Lv5 激闘!謎のスライム!
前回のあらすじ!
レベル0の勇者クームが一人で特訓をしていると
スライムとの友情が芽生えた!
しかし、急に現れた傷のスライムによって
生命の危機となってしまった。
一体いつになったら戻るんだ!魔法使いフード!!
遡ること約三十分前……
彼は祖母の家へ辿り着いていた。
彼の目の前には見慣れた魔女の家が建っていた。
森の中に隠れるようにある一戸建ては
古ぼけて存在を忘れ去られてしまいそうになっていた。
彼がノックをしてドアを開けると、
そこには綺麗な絵が掛けられていた。
暖炉の前で編み物をしている老婆の絵だ。
彼は躊躇いもなく絵に飛び込むと、そこには絵の中の世界が広がっていた
「これ、ただいまくらい言ったらどうなんだ?」
「あぁ細かいことは気にするなって、
傘を取りに来ただけなんだからさ。」
「全く、十六歳にもなって勇者パーティーを追放されて、
挙げ句の果てにはそこらを飲み歩きおって……」
そう言って魔法使いの頭を叩く。萎れた手は
まるで彼女の過酷だった冒険を物語ってくれている。
彼女は先代の勇者パーティーの仲間として
先代の魔王を討伐した。実力者でもある大魔道士なのだ。
俺には両親がいない、
まぁ俺がいるのだから両親はいたのだろうが……。
幼少期の玄関前で倒れていた魔法使いを
ここまで立派に育てあげた。
彼女には頭が上がらないものだ。
ん?何故倒れてたかって?それに関しては
今後ゆっくりお茶でも飲みながら語ることにさせてくれ……。
思い出したくもない。
「ま、婆ちゃん。俺も居候するのは今日までだ、
旅仲間が見つかったんだよ。」
「何?それは本当かい?
まだ1ヶ月しか経っていないというのに……そんな……」
「俺は酒食らいの飲んだくれだが、嘘は付かなかっただろ?
この傘を持って、俺はしばらく旅に出るよ。
今までありがとな婆ちゃん。」
「………そう言ってまた直ぐに戻ってきたら
承知しないからね?」
「任せとけって!俺は最強の魔法使い様なんだしな!」
「………最近、この近くで強い魔物が出たって
噂は知ってるかい?」
「え?あぁマスターに聞いたよ、それがどうかしたのか?」
「もしかしたら……四番目の魔物なのかもしれない……」
「四番目の魔物!?それって婆ちゃん達が……」
「倒した。とは言い切れない。それに、
4体の魔物が集まれば何体でも現れる。
新たな魔王の誕生で世界中の魔物の魔力が高まっている今なら
大いに有り得る話だ。」
「マジかー、それじゃ。勇者の為にも早く戻るとするか!」
「勇者?追放されたんじゃ……」
「クームっていう勇者だよ!それじゃ!」
「クーム!?あんた!それって……。
……もう行ってしまったか。
……あんたはもしかしたらとんでもない問題に
関わってしまっているのかもしれないよ………。
ま、私の知ったことではないか!」
婆ちゃんは実はあれでも結構モテる。
昔も結構モテたらしい。……ぶん殴ってもいいかな?
まぁ、婆ちゃんとレベルの差がありすぎて、
戦っても秒殺されるんだがな。
そう考えながら、俺が家を出ると土砂降りの大雨だった。
雷も鳴っていて、この世の物とは思えない音が地響きのように鳴り響いている。
非常にマズい展開だ。異例すぎる、勇者は無事だろうか?
俺は傘をさして小走りでクームの元へ走って行ったのだった
……まるで、あの日と同じだった。
辿り着くとクームが雨にずぶ濡れ、服は所々が破け出血もしていた。左手に握られた世界樹の葉は灰と化した。
クームの前方には一匹の魔物がいるようだ
「あ、あいつは!」
オーラを身に纏ったスライムだ。あれが冒険者の中で噂の強い魔物なのだろうか?辺りの木々が薙ぎ倒されている。
俺も加勢しなくては……。
そう思い足を動かそうとした瞬間、俺は身震いをした。
まさか、ビビっているのか?この俺が?
「役立たずなんだよ、お前は。」
何故、今になって走馬灯のようにあの時を思い出す?
いや、この記憶は最近の事じゃない……もっと昔のことのようだ。そんなことは今関係ない。なのに、俺は……足が……
動かなかった。
クームは呼吸を荒げて、立っているのがやっとの状態だ。
世界樹の葉を全て使い切って、攻撃に徹するどころか、
避けに全力を出してしまっている。
このままでは殺られてしまう、フードが戻って来ない以上。
クーム一人で討伐………
スライムすら倒せないレベル0のクームに
一体何が出来ると言うのだろうか。
視界もボヤけてきた、ここで倒れたら
確実にトドメを刺されるだろう。
マズい、傷のスライムが爆裂魔法を放ってきた。
すかさず避けるが倒れ込んでしまう。
ここまでなのだろうか……。
何をやってもダメダメで、
勇者となっても誰からも期待されない、
期待されたくて頑張っても結局何もなし得なかった。
あぁ、最悪な人生だった。そう思って目を閉じると、
温かい声がクームの耳に入ってきた。
昔に稽古していた時の走馬灯だ。こんな時に……。
「お前はやっぱりスゲエよ!才能だと俺は思うぜ!」
「…………。」
「なんだ?お前無口だな。そんなんじゃ俺みたいに恋人なんか作れねえぜ?まぁ、無口なお前には無理だろうけどな!
アハハ、痛ッ!!」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ。
お前にも恋人なんかいないだろう?」
「フン。お前に分かられてたまるかってんだ!
俺が好きなのは……お前……なんだ……から。」
「あ?なんか言ったか?」
「いや!何もない!!」
「まぁ、クーム!お前の剣はこれからどんな奴が現れても
きっと戦えると俺は思うぜ!」
「剣………。」
「燃える闘志と諦めない志。
それがお前の強みなんじゃないか?」
すると突然クームの剣が炎に包まれた。赤い光が真っ暗な
豪雨を打ち消すかの如くクームを照らしている。
そうだ。何も怖いものなんてなかったんだ。
僕は大切なものが見えなかっただけなんだ。
こんなところで死んでいられない!
僕の目には再び光が戻った!
するとまたスライムは爆裂魔法を放ってきた!が
勇者クームは一太刀で真っ二つに斬った。
スライムが連続で爆裂魔法を放ってくる。
クームはなんと攻めに徹して走り始めた。
木を足場にして、爆裂魔法を切断し
回転斬りをスライムに斬り込むが……スライムに避けられた。こんなところで諦めない。
すかさず縦回転斬りを決め込む。
今度は当たった感触がある!行ける!
クームはスキルをフル活用した。
スライムを地面に差し込み、クームは魔法陣を召喚した。
クームごと火柱がスライムを襲う。行ける!
が、その瞬間に力が抜けたのか、
クームの拘束から逃げ出してしまう!
再びスライムが体制を立て直すと、クームに飛びかかった。
「ギガエネル!!ゴン!!!」
その声と共に雷が地飛沫を上げてスライムに直撃!
その声の先にいたのは魔法使いフードだ!
「行けェ!!クーム!!!ぶっ殺せェ!!!」
クームは立ち上がると剣にスキルを全て注ぎ込み
斜めに回転斬りを当てた!スライムの傷が✘となった。
その瞬間スライムは爆散し倒れた。クームも一緒に地面へ直撃した。かと思われた瞬間。フードがキャッチした。
「大丈夫か!?クーム!!!」
その声と共にクームは意識が遠退いて行った。
この豪雨はまだ止まないだろう。だが、雷は止んでいた。
まるで、戦いの終了を告げるかの如く……。