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第三話 ミントの町(一)

「気合は入っておるのじゃが、どうも結果が伴わんのぉ・・・」


元気よく出て行ったフレディアを見送りながら、恋を取り持つ神様はつぶやいています。


「ところで恋を取り持つ神よ。今朝の新聞を見たか?」


「お、朝刊か?」

「いや、わしゃまだ見ておらんが、何か変わったニュースでもあったのかの?」


「うむ!天界の監獄から、バズエルが逃げ出しおった!」


「なに!バズエル!?堕天使バズエルか!!?」


「そうじゃ!あのずる賢くて、残忍なバズエルじゃ!」


「な、なんと・・・。監獄の監守たちは何をしておるのじゃ。よりによって奴を脱獄させてしまうとは!奴が再び地上に降りるような事があれば、大変な事になってしまうぞい」


「うむ。12年前の事件はひどいものじゃったからのう・・・」

「早く捕まればよいが・・・。」


心配する恋を取り持つ神様の言葉に、技術と創作の神も神妙な顔でうなずいていましたが・・・。


「ま、しかし、これは監守たちが何とかするじゃろう!」


「そうじゃの!わしらがここで心配しても仕方がない、どうせすぐに捕まるじゃろう。それよりどうじゃ、久しぶりに将棋でもやらんか?」


「おぉ、そりゃ、ええのう!では、お相手願おうかの・・・」


難しい顔して唸っていた二人でしたが、もうその事はすっかり忘れてしまっているご様子です。




「ありゃ?急いで出て来たから、道を間違えちゃった」

「ここは一体どこかな?」


町の入り口の看板に『ミントの町』と書かれています。

赤いレンガ作りの家が立ち並び、あちらこちらに畑や、農場が広がるとても美しい町です。

フレディアは『愛のキューピット』のお仕事をするため、さっそく町の人々の『心の声』を聞いて回る事にしました。


最初に声をかけたのは、町の入り口にいた男の子でした。


「おや?なんだ、気のせいか・・・。いま誰かに話しかけられたような気がしたんだけど・・・」


(う~ん、残念!この子はまだ恋をしていないみたいね・・・)


天使のフレディアの姿は、人には見る事が出来ません。フレディアの声も、時折吹くそよ風に聞こえるのでしょう。


次に声を掛けたのは、池の中を優雅に泳ぐ白鳥を眺めているおばちゃんでした。


「今年もまた白鳥が戻って来たね。季節はもうすぐ冬・・・。収穫祭の準備を急がなくちゃね」


おばちゃんは今、恋より収穫祭の準備で頭が一杯のようです。

失礼しました、すでに既婚者のようです。


北に位置するこの町は、冬の訪れが早く、農作物の収穫が済むと直ぐに冬がやって来ます。

雪が降る前に、町の人々は長い冬を過ごす準備に追われるのでした。


今度は、家の前で薪を割っている青年に声を掛けました。


「ふ~~っ。だいぶ作業が進んだな!さて、そろそろ薪をリンダの所に持って行こうかな・・・」


「あぁ、だけど困ったな・・・。収穫祭の後にあるダンスパーティー!」

「パートナーを決めなきゃいけないんだけど・・・。なんて言ってリンダを誘えばいいんだろう?」

「それに、彼女ならもうきっと誰かに誘われているだろうな・・・」

「はぁ~。やっぱり今年はあきらめるか・・・」


「あ~~っ!この男の子、リンダって子が好きなのね!これはチャンスだわ!!」

「よ~し!リンダって女の子を捜してみよっと!!」


恋の片割れを見つけたフレディアは、元気よく町の中を駆けて行きました。



「ここに、リンダはいるかな?」


フレディアは武器屋の中を覗いてみました。


「鉄は熱いうちに打たなきゃなんねえ!手を休めるなよ!」

「ジーノの村から、久しぶりに貴重なミスリルが届いたんだ。こいつを加工すれば、最高の武器が出来るってもんだ!」


店の中では、親方が鉄を打つ弟子を熱心に指導していました。


教会ではシスターと神父様が熱心にお祈りをささげています。


「今年も作物がたくさん収穫出来ました。これも大地の女神さまのお恵みです」


お祈りが終わると、二人はあわただしく収穫祭の準備を始めました。



あちこち捜しまわり、ようやくリンダを見つけたのは宿屋でした。

フレディアはフロントの女の子に声を掛けます。


「もうすぐ冬ね~。そろそろネロに暖炉の薪を持って来てもらわなきゃ・・・」

「だけど今年の収穫祭のダンスパーティー。ネロは誰をパートナーに選ぶのかしら?」

「心配だな・・・。薪を持って来てくれた時、聞いてみようかな・・・」

「でも、恥ずかしくて、そんな事聞けないわ!はぁ~っ、困ったな・・・」



「あ~~~っ!この子がリンダなのね!この子もネロの事が好きだったんだ~!!」

「やったー!よ~~し、二人をくっつけちゃおっと!!」

「ネロのところへレッツ・ゴー!!」



急いでネロの所へ走ったフレディアは、大きく深呼吸をしています。


「ひ、久しぶりだからドキドキするわ・・・」


「お、落ち着くのよ、フレディア!あなたなら大丈夫!」

「この子をネコや羊と思えばいいのよ!!」


ちょっと、違うような気がしますが、フレディアは何度も自分にそう言い聞かせ、キューピットの弓矢を構えました。


「よーく狙って・・・。 それっ!」


パシュッ!


キラリン!


ネロに矢が命中した瞬間、淡いピンク色の光が身体から溢れ出ました。


「うっ!ああっ!な、なんだろう、この胸のトキメキは!!」

「ダメだ!収穫祭のダンスパーティーは、リンダ以外に考えられない!!」

「よ~~し!!絶対にリンダをパートナーに誘うぞ!!」


そう叫ぶと、ネロは猛ダッシュでかけて行きました。


「リンダ!!今度の収穫祭のダンスパーティー。僕のパートナーになってくれないか?」


「まぁ、ネロったら!嬉しいわ!」

「勿論OKよ!一緒に行きましょう!!」


「やった~~!!これで7人目成功!!がんばって100人成功させて、私もオリビアみたいに、お休みもらおっと!!」


フレディアは嬉しそうに飛びはねています。


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