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108話目 皇VS触手女王

 生物には往々にして脳があり心臓がある。

 ならばあれは一体何だ?


「ふふふ、この触手ちゃんたちがそのつるペタロリボディをねっとりじっくり這いまわりますよ。そして私と一緒に触手の深淵に浸りましょう」

「嫌に決まってるだろこの触手女」


 足だ。もしくは手だ。以上、それ以外の部位が何処にあるか分からん。

 あの女の後ろにでもあるのだろうか。それともこの触手はあの女そのものから生えているのか。


 疑問は尽きんがこの触手は面白くはあるがやたらとヌルヌルして触りたくないな。


「嫌がらなくても良いんです。最初はみんな決まって嫌がりますが最後にはもっとやってと自分から欲しがるようになるんですから」

「ふ…、生憎と私は攻められるよりも攻める方が得意でね」

「だったら攻められる快感を味合わせて上げる!!」


 数十本の触手が私に迫る。

 悠長にしていれば触手は私を嬲り、人前には出られない姿となるだろう。

 そんなのは死んでも御免だ。


「【有現の右腕マールス・ノウン】」


 黒く染まった右腕から放たれるレーザーで触手を一本一本的確に打ち貫いて行く。

 触手はそれなりの太さがあるが自身の重さによって千切れ落ちた。落ちた触手は地面の上でビチビチ動くとしばらくして止まった。


 形状からしてこれはタコと同程度の代物だな。

 これなら本体から切り離されれば多少動くものの脅威はない。精々落ちていると邪魔くらいか。【悪食の顎門グナト・グラ】にでも食わせるか。

 そう考えているといきなり女が身悶えし始めた。

 

「あぁん、私の触手に酷い事しないでよね」


 ………こいつは変態だ。触手を千切られて寧ろあれは喜んでいる。

 上気した頬に当てられた両手は笑みの零れる口元を抑えようとしてなのか、それでもまったく隠しきれていない。

 クネクネと動かす身体は同性であってもエロティシズムを感じさせる。


 触手よりもまず本体を駆逐するか。

 決意を新たに私は【型無しの刀インタクティル・アキエース】を取り出す。


「害虫は駆除するに限るな」


 触手と一緒に奴の胴体を真っ二つにしてしまおうと横に振りぬいた。

 しかし私には想定外の事態が起こる。


「………【型無しの刀インタクティル・アキエース】を止めるか」


 圧倒的な切れ味を誇る【型無しの刀インタクティル・アキエース】は粒子を任意に固める事によって切れ味を調整する。

 今回の【型無しの刀インタクティル・アキエース】の切れ味を五段階の数値で表すなら『三』。


 これは横並びした人体を三つをまとめて斬れる切れ味だ。この人体をまとめて両断する斬撃を受けて無事だとは思わなかった。

 触手の強度など高が知れていたからこれで十分だと思っていたが認識を改めよう。あれは硬い。


 触手を何本も重ねて受け止めた女は少したじろいでいるが平気な顔で突っ立っている。

 本気ではなかったとは言え、私が目論見を外すとあっては科学者の名折れだ。些か不愉快である。


「おっ、どろきました。まさか硬化させた触手に刃を食いこませるなんて思ってもいませんでした」

「私はその触手ごと斬り飛ばせなかったのは不快でしかないがな」

「通常時の触手でしたら最初のビームで十分切れますけど、この触手は動きが鈍くなる分硬くて太くて頑丈なんですよぉ~」

「……………いちいち卑猥に言うな。陸斗は何故こんな変態しかいないクラスメートとと知己に…、ん?」


 この反応は、マイランか。すぐに勝負に出たようだな。

 強烈な魔力の収束は私の科学で検知可能であった。

 本気で魔力を出したマイランの能力は私の科学でも検知は出来ても測定を振り切る。

 

「流石マイランか。む、ノドカもやるな」


 私が誰かを賞賛するのは滅多にない。それだけ成長したとも言えるが期待などしていなかっただけに驚きもあった。


 少し前にマイランとノドカは『天災』の領域に足を踏み入れた。


 マイランは『魔剣』、ノドカは『模倣』の『天災』となった二人の共通点だがステータスの値が無くなった事にある。


 やはり私たちと同じで『天災』はステータスで測りきれないようだ。

 私の『科学』の範囲をマイランが抜けたのと同じで異なる領域になるらしい。


 いやはや私はこの事実に興奮したとも。これに興奮せずして何に興奮するかと言える事態であった。

 

 それはつまり逆説的に考えてこのステータスを作った者も『天災』である証だ。


 ステータスは世界のプログラムだと、自然的なものだと断ずるには仕様が人間くさい。

 私たちをステータスで測れなかったのもその証だ。


 私たち自身、何らかの方法でそれぞれの『天災』を理解する。

 私であれば天華の『武』や陸斗の『料理』を『科学』で認識している。


 しかしそれも一定の領域を超えると途端に不可解で不明確になる。

 天華は何故人の身一つで空を飛べるのか。陸斗は何故包丁一振りで空間が切れるかなど未だに分からない。


 それがステータスでも同じ事象が起こっているのなら、このステータスの影にはまだ見ぬ『天災』が眠っているのではないか?


 そうした仮説が生まれた事で私たちは行動した。

 今回の戦争もマイランとノドカのテストに丁度良く、かつ、まだ見ぬ『天災』が勇者と呼ばれる強者が私たちステータス皆無の者に大敗すれば良い加減に私たちの存在に気付くのではないかと言う実験だ。


 ん?モルド帝国?別に滅んだ所で興味は無かった。

 ただこの際、全てを一切合切清算するのも悪くないと考え、元クラスメートの勇者たち及びアビガラス王国を潰してしまうかと至っただけだ。大国一つが滅びればそれはそれでメッセージとなるのでな。


「では私もやるとしようか」


 せっかく滅んでも構わんのだ。派手に暴れても構わんだろう。


「その余裕の笑みをア〇顔に変えて上げる!」

「うるさいぞ歩く十八禁」

 

 喧しく騒ぐ十八禁触手女が先の倍の触手を背中から生やす。

 で、あるならば私はその触手を根絶やしにするとしよう。『界の裏側』から取り出した球体の付いた一本の木の棒である【悪食の顎門グナト・グラ】を展開し、顔のあるハンマーに似た金属器としての本来の姿に戻す。

 

「【有現の右腕マールス・ノウン】を()()。【悪食の顎門グナト・グラ】」


 私の肩まである【有現の右腕マールス・ノウン】を丸々【悪食の顎門グナト・グラ】の口に放り込む。

 傍から見れば狂気の沙汰か?

 何でも食す【悪食の顎門グナト・グラ】の口に自分の右腕を入れるなど自殺行為と言えるか。

 しかしこれこそ【悪食の顎門グナト・グラ】が本領を発揮する使い方だ。

 

 【有現の右腕マールス・ノウン】は『界の裏側』に繋がる端末でもある。

 無尽蔵に食う【悪食の顎門グナト・グラ】の本質は分解であるが、――本領は()()にある。


「ふはっ、ふははははははははは!!誇るが良い!この私のこれを見られたのは天華以外にいないのだからな!!」


 ガキリッ、金属と金属の噛み合う音は歯車の噛み合いにも似て心地良い。

 【有現の右腕マールス・ノウン】から供給される金属は【悪食の顎門グナト・グラ】と同質の物。相性は非常に良い。


「な、何それ…」


 膨れ上がる金属の塊が私をも包む。

 触手女からは勝手に金属が増えて行くように見えているか。ただここで驚いて貰っては困る。

 膨れ上がった金属が私の上半身を包み込むと、私の求める形へと姿を変える。



「【悪食装甲(グナド・グラ)()顎門の贖い(アトーメント)】」


 

 【悪食の顎門グナト・グラ】は【有現の右腕マールス・ノウン】と同じく黒く染まるだけに留まらず、上半身を包む金属さえも黒く染める。

 右肩には不必要なまでに大きな球体を左肩には箱にも似た正方形の肩当て。胸当ては赤黒く脈動し、非常に生命的でありながら私の身体に納まっていた。

 

 右手に持つ【悪食の顎門グナト・グラ】はさながら西洋のランスか。

 しかし似ているだけで用途は違う。ただ突き合うだけならこんな物々しくなくても良いからな。


「これこそ私の科学の本領だ。味わえる幸福を噛み締めると良い」


 準備は整った。

 人の身で科学に耐えられるか実験と行こうじゃないか。


「そんなコケ脅しで!!」


 触手女が初手の数倍の触手を私に向ける。動きがやや鈍いのは硬化させたままだからか。

 なるほどそれならば【型無しの刀インタクティル・アキエース】も防げて故に通じると思ったのだろう。

 しかしそれは――


「実に浅はかだ」

「なっ!?」


 科学者であるこの私が強度計算もしないと思っているのか?これなら十分に通ると確信して使っているに決まっているだろうに。

 触手は私の目の前で砕け落ちた。

 

 一体何をしたのか。

 当然【悪食の顎門グナト・グラ】に食わせたに決まっている。

 形状から確かに今私の肩にある方が口ではあるが、槍の如く尖った先端もまた口だ。

 

 触れればその悪食はあらゆる物を食う。それこそレンの分子崩壊と同じでな。

 違うとすれば私のこれは吸収する。そしてエネルギーに変えるので【悪食装甲(グナド・グラ)()顎門の贖い(アトーメント)】を動かすバッテリーになる。

 

「お前たちの敗因は『天災』を甘く見た事にある。ステータスの枠組みに浸かり続け、自ら外に出ようとしないお前たちでは越えられない壁だ」

「わ、私の触手は完璧です。私の触手に蕩けない人なんて…」

「だからそれがお前の限界だ」


 どれだけ触手が凄かろうが強かろうが、『天災』に測れてしまうお前たちに敵う要素は何処にも無い。

 

「さて終わりとしよう。その触手は全て私が頂く」

「ひぃっ!!来ないで!!」


 怯え後ずさるももう遅い。

 

「【悪食装甲(グナド・グラ)()顎門の贖い(アトーメント)】全てを喰らえ」


 必殺の槍が全ての触手を削り落とさんと暴れ回る。

 触手が一本、二本、三本。


「や、やめっ!」


 四、五、六、七。


「ら、らっ…」


 十、二十、三十。そしてフィナーレだ。


 

「らめぇぇええええええええええええええええええええっ!!!!」



 最後の一本まで落とされた触手女が絶叫する。

 丸裸にされたこれに脅威はない。

 膝から崩れ落ちた触手女を私は見下ろす。


「これが『天災』だ。理解したか?」


 やはり屈服させるのは良い。身の程を弁えるからな。

 触手女は弱弱しく顔を上げるとその目には奇妙な好的色が浮かんでいた。


「はい…。お姉さま♡」


 …………………ん?まあ良いか。害は無い。

 さてここまで暴れても現れないか。次は国をやってしまうかね。

遅くなりまして…


とあるアーケードを楽しんでました。低予算で☆5来た時はびっくり。一日中やって出ない人いるのに。でもウラ〇さんとか何か違う。アルト〇アじゃないのかー

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