第十八話 パーティー誕生
フレディアとカーナはギルドマスターの執務室で、フローラが入れてくれたお茶を飲みながら、出されたお菓子を美味そうにポリポリ食べていました。
ビスケットのようなお菓子でしょうか?フレディアの周りにはお菓子の食べこぼしが、いっぱい落ちています。
少しはカーナのお行儀を見習ってほしいものです。
ギルドマスターはと言うと、別室でムーンライトのメンバーたちと何やら話をしています。
二人の処遇について、意見を交わしていると思われます。
そしてしばらくすると、部屋から出て来てフレディアたちの前にドッカと座りました。
「待たせてすまなかったな」
「わしとしては、色々と言いたい事もあるのだが・・・」
そう言って上を向いて、ふ~っとため息をつくと・・・。
「結論から言うと、君たちは合格だ!」
「「やった~!」」
二人は大喜びです。
「ごほん!」
「君たちの実力から言うと、恐らくCランク以上だと思うが、ギルドの決まりでEランクから始めてもらう」
「依頼を達成して100ポイント貯めれば、次の昇格試験が受けられるからな」
「そして次の試験からは、実力に応じたランクを選べるから頑張ってくれ」
「ただし、ここで受けられるのはCランクまでだ」
「Bランク以上は、ロファの街にある本部で受ける事になっているからな」
「それとギルド員の証となるバッチは、常に見える所に付けておくように」
そう言うとバッチについて説明してくれました。
虹色のバッチ・・・Sランク
金色のバッチ・・・Aランク
銀色のバッチ・・・BランクとCランク
銅色のバッチ・・・ⅮランクとEランク
ちなみにSランクはまだいないそうです。
「それで異論はないな?」
「「は~い」」
「細かい規則は、受付にいるフローラから聞いてくれ」
「それとギルマスの権限で、君たちへの干渉は一切禁止と、他の冒険者には通達した」
「もし、君たちを無理やりチームに勧誘するような奴がいたら、わしに報告して欲しい」
「ラジャー!」
「では、これを受け取ってくれ」
そう言うと、銅色のプレートにEの文字が刻印された認定バッチと証明書。
それと50ゴールドを二人に渡しました。
「そのお金は、旅の途中に君たちが倒した魔物の代金だ」
「ムーンライトから渡してくれと頼まれた」
「やったね、カナちゃん!これでお菓子を買おうか!」
(お菓子って・・・。やっぱりこいつら子供じゃねえか!)
(試験を受けさせたのは失敗だったか・・・)
「と、とにかく、無理をせずにやってくれ」
そう言って二人を送り出しました。
部屋の外では、嬉しそうにバッチを付けた二人を、冒険者たちが仲間になって欲しそうに見つめています。
受付でフローラさんからギルドの説明を受けている時も、フレディアにはたくさんの『心の声』が流れてきました。でも、それはとても小さな声で、フレディアにはあまり関心のない事だったので、軽く聞き流していました。
ところがそんな中、とても気になる声が聞こえて来たのです。
「ねぇ、ベゼル。あの子たち、私たちとチームを組んでくれないかなぁ?」
「無理だよクロマ」
「俺たちみたいな、新米の弱っちいEランクの冒険者とは組んでくれないよ」
「でも、早く農場を買い戻して、ハンナを喜ばせてあげたいのでしょう?」
「だったら、強い人と仲間になって、お金を稼がなきゃ・・・」
「それは、そうだけど・・・」
(あっ、そうだ!ハンナって、ベゼルの事が好きなレストランの・・・)
(あの子がベゼルね!これはチャンスだわ!)
「ねぇ、フローラ。Eランクって4人以上で行動しなきゃダメなんでしょ?」
「ええ、そうよ。もしくは仲間にCランク以上が1名いれば3人でも問題ないわ」
「でも、普通は上位ランクの人は下位のランクとは一緒に組みたがらないけどね!」
「でも、あなた達は特別だから、きっと大丈夫かな?」
「ふ~~~ん・・・」
「ねぇ、ねぇ、カナちゃん。じゃあ二人はわたしが選んでもいい?」
「いいよ!フレディアにお任せするわ」
「ラジャー!」
フローラの説明が終わると、フレディアはベゼルの所へ直行しました。
「こんにちは!わたしはフレディア」
「ねぇ、わたしたちの仲間になってくれないかなぁ?」
「えっ?!」
まさか、フレディアたちから仲間になりたいなんて、あまりの出来事に、ベゼルはビックリしています。
「えっ?お、俺たちの?」
「お、俺たちって、ギルドでも最弱のチームなんだけど・・・」
「そうなの?」
フレディアがきょとんとしていると、クロマが慌てて間に入ってきました。
「あ、あの! 私たち弱いけど、頑張りますので、是非仲間に入れてください!」
(そうよ!ベゼルの夢をかなえるためなら、私は何だって頑張れるわ!)
「キャハハ!いいよ!」
「ねっ、カナちゃん!」
「もっちのロンよ!」
カーナはそう言うと、親指を立てて見せました。
あっと言う間に話が決まったので、ベゼルはポカンと口を開けて突っ立ったままです。
こうして四人のEランク冒険者のパーティーが誕生しました。
その様子を見ていた他の冒険者たちは、ガックリと肩を落とし、大きくため息をついて、すごすごと帰って行きました。
「じゃぁ!ごはんを食べにいこっか!!」
「フレディアに賛成!」
「えっ?ご、ごはん?」
(い、いきなり、ごはんって・・・)
ようやく正気に戻ったベゼルは、また気が遠くなりかけましたが、クロマが慌ててフォローしました。
「そ、そうね!親睦は大事だわよベゼル!」
そう言うと、ベゼルの腕をつかんでフレディアの後からついて行きました。




