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ステータスを持たない天災たちは異世界を蹂躙するようですよ?  作者: 雪野マサロン
第三章 狙われたエルフたちは藁にも縋る
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53話目 もう時間が無いから決めに行くよ

 ボクは早く皇ちゃんたちと合流したい。

 でもこいつらとの闘いなんだけどさ。思ってたよりも手こずってるんだよ。


「どうした武内!手が止まってるぞ!!」

「あー、はいはい」


 この戦いにどうしてもボクは緊張感が持てないんだ。

 なんせこいつら欲望に忠実なんだよね。

 鈴木くんなんて隙あらば僕のオッパイを触ろうとするいやらしさが気持ち悪くて相手したくない。

 ボクに隙なんてないからその程度でどうにかなる程甘くないんだけど。

 で、今相手にしてるのが鈴木くんと山なんちゃらくんなんだけど、こう人に気持ちをがりがり削る天才だよ、うん。


「陸斗きゅんが俺を待ってるんだ。さっさとくたばれ売女」

「そうだねー。待ってないからねー」


 事あるごとに陸斗きゅん陸斗きゅんうるさいホモとオッパイしか見ない変態相手にしてたら戦おうって気持ちもなくなるよね?

 それに問題なのはこのポテンシャル。

 元の世界でならこれだけ気が削がれても楽に倒せた相手が想定外の速度で動くんだから。まあ能力値的には男の竜人種の奴隷のタカトラさんくらいからな?

 強いには強いんだけどやっぱりボクには届かない。

 でもボクのモチベーションの低さから戦闘が微妙に長引いてしまっていた。


 だって、竜人種の人は戦って面白いからやる気になったけど、この二人は強い弱い抜きに楽しくない。

 ただスペック頼りに剣を振り回して来るホモと空手としての技量が素人に毛の生えた程度でしかない変態相手に燃えるものはないんだよね。

 はっきり言って武人としての誇りを何も感じない。

 努力の先にある技の昇華をまるで知らない。

 これにモチベーションを維持しろとか何の拷問?って感じだよね。


「俺は強くなった!もうそこら辺の雑魚と同列にはさせねぇぞ!!」

「強くなったねー」


 ただ扱うマシーンの性能が上がっただけで技量は何も変わってない。いやむしろスペックに頼り過ぎてるせいで劣化したと言ってもいいよ。

 正拳突きは弾丸さながらの速度だけど腕の捻りが甘いし、腰の入れ方も悪い。

 回し蹴りもチェーンソー並みの切れ味を見せるけど股関節の柔らかさが無く、見栄えばかりの二流蹴り。

 全体的に鍛練を怠っているのがよく分かる残念さだよ。それでも元の世界でチャンピョンは狙えるだろうね。


「ああ陸斗きゅん。早く俺の聖剣を突き入れたいよ」

「陸斗くんはボクのだからダメだよー」


 こいつなんてボクの事を見てもいない。

 戦いに動機があった方が気合いは入るだろうけど邪念ばかり込められてて剣に触れたくもない。

 剣技なんてあったもんじゃないチャンバラで鉄さえも真っ二つに出来る威力で攻撃して来るちぐはぐさ。

 この世界の人でももっとステータスに見合った技術を身に付けているのに酷いもんだ。


「のんびりしてるのは良いが防戦一方だな!」

「そうだねー」


 気の無い返事を適当に返す。

 このオッパイマイスターはボクを見ていない。見ているのはボクのオッパイ。だったらこっちも見てやる義理は無いよね。

 こっちは特に問題ないんだけど向こうはどうなってるかな?

 まずはノドカちゃん。


「これは中々やりにくい。早く主の所に向かわねばならないのに」

「ナハハハッ、どうですかな?【ピエロの手癖】の能力は。四方八方から短剣がそなたを襲いますぞ」


 まるでマジックショーを見させられている光景だった。

 変態なデブの背後にいくつもの短剣が浮いたままになっており、それが射出されるとそれぞれが意志があるかのようにノドカちゃんを襲っている。

 既に【竜人解放】までして青い髪が金色に染まっていた。

 あれは今のノドカちゃんじゃ苦戦するかも。

 だってあの短剣は叩き落してもまた浮かび、その数をドンドン増やしている。

 それを認識してノドカちゃんも短剣を壊してはいるが増える短剣の量と壊す量が比例していないから短剣は増える一方だった。


「はぁっ!!」

「無駄ですぞ!まだまだ増やせるのですからな!!」


 あれは出し惜しみ抜きで『氣』を使って倒した方が良いかもね。

 でも一度確実に変態のデブに致命傷レベルの深い傷を与えていた。

 この躊躇のなさは陸斗くんに早く追い付きたいからなんだろうけど容赦なく胸を抉ってたよ。

 だけどそれも手品の様に傷が消えて振り出しに戻っていた。これも【ピエロの手癖】の効果かな?

 とにかく倒すのはまだ時間が掛かりそうだ。


「全く貴方たちを置いて行っても良いですか?」

「ダメに決まってるだろマイラン!」

「私たちが奴隷になっちゃいますぅ」

「お願いだからこの場から離れないでよ!均衡が崩れちゃう!」

「お前がいないと俺たちヤバいって!ほらあの二人凄い目で俺たち見てんだけど!?」


 こっちはエルフたちだね。

 人数の上ではこっちが有利なんだけど向こうも能力値の高い変態が二人もいるから苦戦してるや。


「このエルフ結構強いよ。奴隷にしたらまず椅子にして使おうかな」

「私は机ね。熱い物を置いてあのプライド高そうな顔が屈辱と痛みで歪む顔が見たいわね」

「「おぅ………」」


 椅子と机が怯えた。

 相手が女の子って言うのもあって攻撃しにくいんだろうけど全力でやらないと本当に奴隷になっちゃうよ?


「本気で家具になりたいのならそのまま手加減していなさい。私は師匠の所に向かいますから」

「「全力でやるからここにいてくれ!!」」


 ほら、本気じゃないってマイランさんもバレてるし。

 槍を持ったギャルの土屋さんがペロっと槍を一舐めする。うわーエロいよ。


「私の基準を満たせればご褒美上げるわよ?」

「そうそう。私たちはあそこにいる痛めつけるのが好きな変態と違ってたっぷりご褒美を上げるんだから」


 清楚が売りの加藤さんも胸に持っていた杖を挟み込む。もう狙ってるとしか思えないね。


「「ご褒美…。ゴクッ……」」


 エルフの男たちが前屈みになって生唾を飲み込んだ。

 そんな姿に呆れる女性陣が白けた目になり始める。


「さてミネリア、マルア。この二人を見捨てて師匠の所に行きますよ」

「「そうしましょっか」」

「「止めてくれぇええっ!!」」


 当たり前だよね。自分が奴隷になるかも知れないのに「それもちょっといいかも」とか思い始めてる男がいたらどうでも良くなるよね。

 で、残りはレンちゃんなんだけど。あれどうなんだろう……。


「どうでござるか?この金平糖など。これはノンたんのお気に入りでござるが」

「…いらない(ふるふる)」

「ヌホーッ、クーデレ系幼女にござるよ!」


 レンちゃんに危害を加えようとするならボクが瞬時に割って入ろうと思ってたけど全くそんな気配を見せない。

 行動の一切がレンちゃんを甘やかそうとしているだけで戦う気が一切ない。


「…戦わないの?」


 レンちゃんが痺れを切らしてロリコンに問いただした。


「何故に某が幼女を痛めつけなければならないでござるか!幼女とはズバリ!!」


 一拍置いて仰々しく決めポーズをする。意味分かんない。


「愛でるものにござるよ」


 だから意味分かんない。何でそこで格好付けるかな?

 とにかくレンちゃんは問題なさそう。下手したらロリコンが勝手に守ってくれる。

 だから問題ないね。と言っても目の前に集中出来ないけど。


「よそ見してる余裕はねぇぞ!」

「あるからしてるんだけ、…っ!?」


 オッパイマイスターの攻撃を欠伸混じりで対処、しようとして急に悪寒が走る。

 ここにいたらマズイと第六感が叫ぶ。


「ノドカちゃん、マイランさん全力で回避!!」


 何からとは言わない。

 でもボクの深刻な声にノドカちゃんもマイランさんも戦闘から強引に離脱して距離を取る。そこにはエルフたちも含まれていて特訓が微妙に役に立ってた。


「よく分からないでござるがこの幼女に危機が迫っているでござる!!」


 だから本当に君何なの?敵なの?違うの?

 レンちゃんを優しく抱えてロリコンがその場から離れてくれるからレンちゃんの心配しなくていいけどさ。


 ガガガガガガッガガガガガーーーーーーーッッ!!!

 

 強烈な地盤を砕く衝撃が突如として走り抜ける。

 変態なデブが作った【笑タイム】だっけ?その天幕が見事に破壊されてボクたちの足元には深く落ちたら助からないであろう崖が出来ていた。

 これって皇ちゃんの【型無しの刀インタクティル・アキエース】の斬撃?

 …

 ………

 ………………………あ、マズイ。


「もう時間が無いから決めに行くよ」

「ついにやる気になったか武内!」


 モチベーションが無いとかそんな事を言ってる場合じゃない。

 この斬撃を誰に対して放たれたのか?

 それを考えれば悠長にしてる暇が無くなったよ。

 皇ちゃんも陸斗くんと二人になれば落ち着いてくれると思っていたのに。でもこれが二人になってから放たれたのなら陸斗くんは皇ちゃんと戦っている筈だ。


 そうなれば陸斗くんに勝ち目はない。

 だからボクは早急に二人に合流する必要が出来た。

 もう死技だからって出し惜しみをしてる場合じゃない。このまま合流が遅れれば最悪陸斗くんが死んじゃう。


「死技が一つ」


 この技は無作為に弱者を殺し続けたこいつらには相応しい技。これは本来死んでしまった強者とボクが戦う為に編み出した技だ。

 だけど世の中因果応報。やった事を後悔して反省するといいよ。

 ボクは柏手を一つ打ち、簡単な演武を神様に奉納する。



「閻魔法【さばき】」



 死人が語らないのは語る力を持たないから。だったらその力を与えてやればいい。

 地面から四つの大きな朱色の鳥居がボクたちを囲む様に姿を現す。


「何だこれは!?武内さんはステータスがゼロだろ?何でスキルが使えるんだ?!」


 ホモが何か言っているけどこれはスキルじゃないんだよね。

 そもそも元の世界でも神様はいた。

 武と神様の関係は元々深い。

 八百万の概念だってあるし、弾丸一発に神様に祈りを捧げる者もいる。

 なら、こうして神様と通じ合わせる事も可能なんだ。


「鳥居の向こう側から現れるのは皆に殺されて無念に沈む者たちに裁きの力を与える者たちだよ」


 そしてそれはボクにも言える。

 ただしボクはちゃんと礼節を持って接したし、死合いを望んだのは合意の上だ。


『ヤッホー、元気にしてるね』

『またお主か。相手がいないのは寂しいじゃろうがワシが転生するまで待っ……なんじゃこの状況は?』

 

 だからボクの前に現れるのはボクが殺したものの、こうして手合わせとして現れてくれる武人だけだ。

 一人はチャイナ服のエロイ元気な女の子。もう一人は山伏みたいなおじいちゃん。二人ともボクの相手になれなかった事を無念にしてくれた大切な友達。

 

「いやー、ごめんね。あいつらがやった事を理解させたくてね」

『いいんじゃない?それよりやろうよ!』

「あー、そんな時間あまりないんだけどな。友達がちょっとマズイ状況で」

『なんじゃ。お主に友が出来たか。どれ手合わせしてやるから連れて来てみせい』

「ごめんねおじいちゃん。その二人って武人じゃないんだ。だけどボクと同じ『天災』で…」

『『なら手合わせだね(じゃの)』』

「なんでそうなるの!?」


 そもそも世界が違うんだから来なくて良いのに。

 若干聞き分けはないけど会えるのは嬉しい。だけどバトルジャンキーだから説得が大変なんだ。


『まあ冗談じゃ』

『えー、私は冗談じゃないのに』


 山伏のおじいちゃんが引いてくれた。伊達に長生きしてないね。もう死んでるけど。


『ようはあの小僧どもに灸を据えてやれば良いんじゃろ?あそこで漂ってる者たちに力を与えてのう』

「そう言う事。ごめんねこんな事に呼び出して」

『構わないよー。どうせ転生待ちだし。それに…』


 チャイナ服の女の子、ようちゃんは目をギラつかせて変態たちを見ていた。


『あれだけ無為に命を搾取した奴らに目にもの見せてあげないとね』


 楊ちゃんたちに何が見えているのか。

 それは人の無念の残滓。

 強烈な恨みを買ったが故に怨念となって憑りついた魂が見えているのだ。

 そこら辺はボクにもよく分かんないけど、こうしてボクが楊ちゃんたちと会話して見えている。そして手合わせまで出来るんだから魂に力を与えるのも出来るんだって。

 こう鳥居の門から力を引っ張って来てうんたらかんたら?とにかくそうらしい。


『どれ、仕置きといこうかのう』

『この恨み晴らさずおくべきか、てね』


 元クラスの皆。凡人には耐えられないけど頑張ってね。ボクはこれで失礼するよー。

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