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第115話目 すれ違い

「我が、何か、……したい?」


 私の疑問を疑問で返す奴は首を傾げて目を僅かに開く。

 まるで今まで考えた事も無かったと言わんばかりにするその無表情ながらも見せる困惑にこちらも眉根を顰める。


「えー、何もしたいと思わなくてこんな面倒な事してないでしょ?ステータスとか世界中に広げて管理とかボクには無理だし」

「私ならただシステム化して放置するだけだがな」


 全自動など珍しくも何ともない。

 しかしそうなるとあれはそこにいるだけの装置と化していたのか。何の目的もなく疑問にも思わずそれを実行し続けた。

 私は有り得ないと断ずる。それだけは絶対にないと。


 長い月日が奴に絶望を与え目的を忘れさせたにせよ、動機もなくやり続けられるものではない。

 何がこいつをここまでさせるのか実に興味深かった。


「我は…、世界を管理し……、まとめ…」

「それがお前のやりたい事か?冗談にしても笑えんな」


 そんな不自然な眼差しで世界を支配するなどと言うものではない。

 だいたい世界に興味も何も無かった筈だ。そうでなければ私たちが呼び出す前に干渉したと断言する。

 

「思い出せんのなら理不尽にでも叩き落せば思い出すか?」

「うーわっ、皇ちゃん悪人顔だよそれ」

「それなら目的も忘れる奴に言え」


 白銀の小槌【決意の鉄槌デークレートゥム・ユースティティアエ】を取り出して【悪食の顎門(グナト・グラ)】の本体と叩き合う。


「いつまで殻にこもっているかは知らんが早々に引っ張り出してやろう。人らしくない者と競い合っても物足りんのでな」


 カーーーン、澄んだ小槌の音が空に響く。

 小休止を謳う音が奴を包む。

 まさか心を無くした訳ではあるまい?お前の本音を聞かせて見せろ。




 ・・・



 周囲とのすれ違いは常日頃では微々たる物でも重なり続れば劣化したコンクリートのように脆く大きなひび割れた関係を作る。

 そしてそれは神となる前だった少女にも当て嵌まった。


「行ってきまーす」

「気を付けるのよー」


 少女は活発で明るい性格をしたごく普通の何処にでもいる少女だった。

 周囲の人々に埋もれる程度の一般的少女は毎日家の手伝いのために川に水を汲んでは何度も持ち帰るのを朝の日課とし、昼になれば家畜の世話から畑までして就寝する。

 

 この世界では極めてありふれた生活だった。

 そこにステータスなどと言った超常現象は無く、中世のヨーロッパに似た生活を送っていた。

 争いとは無縁で平和そのもの。


 

 たった一つだけ少女が他人と違うとすればとある口癖を言うくらいか。



「レベルアップ」


 家畜を絞めた時に何となく言ってしまう時がある。


「パワー向上。スタミナ上昇」


 水汲みの疲労を誤魔化すように言ってしまう時がある。


「成長促進」


 元気のない植物に水を掛けながら言ってしまう時がある。

 それらは効果が無ければ取るに足らない子供のおまじないでしかない。

 しかし少女のそれはおまじない程度では済まないものだった。


 普通の同年代の少女なら、いや少年でも直ぐに根を上げる水汲みも少女はそのおまじないを呟いて瞬く間に終わらせてしまう。

 少女が育てた植物は枯れないどころかどの畑よりもしっかりとした実りをもたらした。


 これには大人たちも不思議がったが、所詮は子供。他の子よりも優れており偶々その時の畑の調子が良かっただけだと納得した。


 しかし不思議は終わらない。

 病が襲い、村の畑はほぼ壊滅した。たが少女の畑だけはいつも通り実っておりこれには大人たちも眉を顰めた。

 だが少女のお陰で死者が少なくなったのも事実。気味悪く思いながらも表だって非難はせず、心にもない感謝を少女に送った。


 


 そんな不可思議が続いたある日、決定的な事件が起きる。

 

「魔物だ!魔物が出たぞーーーー!!!」


 平和な村に襲い来る獣の群れ。

 大の大人も逃げ出す恐怖の象徴。それが魔物だ。

 ロクな装備のない村では全滅も必死。そもそもしっかりと武装した所で頑丈な皮に刃は中々通らず、王国の騎士でも一匹を三人で相手にしてやっとであった。


「ひっ、た、助け…」

「早く逃げないと!」

「何処にだよ!!俺たちこいつらに囲まれてるぞ!!」


 村を包囲しながら襲って来た魔物。

 それは今まで起きた事のないイレギュラーな事態であった。

 いつもなら見晴らしの良い晴れた日に襲い来る魔物が、何も見通せない月の無い夜に襲撃をして来るなど考えられなかった。それも多種多様の魔物たちが数を率いて来るなど誰が信じられるか。


 当然ながら魔物に村を襲われた事は何度だってある。しかしそれでも包囲される事はなく、多少村を荒らされるのを我慢して避難すれば怪我人は出ても死者は出ない相手でしかなかった。

 それが今ではまるで知恵者でも現れたように村人の誰も逃がすまいと舌なめずりをしながら迫っている。

 じりじりと狭まる包囲網になす術なく追い込まれていく村人たちはついに魔物の牙の洗礼を受け始めた。


「ぎゃぁああっ!!」

「お父さん!!」

「うわぁぁああっ!!助けてくれっ!!!」

「くそっ!簡単にやられっ、ぐえっ!!」


 血に染まる大地。悲鳴は夜空に響く。

 この村は終わった。魔物が全てを食い散らかして朝を迎える。そこに自分たちはいない。

 誰もがそう思った。




「【逆境の中の一手】」




 しかし盤面は更なるイレギュラーによってひっくり返る。


「キャンッ!!」


 狼に似た魔物が子犬のような声を出して仰向けに倒れ絶命する。

 



「【業突く張りな花嫁】」




「グォオッ!!」 


 まるで巨人が上から押し潰した様な跡を残し、二足歩行する豚の魔物を地面の染みに変える。




「【やさぐれた暗殺者】」




「ピギャッ!!」


 不必要なまでに切り刻まれた蜘蛛の魔物が手足を切り離され痙攣しながら死んでいく。

 一体何が起きているのだろうか。

 目の前で戦う幼い少女に意識を傾けられずに戸惑うも、次第に自分たちを守るために戦っていると実感し始める。


「お、おお奇跡だ…」


 村長の言葉を皮切りに皆が声を大にして歓声を上げる。

 

「魔物が、魔物が死んでいくぞぉ!!」

「助かった、私たち助かったんだわ!!」


 英雄の登場。

 未曾有の天災を退けた英雄として少女は村に君臨する。

 まさに無敵。大人でさえ歯が立たない魔物が紙きれのように切り裂かれ吹き飛ばされる。

 

 俺たちは助かったんだと熱狂し、少女を囲む。

 熱が冷めずに急遽始まる宴会は村人たちが()()()()に目を向けないようにしながら狂乱に飲まれて行く。

 




 ―――魔物よりも強い少女は一体何なんだ?

 熱の冷め始めたある若者の一言だった。

わーい、今の私は転勤の結果社畜です⊂⌒~⊃。Д。)⊃

書く暇がありませんorz

更新がかなり滞ると思いますが完成はさせたいと思いますのでよろしくお願いいたします

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