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第1話 【転生抽選】

冒険者ギルド『ウゴウの(つどい)』の駆け出しだった俺は、紆余曲折を経て3人の仲間達とパーティを結成。数々の冒険の末に親の仇であった巨竜「タキドロムス」の牙城を突き止めた。激闘の中で俺はヤツを追い詰め、過去の因縁を終わりにするために、剣を振りかざした。


「これで終わりだ────ッ!!」

「終わるのは貴様だ!ゴキブリの下痢便がぁあぁあぁあ!!」


ヤツが死にわるあがきで放った二股の尾の一撃は、俺の胸を貫き、頭を粉砕した────




────女神と名乗る女は、不思議な空間の中で俺とタキドロムスとの決着をそう説明した。

「で、君の『これで終わりたくない』って気持ちを察知した私が、君をこの『転生次元』に招いたわけだ。」

「俺はまた…始めからの生を受けるのですか…今まで手にしてきた仲間との思い出や…愛も忘れて…赤ん坊からの人生を…」

つい声を曇らせてしまう。


バリバリッ バリッ


女神がせんべいを貪る音は、オレの憂いを杞憂だと言っているようだった。そして女神はオレに問う。

「君がそれを望むのかい?」


「いやです」


俺は即答。そして続ける。


「生き返るなら・・・前の体ではだめですか」


太い透明な筒に入った飲み物をガボッガボッと勢いよく飲んでいた彼女は、俺の言葉を聞くと空っぽになった筒を地面に投げ捨てた。ゲフッと喉を鳴らした後に、俺に向かって笑みを浮かべた。そして話し始める。

「竜の攻撃は君の生命の核をついた。もう人間の力で生き返ることはない。でなければこの空間には入れない」

彼女はそういうと、カスだらけの口元で言葉を続けた。

「だが私は『神』だからね。めんどくさいができるさ。そもそも君を蘇生するためにここに招いたんだからね」

「うおおお〜!」

女神の慈悲に歓喜。


彼女が食いカスまみれの指をパチッと鳴らすと、巨大な円卓を出現させた。その外見は1度仲間と立ち寄ったカジノでみたことがあるものだ。

「ルーレット…」

そう俺が呟くと、女神は答えた。

「そうだ。君はただ生き返るだけではない。異種族や魔獣の力を付与されて生き返るのだ。」

「え?生き返るためになぜそんなことを…?」

「当然の質問だな。あぁ…なんと説明しようか。まぁ、少し前に遡るが、私は異界の者をこの世界に転生させたんだ。」

彼女はそう話すとため息をつく。

そしてヤケを起こしたようにチーズのスナックを貪りはじめた。


「そいつがな、私が想定していなかったスキルを身に付けてだな。調子づいてこの世界を支配しようとしているわけだ。生き返ったらさぁ、ムカつくソイツをボコして欲しいんだ。わかーり?」

バリバリと音をたてながらやんごとない事情を話す女神。

「はぁ・・・」

「私は、誰かを転生させる以外の方法で世界に干渉することはできないし、君達に強力なスキルを与えてやることもできん。だが、この空間に来たことのある者達の魂を少しずつ拝借してだな。それを他の転生者に付与することができる発明をしたわけだ。」

配合転生とでも言おうかと彼女は笑った。おもむろに彼女が握りこぶしを開くと、空間にホールが現れ、そこから2人の人間が現れた。片方の男は、かなり軽装で筋骨隆々。おそらく格闘家だろう。もう片方の女は杖を持ってマントを羽織っている。間違いなく魔導師だ。


「こいつらもこれから配合転生をする冒険者だ。今後も数人、配合転生者を送り込む予定でな。配合する魂はある程度公平性を保つためにルーレットで決めることにした」

挨拶しなと俺達の対話を促す。


「じゃあ俺から」

と格闘家。

「俺の名は『ローブロウ』。『ロブ』でいいぜ。よろしく」

俺と魔導師は彼と握手を交わした。


「あ、じゃあ次俺…」

「次、私…」

挨拶の切り出しタイミングが魔導師と被る。お互い軽く謝り、結局魔導師が先に挨拶をすることにした。

「見ての通り魔導師です。『マサクゥル梅山(うめやま)』です。よ、よろしくお願いします。」

マサクゥルはペコリと一礼した。


次は俺の番だ。

「あ、『グリム』です。よろしくス。ウス」

2人に頭を下げようとしたその時、女神が叫んだ。


「準備完了ッ!3人とも!始めるよ!」

これが終われば俺は生き返るのだ。皆に何と言って会おうか。得た能力でどうやって驚かしてやろうか。そんな生き返る喜びとワクワクで俺の胸は高鳴っていた。



「ルーレットスタートッッ」

女神の声にあわせてルーレットが回る。

肝心の目はすべて黒く染まっていて、配合の候補はわからない。忌まわしい竜の力以外ならなんでもいい。


スライムなら柔軟さを活かした戦法

サイクロプスなら超怪力

エルフなら強大な魔力

俺は今まで見聞きした魔物の力を得た自分を思い描いていた。



そして運命の時が来た。



そしてルーレットが止まる。瞬間にマスが光に照らされて、描かれていた魔物の姿が明らかとなった。

(え・・・!?これって・・・!!)



緑色の肌に、不揃いな歯並び、飛び出した眼球、尖った耳そして嘴のような鼻。



『転生者4番!ゴブリンの力が付与されます!』



ルーレットの中心に口が現れ、そう告げる。続けて他の2人の結果が告げられる。




『転生者2番!ゴブリンの力が付与されます!』

『転生者3番!ゴブリンの力が付与されます!』


続く

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