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居眠り

いろいろと思いを巡らせているうちに気分が高まったせいでその夜はうまく寝付けなかった。

いつまでも眠れないんじゃないかという不安がさらに状況を悪化させる。

それでも目を閉じているうちにいつの間にか眠りに落ちる。


そしてそういう時に限って早く起きてしまいがちだ。


枕のそばに置いてあるスマホを手に取って、時間を確認する。

「うっわ。まだ朝の五時じゃん。全然寝られてねぇ。」


スマホの右上の電池マークが空になっているのを確認する。

スマホの電池は残り5%の文字を表示していた。


「あっちゃ~。しかも充電すんの忘れたとか。ありえん」


スマホに充電コードを差し込み、電池マークが充電用の表示になるのを確認する。


俺は、この日は二度寝という甘い誘惑に負けなかった。

二度寝したら間違いなく学校に遅刻するのが目に見えてたからだ。


何もすることのない俺は、ランニングに行くことにした。

走る用のジャージに着替え、ランニングシューズを履き、イヤホンで曲を聴きながら走る。


冬の朝は人が少なくてランニングするのにはちょうどいい。


肺に入ってくる冷たい空気が俺の体内であったまって排出される。

吐息が白く、一定のリズムで出続ける。

それが面白くてたまに強めに息を吐いたりしてみる。


走り始めにはつめたかった体が、だんだんとポカポカしてくる。


ゴミ捨て場を漁るカラスの姿。

忙しく移動する運送用トラック。


走り終わる頃には仄暗い景色から、朝日が建物の窓ガラスに反射し明るい景色へと変貌していた。


空の、淡い青と朝日のオレンジのグラデーションが、朝を告げていた。


ランニングから戻ると、かあさんが朝ごはんの用意をしてくれていた。

「ごはん作っておいたわ。私これから仕事に行くから…」

と、カバンに荷物を詰め職場へ行く準備をしていた。


「そういえば、進路希望だすのって今日までじゃなかったかしら…。大丈夫なの?」


「別に…」


「ないんだったらいいわ。じゃぁ、行ってくるわね」

そう言って出ていく母さんの背中は、か弱く、疲れ切っているのがよくわかる。


俺が一人で食べてると、春樹(弟)が起きてくる。


「兄ちゃんおはよう。昨日のことは…。母さんだって」


「わかってる」


「兄ちゃんだっていえばいいじゃん。郵便受けに兄ちゃんが毎月お金を入れてるってこと」


「別にいいんだよ」


「母さんだって、もう気付いてるよ」


「俺がいいって言ってるんだからそれでいいんだよ。この話は終わりにしろっ」

納得できない顔をしながらご飯を食べる春樹。


何とも言えない気まずさが二人の間に広がる。

橋が茶碗に当たりカチャカチャと寂しげな音を演出する。


「ごちそうさん」

俺は椅子から立ち上がり、食べ終わった皿をキッチンへと持っていき洗う。

ガチャガチャと洗う音だけが響いていた。


◎ ◎ ◎ ◎


そのまま起きたおかげで、学校に遅れることはなかった。

ただいつもよりはやく起きたせいでかなり眠かった。


何とか午前の授業は切り抜けられたものの午後に難関が待ち構えていた。


そう、日本史プラス昼飯後だ。


さすがにこのコンボは反則級でいやおうなしに俺を眠りへと誘う。



日本史の担当は俺の所属する2年1組のクラス担任でもある大野樹が担当している。

大野樹は、若く女子の学生からの人気も高い。


「おい、ここ。わかるやついるか?そうだな今日は15日だから…、出席番号15番のやつ答えろ」


シィィィン。


「おい、15番誰だ?休みか?」


クラスの誰かが答える

「15番は狩集君です」


ゆっくり近づき、バシーンと教科書で頭をたたかれる。


「えっ、ハッ。なにっ?」

いきなりたたかれて焦る。


「おい、かりあつめぇ。俺の話を聞いてないとはいいご身分だなぁ。よし、寝てても余裕ってことはこの問題の答えわかるよなぁ?」


黒板に見ればなんとなくわかるような気がするぞ…。

将軍って書いてあるな。将軍って言ったら…、偉い人のことだよな。そしたら俺の知ってる偉い人は…


「織田信長っ」


自信満々に答える俺。


再びスパーンと教科書攻撃を食らう。

周りのクラスメイトがくすくすと笑う。


授業が終わると大野に呼ばれる。


「狩集。放課後職員室にこい」


うっわ。めんどくさ。

今日も俺はダンジョンに潜らなきゃいけないのになぁ。


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