Lv42 10年前の真相①(1)
気がつくと、俺は大使館にいた。
建物は綺麗になっていて、明かりがついている。
俺が今いる場所は裏口、外の様子を確認しようと思ってドアノブに手をかけようとしたところ、手がすり抜けた。
「へ?あれ!?手が透けてる!?足も!?体も!?」
俺の体は水色になって透けていた。
動揺を隠さずに驚いていると、誰かがバタバタと慌ててこちらへと来た。
俺は慌てて口を押さえて声を圧し殺した。
「誰かいるんですか!」
「……」
「……確かに声が聞こえたと思ったんだけど……」
「ちょっと!こっち手伝ってよ!」
「はーい、今行きまーす」
誰かに呼ばれて裏口の様子を見に来たメイドはドアを閉めてどこかへ行った。
俺の声が聞こえていた?タイムメモリーを掌握した?
魔法とは神から与えられたものであり、どんな生物でも神には敵わない。
だが、そんな中でも禁忌と呼ばれる禁断魔法が存在する。
時・空間・物質
これらを操ることは物理法則に反することであり、生物には不可能であり、もし、操ることが出来てしまったのであれば、それは神に近づくということ――
つまり、俺は人間を卒業してしまった?
いや、そもそもタイムメモリーは魔法なのか?
魔人ブルーは夢の中で過去の記憶がフラッシュバックしていることに対して言っていた。
だけど、魔人ブルーが記憶の中に介入出来ていたし、それに、俺の声はメイドに聞こえているようだった。
この状況は3つのパターンが考えられる。
1.本当に過去に戻っているパターン
2.記憶の中に入り込んでいるパターン
3.明晰夢に記憶が投影されているパターン
過去の経験から推測するに、明晰夢に記憶が投影されているのが一番妥当だろう。
「ただいま!ねえ誰かいない!?」
背後から聞き覚えのある声、振り向くと、そこには小さい“俺”がいた。
俺は口を開けたまま固まった。
「フード君、またこんなに汚れて……」
「そんなのより聞いてよ!さっきさ!兄貴たちと森のヌシと戦ってたんだ!なんとか倒したんだけど、運べないんだ!応援を呼んでよ!」
今の俺と同じ服装をしている、顔をフードで隠した少年。
過去の俺が開けっ放しにしたドアから外へ出ると、そこには石レンガの道や街灯が一定間隔で立っていて、The・魔法使いと言った人たちが沢山いた。
「……そうだ……」
「そうだ、思い出した。俺はフード、この聖魔街会長の息子だ」