2話「学校と決闘」
初めての学校!
魔法と剣を教えて貰って1年が経って9月10日。12歳の誕生日の日がやってきた。
「カリス〜夕飯よ〜」
「はーい!」
今のところ母さんに教えてもらった魔法は上級の最初の部分まで使い方を教えてもらった。だがそれ以降の魔法は使い方は教えて貰えなかったが名前と必要な魔力量、そしてコツを教えてもらった。
剣は上段まで教えて貰い、最近は実践訓練や小技の応用も教えて貰っている。
銃の作成やナイフ、小刀の作成などのいずれ必要となるものはノートにまとめてある。
「カリス、お誕生日おめでとう!」
「おめでとうカリス!」
「ありがとう母さん、父さん!」
しばらくご飯を食べてケーキを食べてと、普通に見えるだろうがこれは俺にとって毎回新鮮なものだった。
以前は養育所に生まれて誕生日が来たとしても祝わずにそのまま訓練だったからとても楽しかった。
「あの…母さん、父さん。話があるんだけど…」
「?どうした改まって。」
「何かあったのかしら」
「俺、学校へ行きたいんだ。」
目的はこの世界の通貨がどんなものなのか、過去の偉人の名前や成し遂げた偉業、あとは現在の世界情勢などを知るためだった。
「そうか…もう12だもんな。分かった。父さんはいいが、母さんにも聞いてみろ。」
「母さん、どうかな」
「うぅ…あなたのためだものね…分かったわ。母さんも協力するね」
母さんはどこか寂しげな表情を浮かべていた。それはなんとなくわかる気がする。自分が12年間愛を注いできた息子が突然街の学校へ1人で行きたいと言ったんだ。寂しいに決まっている。
「ごめん、ありがとう母さん。」
「大丈夫。自分でもしっかり考えてきたんだもんね。」
話し合って家を出る日は誕生日から1ヶ月後の10月10日。母さんが準備のために必要なものと書類を用意して、父さんは鞄とあるネックレスをくれた。
「父さんこのネックレスって…」
「退魔の石のネックレスだ。母さんからのプレゼントだ。母さんは今忙しいから渡すことは出来ないけどな。」
「ありがとう!!大切にするよ。」
誰かからのプレゼントはこの世界に来てからは初めてではなかったがやはりまだ慣れない。心がざわつくというか、なんとも言えない気分になる。これが嬉しいという気持ちだろうか。
「あとこれ。俺からだ。」
渡されたのは銀色の柄に持ちやすそうな黒色のグリップが付いた剣だった。
「これ…いいの?」
「あぁ。俺からは全然プレゼント渡せてなかったからな。」
「ありがとう!嬉しいよ。」
そしてその1ヶ月の間、俺は魔法の復習と剣の鍛錬、そして銃の知識をノートにひたすらまとめた。魔法は初級魔法をいつでも打てるようにして、剣技はどの体制からも反撃や攻撃が出来るようにした。
暗殺の技術も練習をしておいた。子供の体ということもあって勢い余って寸止めの所を切ってしまうことがあったが今は慣れて扱うことができるようになった。
そして遂に出発の日が来た。
「母さん、父さん、ありがとう。手紙送るね」
「あぁ。行ってこいカリス!」
「しっかりね。カリス。お金の管理と健康管理しっかりしてね」
「うん。ありがとう母さん。じゃ行ってきます!」
そう言って家を後にする。転生して今まで受けたことの無い優しさに触れることが出来て新鮮だった。実際、少し泣きかけた。
「カリス、大きくなったわね…グスッ」
「そうだな…さ、家戻って食事の準備するか!」
◆
「ここから歩きで街まで行くとなると相当時間がかかるな…」
家からしばらく東に向かった辺りの森…たしかテリスト森林だったか。しばらく続きそうだし強化魔法使うか。
足に意識を集中して高くジャンプするイメージ…
「よっ」
足に力が流れる感覚が来たら、高くジャンプをする。目の前にあるのは広がる森とその奥には街が広がっていた。特に目立っていたのは中央奥に鎮座する宮殿だった。
風魔法の応用で自分の後ろに風を発生させて前進する。
「はっやいなこれ」
進んでいくと目に入ったのはでかいヘビっぽいやつに襲われかけている少女とそれを守る騎士1人だった。
「…やるか」
蛇の真上まで行って魔法を止め、自由落下状態になる。蛇とぶつかる瞬間に蛇の首を剣で切り落として身体強化魔法を使って着地する。
「よし。」
「!?あ、あなたは!?」
「カリスです。では。」
身体強化魔法を使って再び跳躍して移動する。
「なんだったんだあの人は…」
しばらく移動していると街に着いた。
入口には騎士2人が警備していていかにも検問って感じだった。
「あの…ルイシェルフ魔法学校の編入生なんですけど」
「身分証を…ってあ!そのネックレスは!」
紫色の宝石がはまった母さんから貰ったネックレスを指さしてきた。
「そ、そのネックレスは数年前に国を救った伝説の大魔女、テルナ様の愛用していたネックレス!退魔の首飾り!」
そんなに貴重なものだったとは…母さんにはもう頭が上がらないな。大切にしなければ。
「ど、どこでそれを!?」
「俺がその人の息子だからかな」
「なっなんだって!?どっどうぞお通りください!」
これは早くも有名人になってしまうかもな。夜外を歩く時は背後に気をつけなければ。
街に入ったらまずは宿だよな。確かまだ編入試験の時間はあるからとりあえず宿を見つけて今晩はそこに泊まるとしよう。
「宿…あ、」
数分歩いた所に『小鳥の羽休め』といういかにも宿屋らしい看板が目に入った。
「いらっしゃい」
ドアを開けると目の前には綺麗な女性が立っていた。
「1人ですけど1泊泊めていただけてもいいですか?」
「あら1人なのね。今どき珍しいわね。はい鍵。1番端っこの右の部屋ね。…その服、もしかしてルイシェルフ魔法学校の子?」
「はい!今日編入試験をやって明日結果が届く予定です。」
「あらそうなの?じゃ1泊といわずに2泊しちゃいなよ。お金は1泊分でいいよ。」
店員さんの気がよくて安く2泊もしていいのだろうか。まぁ気を利かせてくれたのだ。遠慮なく甘えよう。
「いいんですか?じゃお願いします。」
「はいよ。ってあらそのネックレス…テルナのやつじゃない?」
「知り合いなんですか?」
「知り合いも何もあたしはその人とコンビだったからね」
話を聞くに、この店員さんの名前はヘルエスという名前で全盛期は母さんと一緒にコンビで災厄から国を守っていたとか。そんな凄い人がいたとは…
「そうなんですか?俺はその人が母親なんですよね。」
「あら!じゃお父さんはエルスかい?」
「は、はい。よく知ってますね…」
「やっぱり!あの2人いっつもくっついてイチャコラしてたからねぇ。あらもうこんな時間だね。試験の時間は?」
「11時からですね…ってあと1時間後ですね。すみません!ではお部屋借ります!」
「はいよ!気をつけていくんだよ!」
そう交して学校に向かう。
学校は非常に分かりやすく、門があってでかい城のような形をしていた。門の前に行くと先生らしき人がこちらに向かってきた。
「お前何か用か?」
「編入試験を受けに来たんですけど」
「お前がカリスか。来い。試験場に行くぞ」
大柄で初めてあったら怖いけど、話してみたら案外人情のありそうな人に案内されて連れてこられたのは、大人数が入っても余るくらい広い場所に木でできた人形が7体綺麗に整列している場所だった。
「よし。じゃまずは使える魔法から撃ってもらう。火から順番にやってみろ。」
木の人形に火は大丈夫なのかと思って人形の方を見るといつの間にか岩に変わっていた。
「はい。では…〈フレイム〉」
杖を構えて唱えると先端から真っ赤な炎が出た。
俺の魔力量は前に測った時よりも多くすることが出来た。数字で表すと平均の魔力量は500ぐらいで多い人でも700いくかどうかぐらい。そして俺は母さんよりは少ないが1000まで伸ばすことが出来た。
(ちなみに母さんは10000)
「なんと…ここまで綺麗な炎は初めて見たな。では次。水だな」
「〈アクア〉」
杖から水の柱が発生して回転しながら人形を貫いた。
「なんと!初級魔法でこの人形を貫くとは…では次、木魔法できるか?」
「はい。少し苦手ですが出来ます。」
杖に意識を集中する。イメージは木の枝が真っ直ぐ人形を貫くイメージ。
「〈アルボル〉」
大きな木の枝が高速に発射され、人形を粉々に砕いた。貫くイメージだったがやはり失敗した。何故かは分からん。
「なんという威力だ…素晴らしい。これで合格だが、できる属性を全てやってくれ。もしかしたら特待にできるかもしれん。」
特待生というやつか。確か授業料などの様々な費用の無償化が主だったか。母さんや父さんには世話になっているからな、ここで少しでも恩返ししなければ。
「わかりました。じゃやりますね。〈アイス〉」
唱えると手から氷の礫が人形を砕いた。
「〈ルクス〉」
光の槍が人形を貫通した。
「〈ブラック〉」
黒い玉が人形を貫いた。
「〈グラヴィタス〉」
人形が一瞬で消滅した。
「お、驚いたな…まさか7属性持ちとは…」
母さんの言った通り、7属性持ちは相当珍しいらしい。
「理事長と校長にこのことを伝えなければ…あ、お前の教室を案内しよう。こっちだ。」
おっさんについて行くと1ーAと書かれた教室に案内された。入口で待っていると担任らしき人が入口から出てきた。
「君がカリス・ペルシズだね。校長から聞いてるよ。」
「カルマス先生、ちょっと話が。」
話している口の形をみて読み取るに、『先の編入試験で7属性の所持を持っていることがわかった。この学校の実技試験でもし死ぬようなことがあればお前のクビが飛ぶかもしれん。大丈夫か。』
カルマス先生は無言で頷いていたが冷や汗が出ていて表情も緊張していた。あとから知ったが、カルテ先生とやらは魔法化学の先生をしていて、学校の中で唯一新属性を生み出した先生らしい。
「ではカリスくん、教室に入って簡単な自己紹介できるかな。」
「わかりました。」
そう言って教室に入ると少し騒がしかった教室が一瞬で鎮まった。
「じゃあみんな。紹介するね。今日から編入してきたカリス・ペルシズ君だ。仲良くしてあげてね。」
「西町から来ました。カリスです。よろしく。」
「では質問ある人いるかな」
さっき簡単な自己紹介だけと言ったはず…何を考えているんだコイツは。
「はい!」
「はいどうぞ!カマルさん!」
「カリスくんは何属性まで使えるの?」
いきなり答えにくい質問が飛んできてしまった。謙遜して少なめに言うべきか…いや、ここは正直に答えよう。
「全部使えます。ただまだ中級魔法までしか知らないのでこの場所で教えて貰いに来ました。」
「ぜっ全部!!?」
とても驚かれてしまった。これで人生初の学生生活永劫ボッチだったらさすがに泣いてしまう。
「他にも質問ある人いるかな?」
「ん。」
「はいノルエスさん!」
「あんた強いの?」
怖い。なんで最近の若い子供はこんなに初対面の人に対して威圧的に接するんだろう。
まぁ以前の俺は初対面関係なく頭撃ち抜いてたけど
「それなりには強いと思う。父さんには剣術、母さんには魔法を教えて貰ってたから」
「ふぅん。じゃ放課後、実技場に来なさい。私が思い知らせてあげる。そんな努力は微塵も糧になってなくて無駄だったってこと。全属性持ちだったとしてもアタシには勝てないこと分からせたげる」
突然の申し出に教室もざわめき初めた。ここで引けば逃げたと思われるかもしれない。だがそれは俺のプライドが許さない。
「分かったよ。放課後ね。」
「先生もそれ気になるけど勝手に決闘の申請をしたノルエスさんは後で私のところに来るように。ではこれでHRを終わります。解散!」
自分の席について道具を用意して授業の準備をして今までの事とこれからすることを頭の中でまとめた。
まず母さんと父さんに無事に着いたことの連絡とお礼と特待をとったことの報告、そして試験も受かったという報告をして、宿に戻ったらいよいよ銃の作成への準備を…と考えていたら目の前にさっきの少女が現れた。
「カリス、だったかしら。あなた本当にあたしとの決闘を受けるの?」
「あぁ。ここで逃げたらモヤモヤするんでね。あと、これは忠告でもなんでもないけど初対面の人には敬語使った方が貴族っぽくてかっこいいから気をつけてな。」
「なっ…くっ…それを忠告って言うのよ!今日の放課後!覚えてなさいよ!」そう言って別れて授業が始まった。授業の内容は基礎魔法の内容ばかりですぐに飽きてしまったのか教室のほとんどの人が寝てしまっていた。
しかし俺は、授業自体初めてだったので新鮮でとても楽しかった。
そして放課後になりせ決闘場へと先生に案内された。
「広っ…てかこんなにギャラリー居たのか」
「そうですね。この学校は世界を見ても唯一人数が3000人を超えている学校だからね。…っともう始まるよ。さ、試験場に降りて。」言われるがまま場に降りると目の前の扉が開いてノルエスがでてきた。
「良く逃げなかったわね。そこだけ褒めてあげるわ。」
「まぁね。」
試合開始直前の合図が鳴り響いてギャラリーも黙り始めた。
「A組22番 ノルエス・カリフォルト対A組15番カリス・ペルシズ。両者前へ。」
よくアニメや漫画などで見る決闘のシーンが目の前で起こっていることに少し興奮するもそれを抑えて集中する。
「試合はじめ!」
いよいよ決闘が始まる!