プロローグ
連載小説始めました。
そこまで長い話にはならないです。
プロローグ
Vは部屋の入り口に立っている。
部屋の中は、機械やパソコン、何に使われているのかわからない筐体類が、まるで大地震が起こった後のように床の上に転がっていた。
壁は全体にオフホワイトで、はめ殺しのガラス窓には少しひびが入っている。
そこからみえる街は、穏やかな夕陽が長い影をつくっていた。
一見、この部屋で起こったことは別の世界のように穏やかに見える。
しかし実際はそうではないことは知っている。
カオス。街は混沌に支配されている。
崩れたビル。居住者たちの悲鳴。そして名もなき者の足音。この街は死の匂いが染みついている。そして夕陽は、見る者によっては血を連想させる。
Vは視線を部屋に戻す。
男が散らばった書類や、破壊されたパソコンをどかして、何かを探している。
「何をしているの?」
その側によってVは声をかけた。男は一瞬、振り返ったが、すぐに自分の作業に戻った。
「記憶装置を探してくれ」
「記憶装置?」
「どこかにコピーされたデーターが残っているかもしれない。それを回収する」
「わかったわ」
男にならって崩れた壁や、書類をどけながら捜し始めた。
数分の後、ふたりで手のひらサイズの記憶装置を数枚見つけだした。
「これにデーターが入っているのかしら。調べようがないわね」
辺りを見渡したが使えそうなパソコンはなかった。ほとんどが破壊されている。
「最悪データーは入ってなくても、他者に渡らなければいい」
そういって、男は腕につけられた小型無線機で仲間に呼びかけた。
「S出られるか」
『こちらS。クリーチャーの回収は済んだ』
「了解。こちらも数枚の記憶装置を見つけた。中身は不明。この場所は今から破壊する」
『了解』
男は無線を終えると、こちらに顔を向けた。
「これで、終わったのね」
ここを破壊すればクリーチャーを製造していた場所は全て破壊したことになる。尊い命がたくさん流れた。たくさんの建物が破壊された。全てクリーチャーによるものだった。しかしこれからはその心配がなくなるのだ。
Vの言葉に男は少し考えるように、右手をこめかみに持っていった。それがこの男の考える時の癖だった。
何を考えているか大体想像は出来た。
このデーターを回収し、破棄すればクリーチャーが造られることは二度とない。だが、まだ納得できない部分もある。仲間の死。Uの死。
本当にこれで終わったのだろうか?
この件に関わってから、常に疑問が頭から離れなかった。それは男も同じだろう。でも、わたしたちは与えられた任務をやるだけだった。
「そうだな。終わったんだろう、これで」
「そうね」
男は部屋の隅に燃焼材を置きはじめた。
Vも反対側の隅に行き、設置する。
これで、この建物は火に包まれる。
残った機材や、資料は灰へと化すだろう。二度と、こんなものが造られなければいい。
「戻ろう」
男はいって、歩き出した。
ねえ、M。本当に終わったのだと思う? Vは心の中で問うていた。
しかしその背中がすべて語っていた。Mも納得していない。それだけは分かった。
頭から離れない疑問を追いやり、Vたちは部屋から出た。