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第110話目 亡国まであと一歩

こんなので良いのかと悩みエタッてました……。

ただシナリオ変えるにはあまりに書き過ぎてしまったのでこのまま行きたいと思います。

完結までお付き合い頂けると嬉しい限りです(;´・ω・)


「陸斗くーん、こっちは終わったよー」


 茫然自失となり放置した変態と違って元気な笑顔を振りまきながら走って来る天華は、その勢いが落ちないままに俺にタックルするように抱き着いた。


「ぐへっ!」

「陸斗くんも無事だねー。変態にナニかされてないか気が気じゃなかったよ」

「………天華の攻撃が一番効いてるよ」


 えーボクの愛情表現なんだけどなー、と喚くが普通に考えてタックルされたら痛いからな。

 痛いのを堪える俺に気にせず天華は周りを、特に背中を重点的に見ると満足したように頷いた。


「んー…、うん!大丈夫だね」

「その辺にしておけ天華。陸斗が潰れる」

「えー、潰れないよこの程度じゃ」

「皇も無事だな」

「まあな。少々厄介な女に絡まれたが問題はない。しっかり調教したからな」

「言葉を濁さない辺りが皇らしいよ」


 何をしていたのか怖くて聞けないが皇も無事で良かった。

 もっとも怪我するとは思っていなかった。それだけ力の差があると初めから分かっていたのだから。


「皆さんご無事のようですね」

「……良かった」

「問題はありませんな」

「主が変態を相手にしていたので少し不安でしたが安心しました」


 マイラン、レン、ハガクレさん、ノドカも全員が傷一つない。

 

「さて、では全員無事なようなので今後の方針を再確認しようじゃないか」




 俺たちの目的である『天災』を表舞台に呼び出す計画は勇者たちを潰した程度では無理であると分かった。

 しかしこの程度は第一段階に過ぎない。当然第二段も用意がある。


「ではここは一つ、大国を更地にしようじゃないか」


 まあ用意と言うにはただの力押しであり、それぞれが少しの力で小突くだけで大国程度は潰せてしまう。

 そもそも何故この世界の『天災』に拘るか。姿を現さないのなら放置でも良い気がする。


 しかしまだ見ぬ『天災』を放置するのを特に反対したのが皇と天華だった。

 

 彼女たちは孤独を知っている。

 今まで全然自覚の無かった俺や自分の持つ能力さえも理解していなかったレンと違って彼女たちは周りとの違いを認識し、ずっと共有し合える仲間がいなかった。

 

 だから自分たちは、同胞はここにいるぞと伝えているのだ。一人寂しく殻に閉じこもった『天災』のために。

 

「しかし攻めて来た国とは言え民まで滅ぼすのは虐殺者と変わらん」

「そこで国だけ更地にする訳だ。民は生かしたまま」

「そんで大国に見合ったあの城だけは強烈に潰して終わるんだね」

「そうなるな」


 方針と呼ぶには酷くあっさりした物だが、今はまだこれで良い。

 

「これでも出て来ないなら無理にでも呼び出すまでよ」

「皇ちゃん、それフラグだから」




 こうして俺たちはアビガラス王国にまでやって来た。

 見るのはここに召喚されて以来か。大国らしい巨大な城は自分たちこそこの世界の覇者だとアピールでもしているかのようだった。

 

「最初は誰から行く?」


 天華が意気揚々と腕を振るが天華の場合は更地にしてしまう上に大量の死人が出る。

 潰すのはあくまでも国だけであり、人までは取る気はないのだ。


 そうした意味では皇も適任ではなく、レンでもうっかりで砂にしてしまう。

 となると適任はーー


「俺がやるよ。ノドカはサポートを頼む」

「分かりました」


 俺くらいだろう。

 国のみを更地にするなら問題はない。それに国と言ってもアビガラス王国の主要都市だけだ。

 大国のアビガラス王国全土となると少しばかり骨が折れる。


「悔しいものですね。師匠のサポートに付けるのがノドカだけなのですから。私も結構師事は受けたのですが」


 マイランなりのプライドがあり、俺のサポートに付けないのを悔しそうにする。


「私はあくまでも『模倣』ですので十把一絡げな者の技なら兎も角、主の技を模倣するには同じ動作を真似るしか出来ませんから」

「それに今回の調理相手は地面だからな。マイランには難しいよ」


 流石の『模倣の天災』となったノドカであっても同じ『天災』の技までは難しかった。それでも同じ威力で同じ動作で同じ箇所を的確に捌けて求める効果を発揮出来るのだから『模倣』は伊達じゃない。


 もしノドカに手伝って貰えなければ、都市だけであっても大国の首都を城だけ残して全部を更地にするには俺だけでは辛いものがあった。

 これが人命も無視して良いなら楽に出来るのだが、後味の悪いことはしたくない。


「……ノドカ頑張って」

「ああ、任せろ。主、指示をお願いします」


 レンに応援されやる気を見せるノドカは包丁を一本取り出して指示を待った。

 

「じゃあ、揃えて行こうか」


 俺はノドカの背中合わせに立つ。

 そして『氣』を包丁に纏わせると構えて見極めを始める。

 ノドカも同様に構えて包丁に『氣』を纏わせる。


「……ノドカ、少し『氣』が多いよ」

「すみません調整します」


 刃先一ミリでも狂えば結果の大きく変わる作業。纏う『氣』が俺のと同レベルでなければ当然結果は狂う。

 たとえノドカの『氣』の纏わせ方に殆ど誤差がなくとも、ピッタリでなければならないのだ。


「うん、ノドカちゃん良いよ」


 ノドカの『氣』の調整具合を天華が誤差が無いのを確認する。


「こっちも準備出来た。俺が今から捌く所をノドカは四回同時に振ってくれ」

「分かりました」


 常人なら軽く無茶なお願いに二つ返事で返すノドカ。

 しかしながらその程度なら余裕で出来ると俺も分かっている。


 それに俺自身も今から振る回数はノドカよりも多い六回だ。それもノドカと違って角度も振る力も一定ではないのだから昔の俺ではあれば現実的じゃないと否定するだろう。


 だが、今の俺なら問題ない。

 皇の改造と天華の手ほどきによって生まれ変わった身体は不可能を可能にする。


「行くぞ」

「はい」


 まずは一回、ノドカに切って貰いたい箇所と威力を導くように振る。


「はぁあああっ!!」


 すかさずノドカが四回包丁を振ると的確に欲しい捌き方で地面を切り裂いた。


「流石だ、よっ!!」


 そこに合わせるように地面を五回刻む俺は確実に捌き切った手ごたえを感じた。


「動くぞ」


 何がとは言わない。結果はもう出始めているのだから。

 ゴゴゴゴッ、と揺れる大地に立っていられなくなり膝を着く。

 

 この中で立っていられるのは体幹の完璧な天華くらいだ。

 揺れ動く大地が波のように暴れ狂う。


 混乱の坩堝に落ちたアビガラス王国は悲鳴と恐怖が蔓延しているだろう。

 地震なんてこの世界ではまだ味わった事のない事象だ。


 日本でそれなりに体験している俺たちはともかく、知らない者なら神の怒りだと騒ぎ立てる驚異的一撃だ。

 耐震のしっかりしていない建物はもちろん、仰々しく建てられた立派な建物さえ地面は揺れ動き、時には地割れを起こして飲み込んで行く。


「うむ、実に壮観だな」

「ボクたちじゃあんなに綺麗に出来ないもんねー」

「む、そんな事はないぞ。私もやろうと思えば出来る」

「はいはい」


 そんな強烈な震災を浴びながらも揺れ動く大地が人を導くように転がし、着実に建物のみを喰い殺して行く。

 俺としては魚の骨抜きと何ら変わらない作業だ。

 人と建物を仕分けして取り除く。これが出来るから『天災』と自負出来る。

 

 元クラスメートたちもやろうと思えば出来る者もいるだろう。

 地面に強力な一撃を与えれば一時は揺らせるだろうが、地震そのものじゃない上に操るなど不可能な行為だ。


「終わりましたな」


 災害の残す爪痕は復興に何年も掛かるものである。

 だが、これはどうだろうか。


「城以外なくなりましたね」


 瓦礫となった建物と一か所に集められた人々。

 立派な大都市としての姿は欠片もなく、国としての機能は何処よりも立派な城しかない。

 姿としてはある意味神秘的で、国は滅びないと象徴しているようであった。が、あれはあくまでも敢えて残したに過ぎない。


「さーてフィナーレだ。メインディッシュを頂くぞ」

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