とある宿のひとり呟き
フィクションですが、想起させる表現のため、ブラバしてください。すみません…m(_ _)m
忘れられた時間
砂時計逆さまにして繰り返す
流砂のくぼみ
私のおへそみたい
覗き込むその中央の影から
移ろいゆく時間
どこからやって来たのか
闇夜に光る月の明かり
生まれて来てしまった理由も知らずに
そっと胸の内にしまう
私の胸の窪みを照らし出して
白く映える肌
私じゃない私
浴衣の帯を解く
何も身につけずに露わにして
白く裸にして
映し出す鏡の奥の世界
まるで月の輪郭みたい
いつもの眼鏡を外した私
幾重にも重なってはっきりと見えて来る
それでも望んだ世界
誰とも目を合わせたくなかった
自分で閉ざした世界
降り積もる雪は今日未明
月の明かり消して降り続けた
どこまでも…シンシンと…して
誰のものでも無い時刻
やまない雪が打ち鳴らす
いつの間にか振り子時計
月の代わりに打ち鳴らして
真夜中に響き渡る
12回めの心音
金色の月を隠した午前0時
誰もやって来るはずの無い今日を迎える
海岸に行けば
真夜中の電話ボックス
命の電話の貼り紙
観光名所とはいえ、たじろぐ
ただいまの白いため息を
白い雪にまじらせて
暗い夜の冬の海を遠くに見つめる
私…には、来なかったな
誰もいない海岸を背に
私…は、帰ろうと想う。
遥か遠くの汽笛
映画の中にある場面を切り取って
耳の奥で震える目覚まし時計
そっと胸の内にしまう
明日の日を夢みて
希望の旅立ちを
少しだけ口ずさむ
おやすみなさい…お帰りなさい…
あなたに少しだけ
月のかわりに
雪のかわりに……