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生まれて初めてのファンレター2

作者: 鬼灯零個
掲載日:2019/06/04

最初のお話「生まれて初めてのファンレター」からお読みください。

俺は、ガンプラオタクだ。

ガンプラとはガンダムのプラモデルのこと。

中学生のときガンダムにはまり、以来ずっとガンダムファンだ。


そして、毎日毎日ガンプラを作り続けて、YouTubeにアップしている。

人気ユーチューバ―に憧れて、動画の公開をしてみたのだが、

再生回数は伸びない。

どうせガンプラは作るのだし、まあ、記録のつもりだ。

再生回数は増えないが、固定客がついているのかもしれないと思うときがある。

動画を投稿すると、すぐに見てくれる人がいるのだ。


ある日、そんな俺にEメールでファンレターが届いた。

ファンレターはこちらに・・・なんて冗談でのっけたアドレスにファンレターがきたのだ。



○○さま

いつもYouTubeで○○さんの動画を拝見しております。

○○さんには申し訳ないのですが、あなたの作るプラモデルにはまったく興味がなくて、

あなたのそのきれいな手をいつも眺めています。

その手に私は惚れてしまいました。

そのきれいな指先、きっと器用なんでしょうね。

爪の形も色もきれいですね。お手入れしているのでしょうか。

結婚指輪がないので、独身でしょうか。

毎日プラモデルばかりつくっているのですか?

あなたのことが気になって夜も眠れません。


ツイッターアドレス○○○○○○○○



俺は興奮した。はじめてのファンレターだ。

しかも、女性からっぽい。

いや、男性ということもあり得る。

俺はすぐさま、そいつのツイッターをチェックした。


マジで?

女子?ほんとに?しかも、けっこう女子力高そう。

アラサ―っていってるから、30前後かな。

Snowで盛ってるのかもしれないけど画像かわいい。

胸が重くて肩こるとかつぶやいてるし、巨乳の可能性あり。

やったー!!女子から初めて手紙をもらったぜ。

もしかしたら、チェリー卒業できるかも!

俺はさっそくツイッターのアカウントを作った。別アカだ。

とてもじゃないけど、本アカは愚痴が多くて見せられない。

別アカで、いい男を演じなければならない。

せっかく、惚れたといってくれているのだから。

俺は準備を整えてから、ツイッターをフォローし、ダイレクトメッセージを送った。


ファンレターありがとうございました。

生まれて初めてファンレターをいただきました。

とてもうれしいです。

ツイッター、フォローさせていただきました。

これからもよろしくお願いします。


ガツガツ感を出さないように頑張ったつもりだ。

これから時間をかけて彼女と仲良くなって、そのあとは・・・


ひとつ、失敗したなと思うことがある。

年齢をサバよんだことだ。

彼女が29歳だと言ったので、俺は30だと言ってしまった。

本当は40なのに。仕事はゲーム関係とだけ言った。

中古ゲーム販売店のアルバイトなんて口が裂けても言えない。

彼女は本当にかわいい性格で、女子力も高い。

俺は、彼女のツイートすべてに「いいね」を押すように努力した。

そして、仕事のできる男を演じた。毎日、明るく前向きなことばかりツイートした。


いつしか、俺たちは相思相愛の仲になった。

早く会いたいねといっては盛り上がった。

そして、ついに、会う日時を決めるまでになった。


待ち合わせ場所は、渋谷のハチ公前。

ライン交換はしてある。なにかあれば、ラインで連絡ができる。

俺は、黒い帽子を被っていく。

彼女は、赤い紙袋を目印に持つ。

これで、完璧だ。


しかし、俺には心配なことがあった。年を10歳もサバをよんだことだ。

会って、もっと仲良くなってから、本当のことを話そうと思っている。

ただし、その前に、俺が彼女にふさわしい男なのかが心配だ。

彼女が、あまりに綺麗な人だったら、俺なんか相手にされないかもしれない。

40で童貞はキモいと思われないか。

彼女は恋愛経験豊富そうだったし・・・

俺もツイッターでは恋愛経験豊富を装っていたのだけれども。


俺は、彼女の姿を見て、それによっては、しっぽ巻いて逃げるつもりで渋谷に向かった。

実は、派手な女性は苦手なのだ。


ハチ公前には、15分前についた。

赤い紙袋を持った女性はいない。

俺は、黒い帽子を鞄の中に仕込んでいる。

いざとなったら、被るのだ。

俺は、少し離れたところから、ハチ公前を観察した。

ちょうど、体重が100キロはありそうな大きな体のオバサンがいたので、

その後ろに隠れるようにして、ハチ公前を行く女の人の鞄を目をさらのようにして見た。


待ち合わせの時間がすぎて5分たった。

赤い紙袋をもった女性は現れない。

連絡もない。

遅れるなら、遅れると、連絡をくれてもいいのに。


俺は困った。

俺が、「着いたよ、今どこですか?」

と連絡すれば、絶対会わなければならない。

俺は、会う前に、彼女の確認をしたいのだ。

彼女が、派手で美しい女性だったら、逃げるしかない。

「行けなくなった」と言ってしまうと、彼女を見ることはできなくなってしまう。

俺は、考えた。

そして、最適な言葉を思いついた。

自分の居所を示さず、相手の居所をきく。


待ち合わせ時間から15分経っていた。



「いま、どこですか?」


俺はラインでメッセージを送った。



「もうすぐ、着きます」と返ってくれば、このままひっそりと待っていればよい。


俺は返事を待った。スマホを手に持ったまま、ひたすら待った。


キンコン


俺のスマホが鳴った。


ラインを見ると、

「急用ができて、行けなくなりました」と返信が。


そのとき、俺の前にいたデカいオバサンが振り向いた。


俺の着信音、そんなに迷惑だったか?


オバサンの驚いた顔。そして、悲しげな目。

俺、あんたに、なんか迷惑かけたか?

俺が、ハゲで、チビで、小太りだからって、そんな目で見てくるか?

オバサン、能面のような無表情に変わったかとおもうと、

俺の前からいなくなった。


立ち去るとき、オバサンのトートバッグの中に折りたたんだ赤い紙袋が入っているのがちらっと見えたが、気のせいだと思いたい。


それ以来、彼女とは連絡がとれなくなった。ツイッターは削除されていた。

ラインはブロックされたようだった。


俺の恋は、はかなく終わった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 切ない・・・! [一言] 前作と対になる物語ですね! この二人、案外うまくやれそうな気がしますけどねえ・・・(笑)
2019/06/06 12:10 退会済み
管理
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