第二十四話 再びジーノの村へ出発
「なに!借金を返しに来ただと?」
「まさか、こんなに早く金が出来たなんて、信じられん・・・」
そう言うと高利貸しのオヤジは、ベゼルから受け取ったお金を数えて驚いていました。
しかし、何か企んでいそうな、悪い顔をしています。
(ちっ!これだけ早く金が返せるのなら、もう少しふっかけておけばよかったぜ!)
(おっ、そうだ!どうせ世間知らずのガキ共だ、もう少し稼がせてもらおうか・・・)
「おぉ、しかしよく頑張ったなベゼルよ!たいしたもんだ!!」
「だがな、残念だがお前が金を稼いでいる間に、利子がついてしまったんだよ」
「えっ、利子?」
「そうなんだ、後1000ゴールド・・・と、言いたいところだが・・・」
「まっ、お前の頑張りに免じて800ゴールドでいいよ!」
「あぁ、そんなに慌てる事はないぞ、ゆっくりでいいんだ」
「だが、あんまりゆっくりしていると、農場が売れちまうかもしれんがな・・・」
(へっ、へっ、へっ・・・。こっちは農場を返したくないんだよ)
(あの農場なら3000ゴールドでも買い手が付くはずだからな)
高利貸しのオヤジは、相手が子供だと思ってなめていますが、フレディアにはオヤジの悪企みは全てお見通しです。
(はぁ~。もうこの人最低ね!)
(ちょっと懲らしめてあげなきゃ・・・)
ガックリとうなだれているベゼルの横で、フレディアはキューピットの弓矢を出しました。
そしてフレディアが手に取った矢は『懺悔の矢』です。
それを高利貸しのオヤジに向けて構えました。
(あれ?フレディア、何をしているのかしら?弓矢を構えるカッコなんかして?)
クロマがフレディアの変な動作に気付き、不思議そうに見ています。
その横では、カーナが口を押えて笑いをこらえていました。
「反省しなさい!」
パシュッ!
キラリン!
高利貸しのオヤジに矢が命中した瞬間、淡い黄色い光が身体から溢れ出ました。
「はうっ!こ、これは・・・」
「あぁ!わしはなんてひどい男なのだ!こんな親孝行な息子を騙したりして!」
「おぉ、神よ、わしの罪を許してください!」
「本当の借金は1000ゴールドなのに、わしは倍の金額を請求しました!」
「神様!どうかわしに天罰をお与えください!」
そう言うと、オヤジはおいおいと泣き出し、1000ゴールドをベゼルに返し、何度も何度も謝りました。
「よかったね、ベゼル!さっ、早く帰ろ!」
懺悔の矢の効果が切れたらややこしいので、フレディアはベゼルを促して、さっさとこの場を離れました。
ベゼルもクロマも、まるで狐につままれたような顔をしています。
そのまま四人は、ベゼルの家まで直行しました。
ベゼルの家は、農場の敷地の隅にある小さな羊小屋です。そこに家族三人で暮らしていました。もし農場を買い戻せなければ、そこも明け渡さなければならなかったのです。
家が見えると、ベゼルは嬉しさのあまり、走りながら大声で叫びました。
「母さん!姉さん!農場を取り戻したよ!!」
ベゼルの声に驚いたお姉さんが、急いで外に出てきました。
「姉さん!これ見て!農場の権利書だよ!取り戻したんだ!」
「まぁ、ベゼル!あなたどうやって・・・」
「ありゃ?お姉さんって!」
「ベゼルのお姉さんって、ハンナなの?」
「ええ、そうよ!」
ベゼルとハンナの姿を、嬉しそうに見ているクロマが教えてくれました。
(そっか!じゃあ、魔の三角関係は消滅ってことね!)
(だったら、さっさと・・・)
「フレディア、なにか企んでいるの?」
「少し悪い顔になっているわよ」
「キャハハ!別に!」
カーナの質問に、フレディアは笑ってごまかしました。
その日の夕食は、ベゼルのお家でいただく事になりました。
農場を取り戻したお祝いと、クロマのDランク昇格祝い。それにフレディア達とのお別れ会と言う、ごっちゃ混ぜのお祝いです。
そして、そろそろお開きの時間となった時、フレディアはこっそりベゼルを外に連れ出しました。
「ねぇ、ベゼル。あなたはどうするの?」
「ギルドを続けるの?それともギルドを辞めて農場を継ぐの?」
「俺は魔物と戦うより、ヤギの乳でチーズを作ったり、羊の毛を刈ったりする方が好きだから、農場を継ごうと思っているよ」
「分かった!」
「で、クロマはどうするの?」
「えっ!」
「あなたがギルドをやめたら、クロマは一人よ!」
そう言うと、フレディアはベゼルの心の声に耳を傾けます。
「・・・・・・」
(俺は今までお金を貯めて、農場を取り返す事しか考えていなかったな・・・)
(そんな俺を、クロマは必死に支えてくれたんだ!)
(今度は俺がクロマにお返ししないと・・・)
(でも、どうやって?)
(俺と一緒に農場をやってくれって言う?)
(いや、でも断られたら恥ずかしいし・・・)
(こんな悩みは誰に相談すればいいのかな・・・)
(う~~~~ん・・・・)
「あ~!もうじれったい!!」
そう言うと、スタスタとベゼルから離れ、キューピットの弓矢を構えました。
「ベゼル、男になりなさい!」
「えっ?」
そう言うと、問答無用で矢を放ちました。
パシュッ!
キラリン!
ベゼルに矢が命中した瞬間、淡いピンク色の光が身体から溢れ出ました。
「うっ!」
「そうだ!俺は何を悩んでいるんだ!」
「答えは最初から決まっているじゃないか!!」
そう言うと、クロマの所へ走って行きました。
「やった~~!!これで8人目成功!!」
「さて、じゃあ、そろそろ帰ろうかな?」
翌日、お菓子をいっぱい買い込んで、二人はジーノの村へ旅立ちました。




