第百一話 帰って来たオリビア
その頃天界の神様たちは・・・
「恋を取り持つ神よ、次はおぬしの番じゃぞ!」
「う~~~む・・・。どれにしょうかな・・・」
「とりゃ!!うひゃ、ひゃ!セーフじゃ!!」
「う~~~む・・・。なか、なか、やるのぉ!!」
「さすがは恋を取り持つ神じゃ、ええ勘しておるわい!!」
「ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ!技術と創作の神よ!今度はおぬしの番じゃぞ!」
「う~~~む。どれにするべきか・・・・」
技術と創作の神様が悩んでいる時でした、一人の天使が慌ただしく家に入って来ました。
ダ、ダ、ダ、ダ、ダ・・・。
「神様、神様~~~!!大変や、大変!!」
「なんじゃ、騒々しい!」
「おぉ!オリビアではないか!旅行から帰って来たのか?」
技術と創作の神様と恋を取り持つ神様の二人は、驚いてその声の主を見ました。
部屋に入って来たのは、旅行に行っていた恋を取り持つ神様に仕えるオリビアでした。
オリビアは金色の髪に透き通ったブルーの瞳をしたとても美しい天使で、フレディアが間違えるほど、ミントの町のモモちゃんによく似ています。
「ちょうどよい所へ帰って来た。お前もこっちへ来てトランプをやらんか?」
「ト、トランプ?」
「いま、白熱のバトルを展開しておる所じゃ!この勝負が終わったら、お前もまぜてやるぞ!」
そう言って恋を取り持つ神様は、オリビアをトランプに誘いました。
「白熱の勝負って?神様たち、なんのゲームをしてんの?」
「ババぬきじゃ!!」
「はぁ~~~っ!?」
「バ、ババぬきぃ~~!?二人でババぬきやってんの?」
「ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ!ガードを引くときのスリルが、何ともたまらんのじゃ!!」
「・・・・・・・・」
(信じられへん・・・)
オリビアはジト目で神様たちを見ましたが、ここにフレディアがいない事に気付きました。
「あれっ?フレディアはどこに行ったん?」
「フレディアなら、いまセレノス殿の用事でミントの町へ行っておるぞ」
「もう長いこと帰ってこんので、ちょっと心配しておったところじゃ」
技術と創作の神様が教えてくれました。
「ふぅ~~~ん。ミントの町かぁ~~~」
「!!!」
「ミ、ミント~~!!?そうや、大事なこと言い忘れとったわ!」
「神様!トランプなんかで遊んでる場合とちゃうで~!!」
「なんじゃ?何かあったのか?」
技術と創作の神様がオリビアに尋ねました。
「ここへ帰ってくる途中にロファの近くを通ってんけどな!」
「そこに5つの塔に囲まれた場所があってな、その真ん中やったわ!」
「なんや、ごっつい真っ黒な雲がグルグルと渦を舞いとったで!!」
「なに!黒い雲じゃと?」
恋を取り持つ神様が、驚いて聞き返しました。
「ものすごい邪悪な気配で、全身が針で刺されたみたいにピリピリしたわ!」
「あれは、一体なんやろか?」
「「ダグダルム神殿じゃ!!」」
二人の神様が同時に答えました。
オリビアが目にしたのは、ちょうどダグダルムの神殿が地上に姿を現すところだったため、神様たちの言っている意味が分からず、オリビアはもう一度聞き返しました。
「えっ!ダグダルム?!」
「バズエルの奴が復活させおったのじゃ!!」
深刻な顔で言う技術と創作の神様に、恋を取り持つ神様が慌てて言いました。
「こりゃ、えらいこっちゃ!!フレディアが大変じゃぞ!!」
「うむ!セレノス殿の用事とは、この事であったに違いない!!」
「急いで監獄の警備兵に知らせねば!」
慌てて出て行こうとする恋を取り持つ神様に、技術と創作の神様は待ったをかけました。
「いや、ちょっと待てよ。セレノス殿がフレディアを呼んだのには、なにか理由があるからじゃろう?」
恋を取り持つ神様も、立ち止まって考えました。
「それもそうじゃのぉ・・・」
「でなければ、とっくに警備兵に連絡しておるはずじゃ!」
「恐らくセレノス殿には、なにか考えがあっての事じゃろう!」
そう言うと、オリビアにこれまでの事を詳しく説明し、フレディアの元へお使いを頼みました。
「オリビアよ!すまぬがロファまで行ってくれぬか?」
「フレディアに渡さねばならぬ物があるのでな・・・」
「うん、わかった!」
「フレディアのピンチや!うちにまかしといて!!」
オリビアは元気よく答えて、お使いを引き受けました。
ロファの城を出発してから三日後、フレディア達はドニオス峡谷の要塞へ到着しました。
この要塞は再びダグダルムの神殿が復活した時に備えて、ロファへ通ずる道を塞ぐように狭い谷に作られた要塞です。
この要塞には魔物の進行を止めるための投石器や、巨大な弓矢を備えており、常時500人を超える兵士が常駐していました。
「ようこそ、ロファの要塞へ!まずは司令官にお会いください!」
警備兵に案内されて、フレディア達は要塞の中に入りましたが、中には犬やニワトリ、ネズミなどが所かまわず走り回っていました。
「ここにいる動物はみんな兵士なのですよ」
「踏みつけたりしないよう、気を付けて歩いてくださいね」
兵士に注意され、フレディア達は踏みつぶさないように慎重に歩きます。
そして広い会議室に案内されると、席に座って待つように言われました。
会議室には、既にギルドの選抜チームも全員集まっていました。
これから重要な作戦会議が開かれるので、みんな緊張した面持ちで座っています。
そんなピリピリとした空気の中、会議室の四角く並べたテーブルの中で、ネコと犬が元気よく走り回っていました。
その様子を見ていた警備の兵士達が、愚痴をこぼしています。
「あいつら、動物になったら、すげえ元気になったな?」
「ほんと、その前は嫌々仕事していたのに!」
「あぁ、俺も鎧を脱ぎ捨てて走りたいよ・・・」
そんな話をしている兵士を見て、ハンクが騎士団の隊長のブレメンに聞きます。
「あんな調子で大丈夫なのか?」
「い、いや、みんな仲間が動物にされてショックを受けているのだろう」
「ショックねぇ~。まぁ、気持ちは分からないでもないが・・・」
ハンクとブレメンがそんな話をしていると、司令官がやって来ました。
「やぁ、皆さんお待たせしました!」
「それでは、さっそく作戦会議を行いますので、お手元の資料を・・・って?」
「おい!テーブルに置いていた資料はどうしたのだ?!」
司令官は、先ほど愚痴をこぼしていた警備兵たちに聞きました。
「えっ?資料・・・って?」
司令官と警備兵が辺りを探していると、部屋の隅で二匹のヤギが口をモグモグさせているのを見つけました。
「あ~~~っ!お前たちか!俺がせっかく作った資料を食ったのは!!」
「この前は徹夜で作った報告書も食ってたし!」
「くそっ!あれほど紙は食うなって言ったのに~!!」
司令官は泣きそうな顔で二匹のヤギに文句を言っていますが、もう手遅れです。
作戦会議のために作成した資料は、ヤギに変えられた兵士が食べてしまったので、司令官は仕方なく要塞周辺の地図を広げて説明を始めました。




