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暗殺者、ミスにより転生  作者: 如月海斗
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1話「転生」

暗殺を生業としているカリス(No.02508)は仕事を貰っている企業と仲間から裏切られて殺されてしまう。そして気がつくとそこは今までで見たことの無い世界でどうやらカリスは異世界に転生してしまっていた。

その世界は魔法の使用が可能で元の世界では考えられないような出来事が日常茶飯事に起きてしまう。そんな異世界で、暗殺にしか触れていなかった彼は家族との触れ合いや友との遊びや勉強に触れていき、徐々に''人間らしさ''を取り戻していく。

そうして成長していき、その世界を調べるために冒険者となり、世界を旅したりギルドで仕事を受けて暮らしていくのであった。

「こちらNo.02508。対象を発見。仕事に移る。緊急時連絡する。」

「了解」

暗殺は鬼ごっこのように非常に単純だが針に糸を通すほど難しい作業である。それは、ひとつのミスによって死んでしまったり、或いは後遺症が残ってしまうほどの事故にあってしまうからだ。

「ここなら対象も見える。逃走経路も完璧。相手のヘリの音も足音もしない。…やるか…」

自前の完全消音スナイパーライフル、Sd_03

を手にし、うつ伏せになってスコープの倍率を調整し、集中する。

「(何人もやってきた。同じだ。俺はできる。)」

集中する。ひたすらそこから動かずに息を吸うことすらも忘れてひとつの事に意識を詰める。

そこで事件が起きた。

「動くな」

突然後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「No.02509…なにしてんだ」

「罠だよ。お前にバレずに行動すんの結構苦労したよ。数キロ先からGPSつけて追っかけてきてさ。お前との協力とか勝負とかも全部楽しかったよ。だけどそれも今日まで。今日のこの依頼も全て嘘さ。詳しい理由は教えるつもりは無い。じゃあな、No.02508。カリス」

名前を呼ぶと同時に引き金を引き、サプレッサーの音ともに意識が飛んだ。微かに聞こえた鼻を啜る音は幻聴ではないことを願いたい。


           ◆


気がついたら大人の男女2人がこちらの顔を覗き込んでいた。

「パパでちゅよ〜いないいな〜い…バァ!」

急に見知らぬおっさんがいないいないばぁをやってきた。

どうやら異世界へ転生してしまったらしい。正直すっっごく驚いたが落ち着いて物事を整理した。

あとから知ったがこの2人が親らしい。母は金髪碧眼の美人で名前はテルナ・ペルシズ、父は黒髪のイケメンで名前はエルス・ペルシズ。そして俺の名前は奇跡的に同じでカリスになった。喋ろうとしても声が出ず、何度も話そうとしたが喉からは「あー」や「うー」しか出なかった。

「ご飯でちゅか?ママのおっぱい飲みましょうね〜♡」

人妻の乳をなぜ俺が飲まにゃならんのだ。普通の飯…米が食いたい…そう思っていると言葉が話せるようになった。

「ご…はん…」

「え!?ち、ちょっと待っててね…あなたぁぁぁぁ!!!カリスが!カリスがぁぁ!!」

「どうしたテルナ!!なにかあったのか?」

「喋ったの!カリスが喋ったの!」

そんなに驚くことかと思ったが以前の知人が遂に子供が喋ったんだって騒いでいたな。懐かしな。また会いたいな…

「なんだって!!?凄いじゃないか!!でその言葉は!?」

「ごはんって言ってたわ!初めての言葉にしてごはんは相当お腹が空いてるに違いないわ!今すぐ極上肉を用意しないと!」

米が欲しかったがその晩は肉になった。飯を食って風呂に入ったあと、母が寝かしつけてくれた。

数年の月日が経ち、年が10歳を迎える年になり父が剣の稽古、そして母が魔法を教えてくれるようになった。

剣の扱いは以前はなかったが太刀や小刀などには手を出していたため握り方や振り方などは覚えていた。

「よしカリス、まずは剣の握り…か、た…お前その握り方って西洋刀の握り方じゃないか。どこで覚えたんだ?」

「この握り方がしっくりきたんだけど、やっぱり父さんの剣の握り方のほうがいいのかな」

「そうだな…俺の剣術は特別だし自分で作った奴だから覚えてもらったほうがいいけど…」

「うん!わかったよ父さん。ご指導お願いします。」

「まぁ、いいか。よし。分かった。じゃあ今から俺たちは親子ではなく師匠と弟子だ。これからの2時間、剣の稽古の時間は父さんではなく師匠と呼べ。いいか。カリス。」

「はい。師匠。」

そして2時間、剣の握り方から始まって振り方、技を多数教えてもらった。どうやら父さんの剣の振り方はよくある剣の振り方とは違って合気道や刀の技などを織り交ぜた癖のある流儀らしい。

実際に教えてもらったところ、癖があるものの合気道をかじっていたことが役に立って中段まで教えてもらえた。

「よし!今日はここまでだ!」

「ありがとうございました。」

「明日は母さんが魔法を教えてくれるらしいぞ。よかったな。」

その晩、母さんに父さんの剣術の話をして今できる剣の技、段を言って風呂に入って今日の出来事を日記にまとめて寝た。

ちなみに俺の部屋は2階の空き部屋。意外と広く、大きめのベッドを置いても半分以上空くくらいだ。


            ◆


翌朝、両親が起きる前に起きて筋トレを始めた。この筋トレは以前にもやっていたルーティンのようなものだった。若い体と言うこともあって体が軽く、疲れもすぐに取れるから以前とは比べ物にならないほど楽だった。

筋トレの内容は、腹筋65回 腕立て伏せ65回 片手腕立て伏せ65回 全力ジャンプ65回 出来たらランニング1キロ(時間的に無理)

これを毎朝(4時から8時までに)やる。やり終わったらシャワーを浴びて朝ごはんを食べる。

暗殺術の練習は必要なく、感覚に染み込んでいてあとは力の扱い方さえ分かれば以前のようにやれるだろう。

母さん達が起きてきて朝食を作る音が聞こえてきたら部屋から出てリビングに入る。

「母さん父さんおはよう」

「おはようカリス。今日はアスパラの肉巻きだぞ!」

「カリスおはよう。シチューもあるから食べてね」

「うん!」

子供らしい返事をして空いた腹をアスパラのベーコン巻きとパンとシチューで満たす。

「朝ごはんを食べたらお母さんと魔法の勉強よ!その前にこれを渡しておくわね」

渡されたのは本と木箱に入った杖だった。

「私からのプレゼントよ。魔法はそれこそ杖や本なしでやる無道具魔道士もいるけどその人たちは魔法の鍛錬を何十年も続けてやっと手の届く境地よ。でもそこまでならなくても魔法を使えるだけで凄いからね。さ、続きは後でやるからね。準備出来たら外で待っててね」

外に出て待っている間に杖を取り出してみた。見た目は木目が無く、持ち手の部分には赤い宝石の様な物が入っていた。重さは驚くほど無く、風に吹かれたら飛んでいきそうな程だった。

「カリス〜!授業始めるわよ〜!」

母さんがでかい杖と鞄を持ってこちらに歩いてきた。

「じゃまずは魔法の適性検査からね。」

そう言って鞄から取り出したのは水晶玉と石の板の様なものだった。

「この水晶は属性で、石板の方は魔力量を示してくれるわ。じゃやり方なんだけど、この水晶を持って集中してみて。」

どうやらこの水晶は持っている人が水晶に集中することによって意識を読み取り身体内部に封印されている魔力属性を調べてくれるらしい。

「うん!やってみるよ。」

集中。以前の癖で意識の経路をひとつにして意識を詰めた。だがすぐに母さんに呼び戻された。

「カリスもういいわよ。…ってこれ…1.2.3

7!?なっなななな7属性!?」

「え?」

この世界には火 水 木 光 闇 氷 などの7つの属性の魔法が存在する。だがこれは主属性で、合成魔法でたまたま誕生した人工属性も存在する。そしてどうやら俺はその主属性が全て使えるらしい。

「カリス!あなた凄いじゃない!!」

なんだかよく分からないが、使用可能属性が複数あるのはとても希少で全属性は特に凄いらしい。

「と、とりあえず魔力量も見てみましょうか。魔力量は伸ばせるから少なくてもいいのだけれど…とりあえずこの石板に手をかざしてさっきと同じようにしてみて」

同じように集中すると石板に刻まれた文字が青白く発光し、金色にまで変化した。

「んー魔力量は平均以上だけど4属性同時はさすがに厳しいわね…まぁでも伸ばせば行けるわね。あ、神思の魔力ね。これはお母さんの遺伝ね。これはね太古の昔に神様が10人の子に魔力を授けたんだけど、その中の一つで最も理想の魔導師に近いとされているものなのよ。そのうち色々教えるから大丈夫よ。じゃ、まずは基本魔法からね」

魔法の勉学は以前はなかったし魔法そのものが空想のものだったからコツを掴むのに時間がかかった。

魔法を使うには集中力と想像力、更にそれに必要な魔力量が鍵になるらしい。基本の魔法は使う魔力量が少ないが、あらゆる場面で活躍するから覚えていて損はないと言っていた。今回の魔法の授業ではLv.3と呼ばれている、アニメとかでよく見る中級魔法の1番簡単な魔法まで教えて貰えた。なかなか面白く、これを使えば銃の再現も可能だということも分かった。

「じゃ今日はここまでね。ありがとうございました。」

「ありがとうございました。」

家に戻り、母さんが昼食の準備をしている間に魔法を調べた。

今のところ分かっていることは魔法のレベルは10まであり、Lv.10まで行くと名称が変わってS等級魔法と呼ぶらしい。

本を進めていくと暗黒魔法と呼ばれる魔法が目に入った。だが、読もうとしたときにちょうど母に呼ばれた。

「カリス〜ご飯よ〜」

「はーい!」

しかたない。これはまた機会があるときに読むとしよう。

階段をおりてリビングに入って目に入ったのは肉と野菜の炒め物だった。

「さ、いただきましょうか!はい!じゃ手を合わせて!」

「「「いただきます!」」」

これは毎日やっていることだ。以前は家族もいなかったしご飯を食えないのはしょっちゅうあったから新鮮で楽しいものを感じられた。

「どうだ!カリス!母さんの飯は上手いだろう!」

「うん!あ、そういえば前から気になってたんだけど母さんって仕事何やってるの?」

「母さんの仕事かぁそういえば言ってなかったな」

「そうかしら。確か私はカリスが産まれる前は宮廷魔導師であなたが国王専属剣士だったわよね」

宮廷魔導師と国王専属剣士というとそうとう凄いものなのだろう。たしか宮廷魔導師は王宮や国王の守護、国王専属剣士も王を守るのはもちろん、他にも国のために動くものだった気がするが…そんな人が母さんと父さんとは誇らしいな。

「へぇ〜そうなんだ。俺、そんな母さんと父さんの間に生まれてこれて嬉しいよ。」

「「カリス…」」

泣き出してしまって収集がつかなくなってしまった。

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