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プロローグ

 失敗とは誰にでも起こり得るもの。

 そして失敗とは気付いた時には起こっているものであり、回避不可能な劇物である。

 失敗が起きればそれは責務と形を変えて襲い掛かる。

 

はなはだ可笑しな事を口にする奴だ」


 しかしこの者たちは失敗を恐れない。

 わたくしの前であっても自室にいるのと同じ態度でひれ伏そうとはしなかった。


「全くだよねー。呼ばれたから来てあげたのに。ボクとしては国の力を体感出来て楽しかったかなー」


 否、失敗に対し、失敗した事にさえ気付いていない。

 彼らには力がある。失敗の全てを跳ね除けるだけの力が。


「かの有名な『人形王』も無力とは皇さんや武内さんには感服いたしますね」


 現にわたくしを守る騎士たちは皆が地を眺めている。

 彼女らは歴戦を生き抜いた強者たち。彼女らに勝てる者は彼女ら以外にいないと確信を持つ程に強いと豪語出来る者たちだった。

 それはかの最強の種族と呼ばれた竜人種にだって劣らない。そんな絶対的自負を目の前で叩き潰された。


「私の出番はあまり有りませんでした。主の為に奮闘したかったのですが」


 強い。

 もしこれがあの悪魔、アビガラス王国の国王の手の者ならば世界は終わる。

 そう確信する強さと絶望感にわたくしは打ちのめされていた。


「……レンももっと活躍したかった」


 圧倒的強さが世界を蹂躙する。

 全ては瞬く間に焼け野原へと変わり、老人は使い物にならないと殺され、子供は親の愛など受けられず、女は貞操を奪われ、男は奴隷となって死ぬまで尊厳を奪われる。

 一瞬でこの国の末路を描くわたくしの予想に間違いはない。何せアビガラス王国はそう言った国だからだ。

 ここでモルド帝国が終われば全てが詰む。

 各国が協力し合えるのもモルド帝国が旗本となって誘導しているから。

 そしてモルド帝国が先陣切ってアビガラス王国と敵対する事で各国が力を合わせて打倒しようと流れが出来ている。

 なのにここでモルド帝国が終われば全ては台無しとなる。

 各国は利権を巡って手を取り合わなくなる。

 我先にとこの国の領土を侵さんと先走り、小国は潰され、最後には全てをアビガラス王国が持って行く。

 そんな終幕を迎えて世界は滅びる。

 これを絶望と言わずに何と言うのか。


「もう、この国は、世界は終わりなのですね……」


 若くして亡くなった両親に申し訳が立たない。

 ああ、せめて女らしく愛を知りたかった。

 最初は政略結婚でも共に笑い合って子供たちの為に奮闘し、最後まで良き王女として生きたかった。

 でも、それも全ては絵空事。

 私はおそらく今から辱めを受けるのでしょう。

 それでも私は強く、最後までこの国の王女として君臨するのみ。

 唯一の救いはまだ相手が年若く、わたくしと同じ年頃と言う事か。油が三割増しにべた付いた髪のまるでない年老いた大臣よりはマシ。それでも乱暴に身を喰われるのは間違いない。

 そう思えば恐怖で涙の一つも溢れてしまう。

 

「好きになさって下さい」


 震える声を抑え、強気で言うしか尊厳を保てなかった。

 王女であっても所詮は女。この身に起こる全てを考えるだけで苦しく辛い。

 男は身体を震わせながら立っている。その身体に宿る欲情を発散出来る事に打ち震えているのだ。

 ああ、辛い。私は奥歯を噛み締める。

 ただ今は耐えるのみ。そうすれば万が一でも救いは訪れる可能性もあるかも知れない。

 僅かな希望、されどこの当ての無い希望を胸に私は今ここで抱かれる覚悟を決め、服をはだける。


「どうぞ……」


 見られる羞恥を耐えながらわたくしは男に曝け出します。

 男がもう我慢出来ないと私の前に歩み寄り、脱ぎ掛けの服に手を掛けました。

 戦う力の無いわたくしではどうする事も出来ない上に、騎士を倒した彼女たちは無傷。数の上でも戦力の上でもわたくしは圧倒的に不利。

 目を閉じて、起きる全てを受け入れます。

 せめてわたくしがこうする事で兵や民が助かるのならば安いもの。

 しかしわたくしの予想は想定外に終わりました。

 わたくしはだけた服を男は戻して何故か天に向かって顔を上げていました。


「どうしてこうなったぁぁああああああーーーーーっ!!!??」


 ………あら?ひょっとして勘違いでしょうか?

プロローグが短いので今日は二話投稿します

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