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ステータスを持たない天災たちは異世界を蹂躙するようですよ?  作者: 雪野マサロン
第三章 狙われたエルフたちは藁にも縋る
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プロローグ 皇の過去

章の管理がしたくて予約しました。

いつも通り書いたら出す予定ですのでよろしくお願いいたします。

 私は(すめらぎ)。世界一の科学者にして誰にも理解されなかった『天災の科学者』。

 私が自身を『天災』だと自覚したのは十才と意外に遅い。

 正直私が世界に期待し過ぎてしまったのもあるのだろう。


 私程度の人間なんていくらでもいる。


 そう思い込んでいたのだからな。

 しかし現実はそうでも無かった。


「───ちゃん。こう言った物を作れるかしら?」

「うん、できるよ。まかせて」


 ああ、これは私を産み落とした存在だな。

 今思えばこいつは私を利用する為にあれこれ言って来たのだろう。

 欲しければ自分で作れば良いものを。仮にも私を産んだのだからその程度の事は出来て然るべきだ。


「───。俺にこうした物を作ってくれないか?」

「だいじょうぶだよ」


 こいつは私の元となった遺伝子提供者か。

 不思議なものだ。こうした凡夫たちから私が産み落とされたのだから実は私は天から落ちて来たと言われた方がまだ信ぴょう性があると言うもの。

 こいつらとの縁は自身が『天災』だと自覚した時に切った。

 利用されていると理解して腹立たしかった上に、このままでいるのが癪だった。

 どの道私は相当の資産を稼いでいたので独立した所で問題は無かったが、奴らは必死になって引き留めようとするので私に関する記憶を消してやった。

 

 しかし私は今になって何故こんなくだらない過去を思い出しているのだろうか。


 あんな愚物どもを思い出した所で一銭の価値も無い。

 事実私は奴らの痕跡となる名前まで変え、皇として生きている。

 この名前にしたのは何となくだ。ふと浮かんだのがそれだった。理由も無ければ意味も無い。


「君が皇ちゃんだね?私は――」


 両親とは縁を切った。

 しかし私には色々と作り出して残してしまった物も数多くある。

 それらは一つ見ても私の『科学』の叡知が詰まった物。

 もっと別の言い方をするならば奇跡を内包した願望器とも言えるだけの品々だった。

 私からすれば私の認識する『科学』を物体としてまとめたに過ぎなかったが、凡人どもからすれば解析も理解もままならないが奇跡を起こせるだけの産物となる。


 それを手に入れる為に争いが起きた。

 それを使い神と崇められた者もいた。

 当然ながら私自身も狙われた。

 

 自衛手段は持っていた、いや、そもそも私の科学で作り上げた大半が自衛手段に使える物だった。

 それらを駆使する事で姿を眩ますのは容易であったし、逆に捕獲し追い詰めてやる事も出来た。


「素晴らしい。この力があれば世界を牛耳れる。是非とも私と――」


 そして月日は経ち、世界にばら撒いた私の『科学』の取り合いを眺めて、私は ―――絶望した。

 どうして自分たちで作り出そうとしないのか。

 実物があるのだから解析すれば分かるだろうに。

 何故誰も理解しようとしない。


「貴様が皇だな。我が組織の――」


 有り得ない。

 可笑しい。

 ふざけるな。

 私の憤りは膨れ上がる一方だった。

 だってそうだろ?実物を渡した。ならば後は解体して理解を深めるだけだろう?

 それが出来ないのだから見ていて滑稽だ。

 

「俺に寄越せ。俺は世界を――」


 ああ、私を理解出来る者はいないのか。

 私に師事を仰ぐ者もいた。

 しかし私の『科学』の初歩で(つまず)く体たらく。

 こんな奴では何百年と時間を有しても『科学』の理解など夢のまた夢。

 実に不愉快だ。


「革新的発想力!その科学を我が国の為に――」


 気付けば私には何でも願いを叶える姫巫女と冗談みたいな噂が走っていた。

 ただ私は私の『科学』を世に出していただけなのに。


「私の」「俺に」「僕らに」「国を」「欲しい」「貰う」「奪う」「奇跡」「願いを」「革命に」「組織が」「魔法」「偽物」「あり得ない」「頼り」「寄越せ」「寄越せ」「寄越せ!」「寄越せ!」「寄越せ!!」「寄越せ!!」「寄越せ!!!」「寄越せ!!!」




「うるさいッ!!私の『科学』を何だと思っている!!………はぁっ、はぁっ、はぁっ」


 私は堪らなくなって跳ね起きた。

 ああ、またか。また見ていたのか。


「…………下らない夢だ」


 最近は見ていなかった。

 凡人どもが私にすがり付く夢。

 とても不快で不愉快な過去の出来事。

 ぐっしょりと濡れるパジャマが気持ち悪さを増長させる。


「もう見る事は無いと思っていたが」


 私は天華と出会い、世界には私と同じ『天災』がいると知った。

 一人では無かったと安堵し、同時に『天災』こそが私を理解する可能性を持つと分かった。

 天華は正にそうだった。

 私の【六翼の欲望(シックス・アウル)】を肉体一つで体現して見せたあいつに私は歓喜した。

 あんな芸当が出来るのは後にも先にも天華しかいないだろう。

 そして天華もまた『天災』を求めていた。

 私たちは会うべくして会い、今この世界にいる。


「くそっ…」


 それは陸斗だってそうだ。

 私の『科学』でも再現不可能な料理の数々。

 本来料理など科学的であり、分野でいけば当然私の守備範囲。

 だと言うのに陸斗の料理はどれほど真似ようと味が同じにならない。僅かな誤差さえ許容せずに作ろうとしても何故か最後で噛み合わなくなる。

 故に私は諦めた。

 もし陸斗の身に万が一が起きた場合の手段として作ろうとした機械だったが、『天災』となる機械は私の手では作れないと知れただけ収穫だと思っておく事にした。


「私はもう…」


 ギュッと掴むシーツに多数のしわが生まれる。

 胸の内を襲うこれが何なのか。私には言語化する手段が思い浮かばない。

 ただ、これは天華と出会い、陸斗と出会い、この世界に来てからと言うもの一度だって感じていなかった思いだ。

 それが再熱して私を苦しめる。

 

「一人じゃないんだ…」


 これが一体何なのか。

 少なくとも『天災』のいない孤独から来るものではない。

 だとしたらこの感情が一体何なんだ……。

 頭を伏せる私に夜明けはまだ来てくれなかった。

相変わらす私が書くプロローグは短いのよな…orz


あ、ついでに評価が増えてた。とても嬉しいです。ありがとうございます!!

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