31話目 王女の困惑と女騎士の意地
後半あまり面白くないかも…( ゜Д゜)
その開戦の音は静かに鳴らされた。
それを知らない私は公務として外に出る時でも無く何時もの様に重要な書類に目を通しては判を押す。規則的な行為に従事しておりました。
「ふふ、順調にやってくれていますね」
今見ているのは潰した貴族の挿げ替え。
貴族がいなくなればその地を治める者がいなくなる訳で最優先に行わなければならない仕事です。
何よりもここは貴族が民に重税を押し付けていた地域。私が先に処断した地域の様に餓死者は出なかったものの圧政を続けて、それを隠ぺいしていたのです。
今は支援を行い、民も安寧の為に頑張ってくれていますが、もっと早く行動出来ていればと悔やまずには居られません。
ですが起きてしまった事よりも先を考えなければいけないのが王の役目。
こうした地を治めるのに相応しい人格者を派遣する。
人手のいない昨今では領地を持たない貴族や後継ぎから外れてしまった者の中から厳選するしかないのですが、何の功勲も持たない者を選べば軋轢が生まれ、功勲はあるが人格に問題がある者を選べば同じ二の舞を繰り返す羽目になります。
「これも私の選んだ道」
こうなる事は全て読んでいた。
だから依頼した当初に貴族の抜粋は済めせていたのだが、想像以上にあの方たちの行動は早かった。
僅か一週間で三つは流石に多い。
逆にこの一週間でこれだけの不穏分子見つけ出せたのだからその手腕には感心してしまいますが私が先に倒れてしまいそうです。
弱音は吐けません。
吐いた弱音の分だけ人は弱くなる。そう教えられて生きて来たのですから。
「しかしこうも忙しいと甘い物が欲しくなりますね」
そう自分で言ってどうしても思い出してしまうのは、あのカップケーキ。
ふわっふわの生地に適度な砂糖の甘みと果物の香りが程よくマッチして王都でも食べられない最高の一品。
ですのに彼らが揃って失敗作だと言うのですから果たして完全な一品はどれ程の美味しさだと言うのか。
失敗作でさえ私を虜にして止まない物。出て行かれる前にレシピだけでも頂けないものでしょうか。
「姫様っ!!」
妄想を浮かべている私に突如として現れた脂汗をダラダラと流している大臣に気を引き締め直す。
「涎を垂らしている場合ではありませんぞ姫様!!」
「涎など私は…」
ジュルッ、思い浮かべた物がまずかった。あれだけの品を思い浮かべればこうなるのは自明の理。ハンカチで口元を拭うと慌てる大臣に確認する。
「また偶然にも騎士が貴族の不正でも見つけましたか?」
そうこれはあくまでも偶然。
ランドマフィアなるものが暴れ回り、それを偶然騎士が場を治めに行こうとした所で偶然貴族の不正書類が見つかるだけの事。
恐ろしい偶然があるものです。騎士としても貴族の不正が発覚したとあっては捕えねばならず、そして私が証拠品を確認して仕方なく貴族を潰す。こんな偶然がこの世にあるなんて………ありませんね。
あの方々は私の依頼した不穏分子の排除をこうした手で処理を行ってくれているだけなのですから。
「とぼけても無駄ですよ姫様!ランドマフィアが姫様の飼い犬だと知れ渡っており現在城で暴動が起こっておるのですからな!!」
「ブハッ!!?」
え?嘘でしょ?
大臣の重大発言に目が点になってしまいました。
「何をキョトンとされておるのですか!ランドマフィアが暴れた後に堂々と城の入る姿を何人もの者が目撃しておれば否が応でも分かりますぞ!!」
「はぁあああああーーーーっ!!!??」
こんなに叫んだのはいつ以来か、っていやいやまずはそっちじゃなく何で隠れて入るとか配慮しなかったとか服装をどうにかしなかったのかと山ほど追求したいがこれは一体どうなっているのか。
最近書類仕事ばかりで近況とか詳しい事は何も知らなかったのだけれどもあの方なら上手い事やってくれていると信じてましたのに。
………いや、バレたのはワザとか。
一度冷静になって考えればあの方々はそうしたヘマはしない。
こうなるのを予測済みで派手に暴れて姿を見せては印象に残し続けた。
つまり暴動を起こさせるのも不穏分子の排除の一つとは何て乱暴な。
「王子を筆頭に第一騎士団と第二騎士団の貴族の者が暴れて姫を捕えようとしているのですぞ!!」
「そうですか」
ですがこれではっきりしました。
元々私を殺す予定だったのをこの期に乗じて暴動として動いた。ならばここで叩き潰せれば必然的に私にとっての敵は国内から消えるでしょう。
「ルミナス!」
「はっ!」
頼もしい声が響く。
ルミナスは私の幼少よりの付き合い。
平民であるのを気にしてか一定の距離を置くが、逆に私はその姿が安心出来る。
他の者だと必要以上に私と親密になりたがるも、その胸の内に野心を秘めているのが分かる為に相手には出来ませんでした。
その点ルミナスは尋常でない程に騎士として肉体を鍛え続け、団長として文句の無い実力まで伸ばしました。
周囲の目があるからこそ貴族にしましたが本人に地位の興味はまるでなく、護衛として実直に働き続ける頼もしさを友人としての感情を抜きに買っています。
「第一騎士団は必ずここに来ます。第三騎士団のみで問題はありませんか?」
「敵は倒せ、と命じて下さい」
本当に頼もしい。
相手は第一騎士団。それは貴族で構成された騎士だが、平民より劣るのも我慢ならない負けず嫌いな者たちでもあります。
レベルは平均しても高く、王の護衛を任されていただけはあるがそれは第三騎士団も同じ。
だからこそ力は拮抗するが故に技術が勝敗を分けるものとなります。
私は第三騎士団を信じていますが結果はどうなるか。
それと同時に今回の暴動を引き起こした方々はどう動くつもりか。
これ程までに先が見えないのはアビガラス王国と事を構えて以来でしょうか。
ですが負ける訳には行きません。
国の不穏分子はしっかり消さなければ。
・・・
モルド帝国第三騎士団の長を任されてどれぼとの月日が経ったか。
私は若輩の身であり、更には平民でありながら王の力によって貴族となって現在の地位に君臨している。
ルミナス・ディ・ロード。この名は王から直々に拝命された私のホコリだ。
私は平民。それも孤児として生き、死に掛けていた所を王に拾われた。
そんな私に碌な名前などなく、王に貰った名がルミナスだった。私を見て光をイメージしたと言われた時は思わず泣いてしまった。
こんな薄汚い私はどちらかと言えば影だ。
光を浴びれば消えてしまう私ではルミナスの名は似合わない。だと言うのに王は戯れにも
『貴方以上にこの名が似合う人はいないわ』
とおっしゃられた。
私はこの人の為に生きようと強く想い鍛練に励んだ。
命の限りを尽くして鍛え続ければ、気が付けば誰も私には敵わなくなってしまった。
そして騎士団長となる為に爵位を頂いた時、ディ・ロードの名を頂いたのだ。
私はこのホコリに劣らぬ様に日々鍛練を積んで来た。
そんな折に突如として襲来したスパイダーモンキー。
王の国を侵さんとする魔物に居ても居られず城を飛び出して見れば、私は有り得ないものを目撃した。
それが化物と呼ぶに相応しいまだ若い者たち。
第三騎士団の誰もがこの光景を疑う中、私が声を掛ければやったのは自分たちだとはっきり告げた。
スパイダーモンキーは軍隊だ。
統率の取れた彼らは騎士団の連携にも劣らない力を発揮し、私たちでも無傷で倒すなど到底不可能だった。
にも関わらず、彼らは成し遂げた。
そんな化物を城に呼ぶと言った王に冷や汗をかいたのを覚えている。
相対すれば敵わない。
それでも王が捕らえると言うのであれば命を賭しても使命を果たそうと考えた。
しかし結果は大敗。それも情けを掛けられた上での負けであった。
世界の広さを私は知った。
私の努力がステータスに反映され、試合を行い勝利を重ねる事で私は研鑽を積んでいた筈だった。
そんな絶対的自負を容易く打ち破られ、笑いながら子供を撫でる様にあしらわれた。
この行為に心は折れそうになったが、私は同時に気付かされる。
人の身に限界は無い。
私にとって天啓にも等しい衝撃だった。
たどり着きたい。その高みまで登りたいと願ってしまった。
私は王の為に強くなりたいと思いながら、結局私自身が誰にも負けたくないと意地から強くなったに過ぎなかったのだ。
騎士団長となり頭打ちとなっていた私にとっての新たな目標。
――― 彼女、武内天華を超える ―――
「ですが今は第一騎士団と戦う時」
騎士団同士で鍛練はしない。
だから第一騎士団の団長がどれほど強いのか知らない上に戦力差も判断出来ない。
それでも私は王の為に戦う。
この命が尽きようと。
これで連続投稿ストップっすわ。マジでスッカラカンです。
でも続きは頑張って書いてます(`・ω・´)ゞ