Lv24(前編) 怪盗参戦!波乱万丈のアイドルコンテスト
前回のあらすじ!
市場で何も見返りを求めていない発言で人気者の魔法使いフード、なんとか抜け出して路地まで逃げてきたら女の子が泣いているのを発見する。勇者クームが向かったと知り急いで向かったが、スライム2匹に遊ばれているのを発見して助け出した。やっぱりレベル0の勇者は俺が守ってやらないとな…
「元々、寝坊助のお前が早朝から何をしてたんだ?」
【僕だってレベル0なりに気にしてるんだよ…。勇者として足手まといになりたくないし…】
「んー…そういやさ、俺何も聞かずに旅始めちゃったけど。お前ってなんでレベル0なんだ?てっきりスキルがそっち系なのかと思ったら炎の繰りし者?だったし」
【僕もわからないよ…生まれた時からそうだったから】
「あと、なんでお前って喋らないんだ?いつも無限に高速でペンを動かしているのを見ると不思議で仕方ないんだよ」
【それは……】
「?」
【教えられない…でも、いつか必ず言うから…!】
「…謎の多い男だな、でもなんだか俺達初対面な気がしないんだよなー」
【そうだね?】
「でも、こんなにも印象的なやつがいたら、忘れるはずもないか」
【そうだね】
そうこう話をしている間にさっきの女の子の元へ戻ってきた。
「ほーら、このお兄ちゃんが帽子を取り返してくれたぞー」
「…!!。お兄ちゃん無事だったんだ!」
【なんてことないさ(`・ω・´)シャキーン】
「ありがとうお兄ちゃん!私の代わりに見に行ってくれたお兄ちゃんもありがとう!」
「まぁ、良いってことよ。さーて、クームも見つけたことだし、アイドルコンテストのチケット取りに行くか!」
「もう完売してると思うよ…?」
「え゛?」
「直売のチケットは2時間前から並ばないと買えないんだよ?」
「そんなぁぁぁぁぁ!!!」
まさかの事態に俺は膝から崩れ落ちてしまった
マスターとの約束を果たせないとは…
大体クームが勝手に修行なんかするからこんなことに…
「お兄ちゃん、もしかしてコンテストを見に行きたいの…?」
「あぁ…まぁ…な」
「だったら、これ…いる?丁度2枚あるけど…」
「え…!?直売は2時間前から…」
「予約してたの、どうせお父さんはお仕事で忙しいし、お母さんは寝込んでいるし…。帽子を取り返してくれたお礼だよ!」
「良いのか…本当に…祭典みたいなものなんじゃないのか…?」
「良いの良いの!私はどうせお母さんの看病しないとだし!お父さんもいないんじゃ意味ないしね!」
「そっか…。ま!もう帽子取られるんじゃないぞ!じゃあな!」
「お兄ちゃん達も楽しんで来てねー!」
俺達は女の子に別れを告げてその場を後にした
世の中何があるかわかったものではないな
あ、ってかさっきの場所からすぐ近くにあったのか会場
俺達が広い通りに出ると、目の前に現れたのは
想像を絶するほどに大きなドーム会場だった
俺達がチケットを渡して中に入ると、
想像以上に広くデカいステージ会場があった
俺があまりの凄さに圧倒されていると、クームが興奮気味に手を引っ張って行った。
道中色んな人にぶつかって顔がベコベコになった。
なんとか席に辿り着くと、真ん中ぐらいの1番見やすい席だった。ラッキー!
さっき助けた女の子には本当に感謝しかない…。
【そういえば、怪…ヒカルは?】
「ヒカルはやることがあるとか言ってどこかに行っちまったよ。最悪、悪い道に進んでいるなら無理矢理でも止めてやらないといけないよな」
【悪い人じゃないと思うけど…】
「人は見かけによらぬもの、婆ちゃんも言ってたし、善人か悪人かなんて深く関わらないとわからないものだ…本当に…」
【 】
すると、いきなり会場中の照明という照明が全て消え
ステージにスポットライトが当てられた!
「レディース&ジェントルメン!今日は年に一度の男と女の祭典!アイドルコンテストにお集まりいただき誠にありがとうございますッ!!」
『ワァァァァァァァァァ!!』
「本イベントのプログラムは予定通りに進行させていただきます。そして!本イベントの優勝賞品はこちらです!」
そう言って、ステージに現れたのは厳重そうなケースに入った虹色の貝殻だ。神々しい見た目に思わず目を奪われてしまった
「こちらは市場で今年最高額の一千万ダルで競り落とされた、虹貝の笛!吹けばどんなものの眠りも覚ますことが出来る究極の神器!他にもまだまだ解明していないことも多い笛です!」
「へぇー、虹貝の笛か。聞いたことないな
でも、一千万ダルで競り落とされるってことはよっぽど凄い価値があるんだろうな。眠りって殴れば起きるだろ」
判明していないことも多いって言ってるし、他にも色んな事が出来るのかも。にしても眠りを覚ますって寝起きドッキリぐらいしか出来ないだろ…
それにしても、マスターが出てくるまでは結構暇だ。別に他の奴らとか興味ないし…。あれ、なんで俺、こんなにマスターの事ばっかり考えてるんだ…?いかんいかん!俺らしくもない!1人の人間に固執するなんて!マスターは別に友達だろ?いや、友達ならこれくらい固執するか…。いや、そうだ!ナイスバディのお姉さんが見たかったんだ!そのついでに、マスターを見てほしいってお願いされただけだよな!なんか、疲れてんのかな…。昨日はD級モンスターとも戦ったし…。そういや、なんで4匹集まるとモンスターは強力になるんだ?確かに4匹以上モンスターが集まる所を俺は見たことがなかった。ていうかモンスターの数なんて考えたこともなかった。魔王軍のテコ入れモンスター…。4匹集まっただけのモンスターにテコ入れなんて出来るのか?クームの話じゃ雷が落ちたような衝撃と共にスライムが覚醒したって聞いたが…。何も考えずにただ魔王討伐!ってみんなも俺も言ってるが…。そもそも魔王の目的って世界征服で合ってるんだよな?ひたすら色んな街を襲って暗黒の時代がやってきたって騒いでるけど、その割に今俺達はこうやってドームでアイドルコンテストを見ている。平和過ぎないか?本当に本腰を入れて世界征服をすれば一瞬で出来るんじゃないのか?そうだ。死天順王の2。鬼人…。初対面とは何故か思わなかった。俺は6歳の時に婆ちゃんに拾われたって聞いた。捨て子って話だったが、俺は生まれてからの空白の6年間を何1つ覚えてない。いや、思い出せないの方が正しいのかもしれない…。婆ちゃんは結局それ以上何も教えてくれなかったし…。俺の親は誰で、俺はどこで生まれて、俺は…何者なんだ…。最近になって気にしないふりをしていたことを良く考えるようになってしまった。クームと出会ってから俺の中で何かが変わったような気がする。今まで止まって停滞してた何かが動き出したような、そんな気がする。
「それでは!エントリーNo.29です!どうぞ!」
奥から出てきたマスターの姿に俺は思わず驚いた
赤いドレスを着たマスターはそれはそれは美しかった
メガネを外している姿は美人としか言いようがなかった。
あ、マスターと目が合った。目で「どうかな」って聞いてる。俺は親指を立ててにっこり笑った。
「さーて、お次は…」
瞬間、会場の照明という照明が全て消え去った
急な出来事に会場が混乱してしまった
司会の男のような人も混乱して
小さなパニックを起こしているようだ。
運営側の粋な演出かとも考えたが、スタッフのこの慌てようは明らかに様子がおかしい
仕方がない、ここは俺が一肌脱いでやるか。
俺はそう思い席を立ち、杖を上に掲げるとギガエネルによって会場を明るく照らした。
「皆さん落ち着いてくださーい、パニックになっても仕方がないでしょ?照明トラブルくらいあっても、別におかしくないって」
「あ!魔法使いさんだ!」
「魔法使い様よ!」
またガヤガヤし始めてしまった。これは本末転倒だろうか…。いや、パニックじゃなくなっただけマシと考えるか。
「おい、彼は有名な人なのか?」
「昨日話をした魔法使いですよ」
「なんと!」
なんか、遠くで偉そうな審査員の紫のタキシードを着たデカいおっさんが話をしてるけど、遠くて良く聞こえないな。もしかして運営側の演出だったのか…?
「なぁあんた、ひょっとしてなんだが、No.1勇者パーティーにいた魔法使いなんじゃないのか?」
【お兄さん、知らない方が良いこともあるってことだよ( ´ー`)y-~~】
次の瞬間、ステージのど真ん中にスポットライトが照らされた。その場所に現れたのは、まさかの同じ勇者パーティーのメンバー怪盗ヒカルであった…