缶コーヒーをくれるのは
「間違えて押しちゃったんで、良かったらどうぞ」
そう手渡された微糖の缶コーヒー。
しかし私にとってはただの缶コーヒーではないのである。
同僚、しかもほんのり好きな同僚である。
きゃーきゃー
私の心の中は狂喜乱舞。再始動までお時間くださいである。
もちろん飲むもんか。開けずにリビングの目につく所へご招待です。
しかしこうまで続くかと驚きがすごい。
専用棚を買ったくらいである。しかしその棚ももう置き場が無い。
くっ、こうなれば最初に貰ったものから飲んで捨てるしかないのか。
いやいや、最初に貰ったものは思い入れがっ。
ならば最近のやつを……いやしかし……
最近の私の悩みは賞味期限が切れた缶コーヒーは家においていて大丈夫なのかである。
いやもう飲んでしまうか。
缶は捨てずに取っておけばいいのでは……
そんな私の悩みはすぐに解決した。
私の隣の子と彼が結婚するらしい。
いやー話しに来るのに手土産を
ってことでくれていたのかな?
はははっ
そういえば私はいつも微糖だったのに、彼女にはミルクティーだったりたまに違ったなとか。
成る程、私は興味がないから当たり障りのない微糖だったのか。
じゃあ微糖とかやめてくれよ!!ほんのり好きな人にほんのりお砂糖の優しさを貰う私の気持ちよ!!
いや、彼が私の気持ちを知り得ないけど。
もういいや、なんか一人で恥ずかしい。
今日はやけ酒ならぬやけコーヒーだ。
棚の中を空っぽにするために私のお腹を満タンにしていく。
やけに口に残る甘さが彼への未練を残しているようで……
ぐしゃりと潰しやすいペットボトルのように缶が潰れた音がした。