Lv25(後編) 魔王軍乱入!戦乱のアイドルコンテスト
怪盗ヒカルの登場に会場が湧き出した
俺達が知らなかっただけで物凄い有名人だったようだ
「おい、あいつを捕まえれば俺達一生酒飲んで暮らせるんじゃ!」
「相手はNo.1賞金首だぞ、俺達如きじゃ敵わないだろ…」
「なら、あの勇者パーティーならば…?」
そう言って俺達にまた視線が集まった。
まさか、ヒカルがやりたかった事が…虹貝の笛を盗むこと?全く何がなんなのかがわからない。
さすがに同じ勇者パーティーのヒカルと戦うだなんて出来ない…
「フッフッフ、ハーッハッハ!私の名は怪盗ヒカル!今夜は虹貝の笛をいただきに参上した!」
「やい!怪盗ヒカル!なんで盗みなんかしやがるんだ!」
「な、なぜって…」
「普通にお前スタイル良いし!カッコいいし!星のサングラスも似合ってるし!コンテストで優勝して手に入れたら良いじゃんかよ!」
「なっ…!」
「そうだそうだ!噂通りめっちゃイケてるぞ!」
「悪い事なんかやめちまえ!」
「今ならまだ間に合う!」
【I love you ( ゜д゜)ォォォォ!!】
「や、やめろ!わ、私は…私は…!」
「rrrrrrrrrケットランチャー発射ァァァァァaaaaaaa!!!!!」
俺達が野次をかけていると、
どこからか叫ばれたその怒号はステージの壁を貫き破壊した。現れたのはロケットランチャー片手に持った男と…死天順王の2、鬼人…
「ハハハハハハハハハ!!!!よぉ!平和ボケしたぼんくら共!!!!恐怖の象徴!!悪魔の種族!!!死天順王の4、ボンバーン様の登場だぜえええええええええ!!!!!!」
「な、死天順王だと!?」
「今日でこのウルフタウンは滅びの運命を辿るのだ!!!!狼男が消えたと聞いて来てみれば…おいおい!?マジかよ!!!クソ雑魚勇者様じゃねえか!!?また会ったな!!!クソ雑魚!!!!」
「おい…あまり悪目立ちをするな…我々の目的は虹貝の笛を強奪することだ…それに…少し決行時間が早いぞ…」
「そんなにギロッと俺様を睨むんなって!!どうせ決行することだったんだから関係もないだろ????」
俺は居ても立っても居られず大ジャンプをしてステージに出た
「お前達魔王軍の好きにはさせないからな!」
「それはなぜだ…?」
「な、なぜって…俺達は勇者パーティーだぜ?命懸けで魔王軍に喧嘩を売るイカれ野郎だからだ」
「お前達は…魔王軍に何かされたか…?」
「いや…別に」
「ならなぜだ?」
「…No.1勇者パーティーを追放した勇者ハルヤを見返してやりたいからだよ…悪いかよっ!」
「…なるほど、魔法使い。お前は弱いんだな…」
「俺が…弱い…?」
「ハハハハハハハハ!!!!お前弱いんだってよ!!雑魚が!!!…しかし、こいつはクソ雑魚勇者と違って弱そうには見えないぞ???」
「何言ってやがるんだ…俺はNo.1勇者パーティーである程度は旅をしてたんだ。今じゃLvも30になったんだ…。あんたにだけは決めつけられたくないね」
「そうか…なら見せてもらおうか…」
鬼人が合図すると、ボンバーンは3発のロケットランチャーを発射した。
2発は俺の魔法、ギガエネルで破壊したが、1発は観客席へ飛んで行ってしまった!
ここまでかと思ったその時、遅れて来たクームによる縦回転斬りによって破壊された
【勇者クーム、遅れて助太刀致す(-д☆)キラッ】
「ハハハハハハハハ!!!また俺様に殺されに来たのか!?勇者様よぉ!!!」
「まずい!いや、今は俺もいるし…ヒカルもいる。クーム!お前はスキル「炎を繰りし者」を使って後方支援を頼む!」
【え…!?僕も戦えr】
「Lvが0のお前が戦える相手なんていないだろ!せいぜい足を引っ張らないようにしてくれれば良い!」
【……わかった】
「ん…。な、何が起きたんだ!」
「ヒカル!魔王軍襲来だ!手を貸せ!後方支援のクームと2人で鬼の面かぶった鬼人の相手をしてくれ!ボンバーンは俺が必ず仕留める」
「わ、わかりました!師匠!」
俺は単騎でボンバーンに突っ込んだ
魔法でロケットランチャーを相殺しつつ
目の前で雷魔法であるギガエネルを撃ち込んだ
少し麻痺したように見えたが、一瞬で体勢を整えて
こちらにクナイで斬りかかってきた。
ギリギリの所で杖でガードをしたが、相手の素早い斬りに対応しきれずに、腕を深めに斬られてしまった。
「ハハハハハハハハ!!!お前まさかだが、Lv30如きが一人で俺様の相手を出来ると思ったか!?つけあがるのも良い加減にしておけって!!!!俺様のLvは50もあるんだぞ!!?雀の涙のような攻撃力のお前が!選ばれし者でもないただの魔法使い!しかもNo.1勇者パーティーを追放された負け組のお前が!!D級を二体倒した如きで図に乗るんじゃねええええええ!!!!!」
「ぐっ…!!俺は…ハルヤを…見返させるんだよ!!!!それだけがっ!!俺の生きる意味なんだよ!!」
「ハハッ!!落ち武者め!!これを見てもまだわからないか!?片手でクナイを使ってお前の攻撃を防ぎ、更に優勢に立ち、もう一方の片手にはロケランを構えている。しかし、お前の魔法は所詮焼け石に水。両手でなんとかクナイの攻撃をかろうじて耐えている状況!!最後に言い残すことはあるか!?クソ雑魚!!」
「……ハハッ…。最後に言い残すことだって?そんな時間を与えるお前はよっぽど優しくて弱いんだな…」
「なんだと…?」
「俺は選ばれていないって言ったよな…?俺には大きな切り札がある。代償として意識を失うから今まで使ってこなかったんだがな!!エクストラスキル!!「獣を繰りし…」!!」
俺がそう唱えた瞬間激しい吐血に襲われた
意識が朦朧とし、強い吐き気と目眩となった
エクストラスキルを今までの短期間に3度も使用しようとしたからだろうか
エクストラスキルの強大な力に俺の体は耐えきれなかった
過去に一度、婆ちゃんと手合わせして敗北した際に「今日こそ必ず勝利するんだ!」と強く願うと、俺は獣のようになり、周囲を巻き込んで暴走したことがあった。婆ちゃんとの解析によって、俺は腕に刻まれた星型の紋章のような物の力によって、この力を得ていることがわかった。なぜ俺にだけ星型の紋章を刻まれているのか、出生が不明な俺はわからなかった。スキルとは別に存在したこの力は、『エクストラスキル:獣を繰りし者』と名付けて封印した。俺の体に何が起こるかもわからない、意識を失い暴走するこの力に利用価値などないからだ。しかし、魔王軍との戦いで使用を繰り返したことで、異変が起きた。
「…なんだ?今エクストラスキルって叫ばなかったか…?」
「ガハッ!ガハッ!!」
「鬼人…。まさかこのことを言っていたのか…?」
「ガハッ…ガハッ…」
「しかしなんだ?いきなり吐血したかと思えば倒れ込んだぞ?俺様の服は血まみれだ…」
「ボンバーン…終わったか…?」
「お?そっちも終わったのか?見てくれよ!!この服!!クソ雑魚魔法使いの吐いた血で汚れちまった…よ!!!」
「ぐあっ!!ガハッガハッ…!!」
「蹴るな…死んでしまったらどうする…」
「殺さなかっただけありがたく思え!Lv30のくせに調子に乗りやがって…。観客共はもう全員逃げちまったようだしよ!」
「我々の目的を忘れるなと言っている…お前を死天順王から格下げするよう頼んでも良いのだからな…」
「勘弁してくれよぉ!俺様は至って真面目で従順に働いてるんだからさ!」
「ならばさっさとしろ…このドームを破壊しろ…その間に地面に埋まっているショーケースを盗む…」
「任せておけ!!魔王スキル発動!!『魔力暴走』!!そしてそれをスキル:創造によって作ったロケット弾に詰め込んで乱射ァァァァァ!!!!」
すざましい音と共にドームが破壊されていく
俺はその様子をただ見ている
その様子を見て激しい頭痛に襲われた
頭の中で激しい雨と森の様子が脳内に再生される
俺は今何を見させられている?視界の枠組みが歪んでいる。
俺はこの森をただひたすら必死に走っている
馬の音と共に振り向くと、そこにいたのは…ボンバーン…?と思ったら俺は爆発に巻き込まれた。
爆発に巻き込まれた瞬間に視界が真っ暗になった
真っ暗だが、まだ視界の枠組みは歪んだままだ
何か声が聞こえる…
「やはり雨の中ではロケットランチャーを使えないか…」
その声と共に現実に戻ってきた
今のはなんだったんだろうか…。最近良く変な夢をよく見る。雨の中ではロケットランチャーは使えない…
俺は炎魔法のギガフレアを天上に向けて放った。
するとスプリンクラーと警報が鳴り響き、水飛沫が舞い散る。
「な!?さっきの蹴りを喰らってまだ意識があったのかよ!!?これじゃあロケットランチャーを使えねえ!!邪魔しやがってえええ!!!!」
「くっ…!!」
もうダメだと思った時
ガキンという音が鳴り響いた
ゆっくり目を開けてみると、
威嚇したマスターが目の前に立っていた
「助けを呼んだわ…あなたたち…これ以上好きにはさせないわ…」
「………。ボンバーン…ここは一旦引こう…」
「はぁっ!?まだ虹貝の笛を盗めてないぞ!?魔王様に逆らうつもりか!?」
「お前のロケットランチャーが使えないなら引くしかない…」
「そんなの俺様は認めねえよおおお!!!!」
ボンバーンが高速でクナイをマスターに投げた
グサリという音と共に鈍い音がなった
マスターを庇って、クナイが俺の腹に深く刺さった
「フード…!なんで…!?」
「イテテ…マスターを怪我させるとな…ウォルターや村のやつらに怒られんだよ…」
「だからって…無茶しないで……」
「昔に約束しただろ?マスターのことは守ってやるってな…」
「何をしている…!!早く帰還するんだ…!!」
「ちっ!!落ちこぼれ勇者パーティー!!お前らは必ず!!俺様が直々に潰してやる!!覚えておけ!!」
そう言うとボンバーンと鬼人は去っていった
俺はほっとして意識を失いそうになったがまだ耐えた
なぜならドームが今にも崩れそうに音を鳴らしているからだ
「クーム!ヒカル!!脱出するぞ!!」
声に返事はない。俺はヒカルとクームを抱えてマスターと共に脱出した。脱出した瞬間、ドームは音を立てながら崩壊した。虹貝の笛も巻き込まれて潰れてしまったのだろうか、応援の兵士が来たのを横目に俺は貧血で倒れた。