第十話 風の天使カーナ
それから10日が過ぎました。
バシッ!!
「王手!!」
「な、なんと!」
「う~~~~~む・・・」
「技術と創作の神よ!ええかげんに、あきらめたらどうじゃ?」
「な、なにを言うか!このまま負けたとあっては、わしのメンツが立たぬわ!!」
「そうは言うが技術と創作の神よ。おぬしフレディアに飛車と角を抜いてもらい、もう八回も負けておるのじゃぞ?今更メンツも何もないじゃろう?」
「う~~~~む・・・・・」
諦めきれない技術と創作の神様が、うんうんと唸っている時でした。
「ごめんくださ~~い!!技術と創作の神様のお家は、こちらでしょうか?」
そういうと、一人の天使がトコトコと神様たちの前まで歩いて来ました。
美しい金色がかったピンクの髪と、緑の瞳のかわいい女の子です。
歳はフレディアより一つか二つ下でしょうか?まだ幼く見える天使です。
「おや?見かけぬ天使じゃの・・・」
「はじめまして、神様!」
「あたしは、風の神セレノス様にお仕えしている天使です」
「今日はセレノス様から手紙をあずかってまいりました」
「ほぉ!セレノス殿の手紙をのぉ?」
「どれ、どれ・・・」
チャオ!スクラップどのおげんきですか?わしは元気です。
フレディアをしばらくのあいだ、わしにかしてください。
セレノス
名前の後に、ネコの手形が押してありました。
「そ、それにしても、汚い字じゃのぉ・・・」
「セレノス様は今、右手を痛めているので、左手で書いたそうです」
「この手紙には、フレディアをしばらく貸して欲しいと書いてあるが・・・」
「はい、どうしてもフレディアさんの力を、お借りしたい事があるそうなので・・・」
「フレディアの力をのぉ・・・」
話を聞いていた恋を取り持つ神様が、不思議そうな顔でフレディアを見ています。
「うひゃ、ひゃ、ひゃ!」
「そうか、そうか、フレディアの力を見込んでの頼みか!それでは断る訳にはいかんのぉ」
「のぉ、フレディア!」
「は、はい?」
「残念じゃが、将棋の勝負はお預けじゃの!!」
(あっ!そういうことなのね・・・)
フレディアはちょっと呆れた顔で神様を見ましたが、お使いの天使は一安心です。
「あ、あの・・・神様。それにあたって、ひとつお願いがあるのですが・・・」
お使いの天使は、上目遣いで神様に言いました。
「おっ!一体なんじゃな?」
「はい、実はフレディアさんと、あたしを人間の姿に変えて、ミントの町に降ろして欲しいのですが・・・」
「なんと、人間の姿にしてくれと?」
「ふ~~~む。よう分からんが、そうして欲しいのなら・・・」
「フレディア、お前はそれでもかまわんのか?」
「え? は、はい!別にかまいませんが・・・」
「そうか。ま、元の天使の姿に戻りたい時は、セレノス殿に頼めばすぐに戻してくれるじゃろう」
「それでは、お前もそこの娘さんの隣に行きなさい」
フレディアが横に行くと、彼女は丁寧に頭を下げて、フレディアに挨拶をしました。
「はじめまして、フレディアさん。あたしは風の神様にお仕えしている・・・」
「レヴェニウス家の長女、クライガーマシュエル・フレッド・カーナと申します」
「えっ!?」
「え~~~っとぉ・・・」
「〇◇▽☆□・・・カーナ・・・」
「カナちゃんね!」
「わたしの事はフレディアでいいよ!」
「キャハハ!」
(えっ?!あたし名前をこんなにはしょられたのは、初めてだわ!)
(さすがはフレディアさん!すごいわ!)
何故かカーナにキラキラした目で見られ、フレディアはちょっと戸惑っている様子です。
「よし、それでは用意はよいかの?」
「そりゃ!」
技術と創作の神様の一声で、フレディアたちは一瞬で人間の姿に変身しました。
フレディアは、それまであった純白の翼は無くなり、天使のリングの代りに赤いカチューシャと、真っ白な羽が一本、金色の髪に飾られています。
服装は純白の衣ではなく、緑のジャケットに代わっていました。
カーナは、純白の翼と天使のリングは無くなり、ピンクの髪に良く似合う淡いピンクの花びらの付いたカチューシャ。服装は白のワンピースに赤いカーデガン姿です。
初めて人間の姿になったカーナは、嬉しそうにくるくる回っています。
「これも修行の一環じゃ!では、フレディアよ、頑張ってくるのじゃぞ!」
そう言うと、二人をミントの町へ送り出してくれました。




