第十伍話 魔物との遭遇(二)
「お、おい!今のは何だったんだ?魔法なのか?」
槍使いのコローニが、魔法使いのシラに聞きました。
「分からないわ。だって詠唱なんて無かったし、全部一瞬で倒したのよ?」
「こんな魔法あり得ない・・・」
「確かに!ホーネットを倒したのは風の魔法のような気がするが、オークを倒したのは見当がつかん」
僧侶のマイオスが、腕を組んで首を傾げています。
「オークが倒れる寸前、体が光ったような気がしたのだが・・・」
「あたしも見えた!少しだけど、光ったような気がしたよ」
マウロの言葉にマルティーが同意しています。
「えっ?だとしたら・・。ま、まさか光の魔法なの?!」
「わたし、そんなの見た事がないわ!」
シラは驚いてフレディアを見ました。
数ある魔法の中でも、光属性の魔法は最上位にランク付けされています。
僧侶などの聖職者が使う回復魔法も光属性ですが、それらは補助系の魔法で、ごく一般的に普及していますが、こと攻撃魔法となれば話は別です。
魔物は強ければ強いほど闇の力が増大します。それに打ち勝つ魔法が光の魔法であるため、光属性の攻撃魔法は最強魔法と言われているのです。
人でその魔法を使えるのは、勇者だけだと言われていますが、もちろんフレディアは天使なので、その力は人の比ではありません。
「カナちゃん、ミントの町に帰ったらどうする?」
「そうねぇ・・・。護衛を雇うにも、あたしたちお金がないし・・・」
「困ったね~」
「何か簡単にお金がもらえる方法はないかしら・・・」
二人がこれからの事を相談していると、リーダーのマウロがフレディアの所へやって来ました。
「すまない!仲間を代表してちょっと聞くが・・・」
「あの~。君たちって、いったい何者なの?」
「キャハハ!天使だよ!」
「て、天使?!」
「確か、最初に会った時もそのような事を言っていたけど・・・」
「天使ねぇ・・・」
首を傾げながら、すごすごと仲間の所へ帰って行きました。
そのまま昼食を摂った後、再び出発する事になりましたが、マウロがフレディアたちに提案してきました。
「さっき倒した魔物だけど、一応俺たちが回収しておこうか?」
「えっ?魔物の回収・・・ですか?」
「あの、みなさん魔物を倒したら、必ず回収していますよね?」
「どうしてですか?」
カーナは前から疑問に思っていた事を尋ねました。
「あぁ、ギルドに持ち帰って換金してもらうんだよ」
「えっ!魔物って、お金になるんですか?」
「そうだよ」
「えっ、じゃあ・・・」
「あぁ、もちろん君たちが倒した魔物もそうだ」
「だけどギルドの会員じゃなかったら、引き取ってもらえないからね」
「今回は俺たちが君たちの代わりにやってあげるよ」
「やった~!」
フレディアとカーナは大喜びです。
「カナちゃん、魔物を一杯倒したら、おやつも一杯買えるね!」
「そうね!でもギルドの会員でなければダメって話だから・・・」
「ねぇフレディア!あたしたちも、ギルドの会員になった方がいいんじゃない?」
「会員?」
「えぇ、だってお金も稼げるし、それにDランクなら関所も通れるって兵士さんが言ってたじゃない!」
「本当だ!そうしょうカナちゃん!」
「ねぇ、マウロ!わたしたち、ギルドに入りたいんだけど!」
「えっ!?ギルドに入る?」
「う~ん、どうなんだろう・・・」
「たぶんいけると思うけど・・・」
マウロは後ろにいたコローニに尋ねました。
「確かに、ギルドは実力主義だから、年齢制限はなかった気がするな・・・」
「いけるんじゃねえか?」
「そうね。適性検査と認定試験があるけど、この二人なら問題ないわね」
シラがフレディアとカーナを見て、そう言いました。
「でも、Dランクだと4人以上のパーティでないと、関所は通れないわよ」
「未熟な冒険者たちが魔物の犠牲になる事が多いので、Dランク以下の冒険者は、4人以上のパーティーを組むことが義務付けられているの」
「そう!ソロで活動するには、Cランク以上でないとダメなのよ」
シラとマルティーが教えてくれました。
「そっか!じゃあギルドに入ってCランクになればいいのね!」
そう言うと、フレディアとカーナはハイタッチで盛り上がっています。
「ま、何とかなるっしょ!」
マウロはそう言うと、みんなに出発の号令を掛けました。
それからミントの町までの旅は楽勝でした。
魔物を倒せばおやつに換わる事が分かったフレディアたちが、全部倒してしまうのです。
しかも、いとも簡単に・・・。
こうなったら、さすがのCランク冒険者のムーンライトも、もう笑うしかありません。
そして翌日には無事ミントの町へ到着しました。




