第三十話 ハンクの回想
ハンクが鉱山で働くボムじいさんに拾われたのは、まだ幼い頃でした。
その頃のハンクはまだ気が弱く、村の子供たちから毎日いじめられていました。
「やい、狼人間!この村から出て行け!!」
バシ!
「おまえ、人間じゃないんだろ!」
「ここは化け物が住むところじゃないんだぞ!!」
バシ!バシ!
「お前なんか、この村から出て行け!」
バシ!バシ!バシ!!
「こら~~~~~っ!!」
「何をしている!!この悪ガキどもめ!!」
「あ!まずい!ボムじいさんだ!!」
「にげろ~~~!!」
ドタ、ドタ、ドタ、ドタ・・・・・・。
三人の悪ガキどもは、一目散に逃げだしました。
そして安全な場所まで逃げると、そこから大声で叫びます。
「や~~~い!オオカミ男や~~~~い!!」
「こら~~~~~~っ!」
「大丈夫か、ハンク!」
「うわ~~~~ん!」
「うわ~~~~ん!」
「よし、よし・・・。もう泣くなハンク・・・」
「うわ~~~~ん!じいちゃん、ぼくは人間じゃないのか?」
「何を言うとるか!お前はちゃんとした人間の子供じゃ!」
「うわ~~~ん。どうして僕の耳はみんなと違うの!?」
「どうして、僕だけシッポがあるの?」
「うわ~~~~ん・・・」
「・・・・・・・・・・」
「ハンクよ、泣くのはもうおやめ・・・。お前は、みんなと少しだけ姿が違っているだけじゃよ・・・」
「後は、な~んにも変わっちゃおりゃせん!立派な人間の男の子じゃ!」
「ひっく、ひっく・・・」
「ハンクよ、人間とは弱い生き物じゃ。だから、自分より弱い者を見つけて、いじめたり、からかったりするのじゃ」
「自分の方が偉いと思いたいんじゃよ」
「ひっく、ひっく・・・」
「だからハンク。お前は強くならんといかん!」
「弱い者をいじめる奴らは、自分より強い者や、優れた者には何もようせん、臆病者じゃからの!」
「ひっく、ひっく・・・」
「だが、強いだけではならんぞ。やさしい心を持たなければ、人は付いてこんからの」
「ハンクよ!強くてやさしい男になるのじゃ!そうすれば、誰もお前をいじめたりはせんじゃろう」
「それどころか、きっとお前を慕う者も出てくるはずじゃ」
「うん、ぼく、強くなる!!」
「そうじゃ、その意気じゃ!お前なら、きっとなれるぞ!!」
「うん!」
「それからな、ハンク。仕事のできる男にならんといかんぞ」
「仕事のできる男?」
「そうじゃ!仕事が出来れば、たとえ一人になっても、食うには困らんからの」
(わしも、もう歳じゃ・・・。この先いつまで一緒にいてやれるか分からん)
(それまでには、一人でも生きて行けるようにしてやらねば・・・)
「じいちゃん!ぼくもじいちゃんと一緒に仕事をするよ!」
「おぉ、そうか!お前も仕事をするか!」
「うん、やる!!じいちゃん、ぼくに山の仕事を教えて!」
「よし、よし・・・。山の仕事はきついぞ!」
「じいちゃん、ぼくがんばる!!仕事の出来る、やさしくて強い男になるんだ!!」
「・・・・・・・・」
「あぁ、すまんルナ。少し昔を思い出していたんだ・・・」
ルナに言われ、ハンクはフレディア達に向き直りました。
「あの~。こんな事を聞くとたいへん失礼なのですが・・・」
「その人、さっきからひと言も話さないのですけど・・・」
「もしかして・・・」
カーナが恐る恐る聞きました。
「あぁ、この子の名前はルナ。見ての通り、無口な女の子さ!」
(む、無口・・・)
「ところで、さっきの話だが・・・。引き受けてもいいぜ!」
「「やった~~~~!!」」
二人は大喜びです。
「ただし、言っておくが、俺は妖精の森へ抜ける道は知らない」
「それに、古い坑道はとても危険だ!無事にたどり着ける保証はないが、それでもいいのなら、引き受ける」
「もちろんです!よろしくお願いします!」
カーナは二つ返事で答えました、
「よし、じゃあ。今から村長の家に行って、俺とルナの事を証明してくれ!」
「俺が、この子をさらって来たのではないとな!」
「キャハハ!ラジャー!」




