第四話 自殺と事故と心の傷と(浦上要(仮)さんの場合)
最近、どこぞの番組で電気代二千円を節約することを義務付けるとかいう戯言を見て思いっきり突っ込んだ、蘆花です。
さすが、関東……自分たちの土地の気候でしか物事を考えないところですよね〜(さわやかな笑顔で、ドス声)。とりあえず、東北、北海道に住めなくなってしまう可能性がある法律ですよ、それ。
それでなくても雪子(一応作者)の家庭でも三分の一ですからね(四人家族です)。
大体、車で飛ばして三十分でやっと生活出所品が買える地域で、日中は薪使っていて、電気代のほとんどは氷点下まで下がるのでつかう電気カーペット……という人もいるのですよ〜あんかだけでは確実にぽっくり……な〜んてこともありえる人たちはどうしろというのでしょうね〜、二割にしろ、でも厳しいですよ……ん、そこまですごいところあるのかって? これが田舎クオリティですよ! 都会もん! 世界を見る目が狭すぎるのです!
現実、北の大地ではマジで死にます。
凍死、ではなくても……心臓が、ね、うん……。
寒いとね、不意に、止まるんですよ……色んなところ……。
ソレがたまたま重要な器官だったということで……別に私たちが裏で何かやってなくてもね……。ポクっと……。
だからといって温かさを求めても……使い方に注意しないと、駄目なのもあるし……。
長い話はそこまでにして、今回も私の友達が出張っています。
実情に詳しく、何よりこういう自分の感覚でしか物事を見ていない、視野の狭い人たちを特に嫌っている、友です。
というか、この話を耳にして急遽皆様方にお伝えしろと、凄い剣幕で今、私の隣にいるのですけど……え、本編始めろ? は、はい、ただいま、だから睨まないで下さい〜!
たしかに、私たちは死を望んでいました。
生きているのが嫌になっていました。
だからこそ、人通りの少ない古い山寺で私たち一家は安らかな死を迎えようと準備をしていました。
「ふん、だから望みどおりにしてあげたであろうが……それをとやかく言うでないわ!」
心の声を聞いて怒鳴るのは、鬼。
見た目はよく童話に出てくるようなものではない、至って普通の人間に見えた。後部座席に座っている私の子どもと大差のない年だろう。
だから、この子がいなくなってから、買ってきた練炭に火をつけようとした。
だけど、この子は人間ではなかった……力が違う。
前のフロントを押し、私たち家族を乗せた車をガケから振り落とす。
鬼の圧力が凄まじかったのか、地面に落ちた衝撃なのか、車の硝子が割れ、交通安全のお守りの糸が切れた。ただならぬ事態。
バウンドしたらしく、また下へと車ごと落下……硝子で守られていない車内に老木と岩も入り込み、私たち家族に両者なく襲い掛かった。
助手席の配偶者は、血をダラダラと頭から流していた。半眼に光がなく、苦痛の表情で事切れている。
バックミラーで見る後部座席は真っ赤で……ピクリとも動かない身体、それぞれひどく苦しんだ顔で固まっている。
私も全身がばらばらにされたのではないかと錯覚するぐらい、強烈な痛みが引っ切り無しだ。
「なぜ……なぜ……、なんだ……」
助からないとわかっている身体で、鬼に問いかける。
ガケから落ちたとき要の身体に重い岩が胸を圧迫させていたため、息を大きく吸い込めない。大きな声も出せぬのに……食って掛かる要に少し面を食らった鬼は手を下げた。
「ふん。冥土の土産に教えてやろう」
血まみれで惨たらしく死ぬ貴様らにせめて、贈ろう、浦上要よ。
「嫌いだぁ、練炭で自殺しようとする輩がぁああああああぁああ!!」
まだ太陽は真上にあるというのに、鬼の瞳は闇を連想させる。
その闇は、心の傷。
けして触れてはいけない傷に要は触るようなことをしようとしていた。
そもそも人通りは少ないといっても、神社で一家心中しようなんて考えたのが悪かったのか、な……。
口から一筋の血をたらし、要は絶命した。
崩れやすい、地面にたまたま車がのっかったために起きた悲惨な事故として書類が作られた。
「と、いうこと無理心中がこの神社で起きたってわけよ、美亜。結果的には家族全員あの世に逝ったわけだけど、痛まずに死ぬつもりが誤って車ごとガケから落ちるなんて、馬鹿だよね〜」
「なんであんたは心中事件をイキイキと話すの、つうかなんでそういう情報を知っているのよ」
学年行事の一環としてハイキング(冬)の寒さで気が立っているときになんでそう、余計寒くなる話題をするのか。
美亜は信じられんという顔で友を見る。
「あ〜ん、そんなしらけないでよ〜。それにまだ、山寺にはすごいネタがあるんだから〜、ここではないけど」
「知るか! 速くこんなハイキング終わらせて家に帰って電気コタツでぬくもりたいわ!」
……もう少し長く生きていたならば知る機会があったのかもしれない。
鬼がかつて人間と共に暮らしていたときの話を……。
その人間は、とうに死んでいる。
そしてその鬼が好きだった人間はどうして死んだのか……練炭による、酸欠、そして一酸化炭素中毒死。寒い夜中でも快適に寝て、明日もまた鬼と元気に遊ぼうって思っていたのに……。
そう、私たちのようにわざとではない。換気に気をつけなかったために起きた悲劇。
完璧な事故。
「ふん、まったくもって虫唾が走るわ。こちらは事故で大切な者を失ったというのに、なんで楽そうだからと真似をする……」
練炭自殺と聞くだけで、鬼の心の傷が再び開く……何度も。数えられないくらい。
棺に入った好きだった人間の躯は外の温度と同じくらい冷たくなっていた。
昨日は笑顔で遊んでいたのに……。
あんだけ、あんだけ、明日も遊ぼうって言っていたじゃないか……。
道化師とは違い、鬼は……純粋に、その人間が好きだった……別れが来るその日まで遊べたのはたしかに嬉しかった。だけど、その別れが辛い。あまりにも唐突で、驚いて、悲しかった。好きだった人間の死に方を自殺の手段にされることにいいしれない怒りを感じていた。
これからも、ずっと。
人間と遊んだことによって出来た癒しと人間が死んで出来た傷がいったいである限り。
「楽に死なせてやるものかぁああああ!!! 屑がぁあああああぁあ!!!!!」
吐き捨てて、鬼はまた森の奥へと消え去った。
眼からあふれ出る涙を拭うこともせずに。
そういえばちょうど、今日が、その人間の命日です。
だから、私を急き立てたのでしょうね……。
自殺の方法の中に事故があります。
ソレで亡くなった人は死ぬ気はありません、生きたかったのです……当然ですけど、あえて言いましょう。
そして、家族、親友は嘆きました。なのに……なぜ、その方法をわざとするのですか? いくら、気が少し変になっているからといっても……遺族としては許せないですよ!
で、前書きに戻ります。友が好きだった人間は、練炭で暖をとっていただけです……あんかに入れて、外で遊んでいるときに友に渡してくれたときもあったそうです。
温かくて、気持ちがよかったけど……ソレが原因で突如永遠の別れになったなんて、辛いのです。
練炭ではなく、ほとんど暖をとるとき電気になっていることに喜んでいた友です。
これであの悲劇はおきにくくなるんだよな、て……。
そんな実情も知らずに、そんな短絡的に電気代を減らせばいいのではないかと考えるのは本当に身勝手だと思います。
これで、いいんですよね……うん。
では、アディオス、アディオス。