第二十三話 Bランクの依頼
次の日の早朝、チームライトブリーズは、ウードラスの森へ出発しました。
危険な依頼なので、本当はフレディアとカーナだけで受けるつもりでしたが、それではベゼルに賞金を渡せないので、嫌がるベゼルとクロマを強引に説き伏せ、チームで受ける事にしたのです。
ですが、ベゼルとクロマは気が気ではありません。
いくら常識外れの強さを持つフレディアとカーナがいても、Ⅾランクの魔物としか戦ったことのない二人には、まさに処刑台に進むような心境だったに違いありません。
町を出て5時間ほど歩くと、鬱蒼としたウードラスの森に到着しました。
大きな木々が光を遮り、昼間なのに薄暗い森の中を奥へ奥へと進んで行くと、やがてどこからか狼の遠吠えが聞こえてきました。
「「ひえ~~~っ!」」
ベゼルは顔を真っ青にして、悲鳴を上げました。
気丈なクロマも、さすがに恐ろしさで足がすくみ、ベゼルの手を握りしめています。
(ふふん!こういう状況が二人の愛の絆を深めるのよね!)
フレディアは愛のキューピットの先輩であり、指導役のオリビアから、二人の愛を深める講義を受けていたので、いま自分がそれを実践出来ているのがすごく嬉しいのでした。
(フレディアったら、さっきから何をニヤニヤ笑っているのかしら?)
そんなフレディアを見て、カーナはちょっと不気味に思っています。
そうこうすると、ガサガサという木々のこすれる音が、段々とこちらへ近づいて来ます。
もうベゼルとクロマは、立っているのが精一杯です。
「そろそろ来るわね」
「カナちゃん、お願いね!」
「オッケー!」
そう言うと、カーナは風の魔法でベゼルとクロマの周りに結界を張りました。
「二人はあたしが守るから、もういいよ!」
カーナがそう言うと、フレディアは一人でざわつく場所へ向かって行きました。
「グオ~~!」
「ガウ~!」
「ギャワン!」
一瞬騒がしい音が聞こえたようですが、すぐに森は元の静けさを取り戻しました。
「おまたせ~」
「フレディアお疲れ~!」
「さっ、帰ろうか!」
何が起きたのかさえ分からず、きょとんとしているベゼルとクロマでしたが、フレディアから帰ろうと言われた二人は、もげるのではないかと心配するほど、首を縦に振っています。
「なに~!Bランクの依頼が完了しただと~?!」
ギルドではギルマスが大きな声で吠えています。
フレディアは魔法のアイテムボックスから、ブルーウルフを次々に取りだし、そして最後に大きなワーウルフを引っ張り出しました。
ブルーウルフだけで24匹もいます。
「わ、分かった・・・」
「報酬は清算して明日の朝に渡すから、また来てくれ」
そう言うと、山積みになった狼を見て、茫然と立ちつくしています。
「バイ、バ~イ!!」
フレディアたちは、フローラに手を振って帰って行きました。
今回の報酬金額は、合計で3000ゴールドになりました。
依頼書の金額が2000ゴールドで、ブルーウルフ24匹の素材等の金額が1000ゴールドです。
お金をもらうと、フレディアはベゼルに2000ゴールドを渡しました。
「はい、これ!」
「えっ!な、なんだよ、これ!?」
「こんな大金もらえる訳ないよ!」
「でも、これで農場が買い戻せるよ!」
「いや、そうだけど、そういう訳には・・・」
フレディアがいくら勧めても、ベゼルは首を縦に振らないので、今度はカーナが説明しました。
「今回はチームで行動したんだから、いいのよ!」
「四人で割ったら一人750ゴールドでしょ?」
「ベゼルとクロマの取り分が1500ゴールド」
「後の500ゴールドは、あたしたちが留守の間の補填金よ!」
「だって、クロマとベゼルだけじゃ、チームの活動が出来ないでしょ?」
(わ~!さすがはカナちゃん!あったまいい~!)
フレディアは感心してカーナを見ています。
フレディアたちの気持ちを察したクロマは、いずれ自分たちにできる事で、この恩に報いようと心に誓い、お金を受け取る事に決めました。
「ありがとうフレディア、カーナ!」
「ベゼル、このお金、ありがたく受け取りましょう!」
「農場を買い戻して、ハンナを喜ばせてあげなくちゃ!」
「分かったよ、ありがとうフレディア、カーナ!」
(うわっ!クロマって、なんていい人なの!)
(あぁ!でも、この恋は一体どうなるのかしら?!)
恋の行方が気になって仕方がないフレディアは、農場を買い戻すのに付いて行く事にしました。




