー・・・・味方全体に傷の治癒と体力の回復。
・フラッシュ・・・強烈な光で敵を盲目状態にする。
・アーク・・・・・レベルは3段階あり、敵全体を聖なる光の力で殲滅する。
アークⅡ(神の裁き)・アークⅢ(断罪)
・???・・・・・秘密の必殺技だそうです。
『カーナ』
・そよ風・・・・・味方全体の体力を回復。
・さわやかな風・・味方全体に毒と睡眠状態の治癒。
・涼やかな風・・・味方全体に混乱状態の治癒。
・おくびょう風・・洞窟やダンジョンからの脱出。
・突風・・・・・・敵全体に風属性のダメージを与える。
・木枯らし・・・・敵全体に風属性のダメージと凍結効果を与える。
・大旋風・・・・・敵全体に風属性の大ダメージを与える。
『ルナ』
・ヒール・・・・・味方単体の体力を回復。
・キュアー・・・・味方単体の毒の治療。
・ガード・・・・・味方全体に物理攻撃からの防御。
・マジックバリア・味方全体に魔法攻撃からの防御。
・パワーアップ・・味方単体の攻撃力のアップ。
『ハンク』
・石つぶて・・・・敵全体に石を放つ。
・土質変化・・・・土を柔らかくしたり、固めたりする。
「よし!準備は整った。さっさと坑道を突き抜けるぞ!」
ハンクの号令で、フレディア達は坑道の中へ入って行きました。
入り口から少し進むと、もう辺りは真っ暗闇です。
魔法の得意な三人娘は、魔道具の『ホタルン』をかざしました、すると少し緑色のかかったやわらかい光が辺りを照らします。
この魔道具は、金細工で作られた籠の中に、魔力に反応して光る蛍石が入っており、微量の魔力に反応して明るく光る仕組みになっています。
お値段は一つ70ゴールドとお高いのですが、ずっと使えるアイテムなので、ダンジョンの探索には必需品です。それにこの蛍石はジーノの村の特産品でもあり、ミスリルに代わる資源として、いま注目されている物でした。
フレディアたちは、ホタルンを腰にさげて暗い坑道を進みます。




