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第9話 それっぽくなってきた無駄使い

「さぁ行きましょう!」


 キャズマ、カヤ、ミルルの三人は早朝に村を出発した。

再び暗闇の森に入ると、キャズマを先頭にしてまだ薄暗い森の中を進んで行く。


「カヤ様とってもお元気なのです!」

「いやぁ、なんだかんだ言って、あれからすぐに寝てしまいましたからね。やはり疲れていたんでしょうねぇ」

「なんだかんだ?」

「あ、いえ! なんでもないです! あはは!」


 寝れるかと心の中で叫んだが結局はすぐに睡魔に襲われ即寝したカヤだった。

もともと寝つきは良いのだ。

しかも朝は朝で目を開けたら左右から美形二人に見られていて「ヒッ!」となり、即覚醒。目覚めもバッチリである。


「こちらです」


 カヤが首からさげた誘照石が時折輝く。

その度にカヤが進む方向を指示する。


「次は……こっちですね」


 カヤが兄タンケウロから受けた密命、それは王家に伝わる『神器』を手に入れることだった。

しかし『神器』はある場所に隠されている。

そこに辿り着くにはカヤの持つ誘照石の導きが必要なのだ。


「不思議な輝きなのです! カヤ様、誘照石の導きってどんな感じなのです?」

「え? えーと……何かこう、ふわっと、進む方向が分かる……みたいな?」

「説明もふわっとしているね。それ大丈夫なの?」


 誘照石は身に着けると『神器』がある方向を感じ取れるようになる。

それは感覚的なものなので「ふわっと」は一番適した表現だった。

カヤ達は導きのままに、道なき道を行く。


 そして暗闇の森を歩き続けること数時間。

ようやく森を抜けて『清浄の原』に辿り着いた。


「着きました! ここが『清浄の原』です!!」

「広い所なのです!」

「本当についた。凄いんだねその石」


 ここが目指していた場所であるなら、もうすぐカヤの目的は達成できる。

彼女と出会ってからここに来るまで倒したのはドラゴンだけで【使い手】と遭遇する事はなかった。

これでは時間を無駄にしただけだ。キャズマは何も成果を得る事ができていない。

目論見が外れたか……まぁいい。それならそれで切り替えて次の行動を模索するだけだ。

だが次のカヤの発言でキャズマは考えを改める。


「当然です! でもここはまだ入り口ですよ」

「そうなのです?」

「はい。この草原のどこかに『神器』を祀った祠があるはずです。そこが私の目指す場所です」

「……へぇ」


 なるほど。これはまだ何かありそうだ。


「では行きましょう」


 誘照石が輝く。

三人は歩き出した。


「そういえば『神器』とは何なのですカヤ様?」

「一言でいえば王の証、ですね」


 キンリーン王家に代々伝わる秘宝であり王の証。それが『神器』ピュア―グランドである。

王位継承にはこのピュア―グランドを持ち、神々の前で宣言する儀式が必要だった。


「つまりお兄さんからの密命というのはカヤに『神器』を持ってどこかに逃げろという事か。次兄ロシタウに渡さないように」

「そうです。ですが……私は逃げたくはありません」

「なのです!?」

「ピュア―グランドは王の証であると同時に、強力な武器でもあると聞いています。できるなら私はこの『神器』をタンケウロ兄様に届けたいんです」

「カヤがそう思うならいいんじゃないか」

「……はい」


 だがそれは簡単なことではない。

逃げるよりも王国に戻る方が難しいだろう。

また、兄の命令に背くことにもなる。


 揺れる気持ちを抱えたまま、カヤは進む。


「感じます……『神器』のある場所はこちらです」


 この地を覆う草は長くても足首程度のもので、周囲の見通しは良いが、目に見える範囲には目立ったものは何もない。

こんな場所で本当に『神器』など見つけられるのか? 祠があるとして、どれだけ歩けばいいというのか?

誘照石の導きを感じているカヤでさえそんな考えがよぎってしまう程であった。


 それでも進む程に誘照石の反応は強くなる。

しばらく歩いていると、ようやく何かを見つけた。

大きな石だ。

あきらかに人の手が加えられた跡がある。


「何かあるのです!」


 まっさきにミルルが駆け寄ろうとするがキャズマがミルルの手を掴んで止めた。


「おい、少しは用心しろよ。罠かもしれないんだから」

「ごめんなさいなのです……」


 まずキャズマがその石を調べた。

石には文字が掘ってある。


「石碑みたいだね」


 罠が仕掛けられている、なんてことはなさそうだ。

しかし石碑に掘られているのはキャズマもミルルも知らない文字だった。


「カヤ様、何が書いてあるのです?」

「……さっぱり読めません!」

「キンリーン王国の文字じゃないの?」

「え、えーと……」


 なにか一つでも読めそうな文字はないか……カヤが石碑に刻まれた文字に指で触れると、どこからか声が聞こえてきた。


 ――王家の血を持つ者よ。よくここまで来たのじゃ――


「だ、誰ですか!?」


 少年のようであり老人のようでもある、高く重い不思議な声だ。


 ――我は『神器』を守護する者。汝、『神器』を欲するならば王の試練を受けるのじゃ――


「王の試練っ……!」

「へぇ。それっぽくなってきたね」

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