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第百十三話 行方不明の王女様(三)

「賢者アルバン殿、いかかであろう?白い竜の出現と、生まれた我が子とは何か関係があるのだろうか?」


「・・・・・・・」


「王よ、率直に申してもよろしいかな?」


アルバンは、神妙な顔で王様に告げました。


「で、では!やはり、なにか良くない事が・・・」


「残念ですが、お子様の命は長くはありませぬ」


「なんですと!?」


「あと7年のお命かと・・・」


アルバンから宣告された王様の顔から、見る見るうちに血の気が引いて行くのが分かりました。


「そ、そんな!生まれたばかりの赤ん坊が、たった7年しか生きられぬとは!!」


「アルバン殿、なにかの間違いでは?」


王様は賢者アルバンに聞き返しますが、アルバンの予言は変わりませんでした。


「黒く恐ろしい雲が、お子様の行く手を遮っております」


アルバンは水晶玉を見ながら言いました。


「な、なに!?その雲の正体はいったい!?」


「未だかって見た事も無い、巨大な恐ろしい雲です。この運命から逃れる事は不可能かと・・・」


「で、では・・・。7年しか生きられないと分かっていても、このまま運命に任せるしかないと?」


「・・・・・・・・・」


「おぉ、神よ!何というむごい仕打ちを・・」

「やっと授かった愛しい我が子の命を、わずか7年でお召しになるとは・・・」


嘆き悲しむ王様を見て、アルバンは決心して打ち明けました。


「王よ・・・。ひとつだけ、手はあります」


「何と、それは本当ですか?!」


「だがそれをすれば、死ぬよりもつらい、過酷な試練を受ける事になるかと・・・」


「死ぬよりむごい試練!」


「それに打ち勝つことが出来ねば、死は避けられませぬ」


「そ、そんな!そんなむごい話があってよいものか!!」


「だが・・・。たとえ過酷な試練が待ち受けていようが、生きておればこそ・・・」


長い時間悩んだ末、王様はついに決心しました。


「わしは、あの子の運に賭けてみた!!」


「アルバン殿、どうかその方法を教えてくだされ!」


王様の揺るぎない決断を知ったアルバンは、その方法を王様に告げました。



「お子様を、女として育だてなされ!」


「な、なんと!あの子を女として育てると?!」


「さよう。お子様が10歳になるまで、女として育てるのです」


「そして、この事は誰にも話してはなりませぬ!」

「誰にも悟られず、時が来るまで王女として育てるのです!」


「お子様の命を救うのは、それしか方法がござりませぬ」





眼を閉じて、その当時のことを思い出しながら、王様は話して聞かせました。


「・・・と言う訳じゃ」


「なるほど、そうでしたか・・・」


ダークは涙を浮かべて、王様の話を聞いていました。



「ルナ殿。ルナ殿がなぜ息子の持ち物である、そのスカーフを持っていたのか、わしに教えてくださらぬか?」


もう一度王様に問われたルナは、急いでハンクの後ろに隠れてしまいました。

突然のルナの行動に驚いたハンクは、ルナにやさしく尋ねました。


「どうしたんだルナ?」


「・・・・・・・・・」


ハンクに聞かれても、ルナは黙ったままでいます。

その様子を見た夫人は、ルナが王女では無いと分かり、怒りをあらわに言いました。


「何という事ざましょ!王女とばかり思っていたのに、ただの小娘だったなんて!!」


「本当に腹立たしい!」


「言えない所を見ると、どうせスカーフは盗んだんざんしょ!」


この言葉にハンクはついにブチ切れました。


「ババア!ルナに何てことを言うんだ!!」


ドン!!


勢いよく突き飛ばされた夫人は、ジョルダンとバルガンにぶつかり、三人共もんどりうって倒れてしまいました。


ハンクはスラリと剣を抜くと、切っ先を夫人の喉に突き付けて大声で怒鳴りました。


「もう我慢の限界だ!!貴様ら三人を斬る!!」


「「「ヒヤ~~~ッ!!!」」」


三人とも青い顔をしてガタガタと震えています。


「バカ野郎!!ルナが人の物を盗んだりする訳がないだろう!!」


「しかも、こんな薄汚いスカーフ・・・」


夫人が落としたスカーフを見て、ハンクが急に固まりました。



「こ、これは!?」


「どうかしたの、ハンク?」


不審に思ったフレディアが尋ねました。


「これは俺のスカーフだ!」



「「「え~~~っ!!」」」


みんな声を揃えて驚いていますが、フレディアは変に納得しています。


「な~んだ!じゃあ、ルナが持っていても不思議じゃないよね?」


「だって、一緒に暮らしていたんだもん!」


フレディアの言葉を聞いたカーナが、心の中で叫びました。


(フレディア、そう言う問題じゃないでしょ!?)

(ハンクの持ち物って言う事自体が問題なんだから~!)


フレディアの言葉に、ハンクは戸惑いながら答えます。


「い、いや、これは・・・」


「ルナと知り合った時には、俺の手元にはなかったはず・・・」


「・・・・・・・・」


ルナが泣きそうな顔でうつむいているので、心配したカーナが優しく声をかけました。


「どうしてルナが持っているの?」


「・・・・・・・・」


それでもルナは黙ったままでいます。


そしてハンクの言葉に一番驚いたのは王様と王妃様でした。


「ハンク殿。い、いま、そのスカーフはご自分の物だと申されたが・・・」


ハンクの言葉を聞いた王様は、もう一度ハンクに確認しました。


「そうです!これは確かに俺のスカーフ!ボムじいちゃんから、そう聞きました」


「ボムじいさん?ハンクさん、その時の事を私たちに話してはいただけないでしょうか?」


王妃様もハンクにお願いしました。


「このスカーフを受け取った時のこと!?」


「このスカーフを受け取ったとき・・・」


「・・・・・・・・」



ハンクは、ボムじいさんとの最後の日の事を思い出しました・・・。



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