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107話目 レンとノドカVS『山崎光黄被害者の会』

 レンたちは余りを処理しないといけないみたい。


「……逆恨みなのは分かってる。でもレンにとってご主人様を傷つけさせた敵」


 それでもこの組み合わせは神様の悪戯?

 都合良くあの時と同じメンバーが揃ってた。

 

 レンが制御し切れなかった力をこの人たちが躱して結果ご主人様が死に掛けた。

 その思いがあるからか自然とこの人たちを見ているとあの時の後悔が浮かんで来る。

 レンはもっと上手くやれた。レンが頑張ればご主人様は無傷だった。


 そうした意味ではこの組み合わせはあの時のやり直しをしろと神様が言っているように思えた。

 それでいて今はノドカもいる。


「あいつらは主を攫おうとしたんだ。レンのそれは別に逆恨みでも何でもない」

「……ありがとうノドカ」


 横にいるだけで広がる安心感。

 もう一人じゃないんだと強く実感が持てた。


「……だから倒す。今度はしっかりと」


 レンの罪を今清算する。それで全てが元通り。

 ただよく分からないのが一つ。何であの人たち円陣組んでるの?

 不思議に思っていると突如赤い髪の人が叫び始めた。

 

「俺たちはもう戻れない!」

 

 何かとても悲哀の籠った声がレンの耳に届く。

 

「俺たちは弱い!どうしようもなく弱い!!最近山崎の野郎に襲われても心が受け入れ始めているくらいに俺たちは弱い!!」


 ウホッ、な声が何処かから聞こえたのは何故?

 レンにはあの人たちが仲間に襲われてる意味がよく分からなかった。

 仲間なら助け合うのが普通じゃないの?やっぱり勇者たちって変。


「ただ諦められるか!?俺たちは所詮加賀の代用品だ!!」

「いや諦められない!!」

「そうだ!!俺たちは加賀の代用品じゃねぇ!!」


 まだ戦ってもいないのに慰め合っている謎の集団。レンはどうすればいいの?

 もう始めてしまおうかと思っても何故か聞いていると虚しさが響いて来て手が出しにくい。


「一発!たった一発でも良い!!俺たちは加賀に同じ目に遭って貰いたい!!」


 円陣を組む勇者たちの手に力が入った。


「襲われる苦しみを奴に!!」


「ケツが痛くて寝れない夜を奴に!!」


「そもそも寝かしてくれない夜を奴に!!」


 それぞれが好き勝手変な事言ってる。ご主人様はレンたちの、レンたちはご主人様のもの。他の誰かが入る余地は残ってない。


「俺たち『山崎光黄被害者の会』に加賀を入れてやるんだ!!」

「「「「F〇CK!!F〇CK!!F【ピーーーーーーーーーーーーーーー】CK!!!」」」」


 ???

 

「……ノドカ、あれが何か分かる?」

「レンは知らなくても良い事だ」


 そうなんだ。取り敢えず聞き流しておく。

 あの人たちはようやく円陣を解いてこちらを見た。

 いつも通り目がチカチカする髪色の人たちだ。


「俺たちは別にお前たちに興味はない」


 レンたちの周囲に植物の蔓が溢れて来た。

 ちゃんと知ってる。あの赤い髪の人のスキルだって。


「だが俺たちが加賀に手を出そうとすれば自然とお前たちは妨害するだろう」


 植物がレンたちの背丈を超えて成長するとそのあちこちに薔薇の花が咲き始める。

 

「だから俺たちはお前たちを倒す!!」


 たしか【薔薇の迷宮】って名前だったと思う。でもレンもノドカも離れ離れになってないし無意味。精々応援が得られないくらいだけど別に要らない。レンたちだけで何とかなる。


「行くぞ!!」

「「「「おう!!」」」


 あの人たちはそれぞれが得意のスキルを使って来た。

 見えるだけでも水の輪っかに糸に音。四方八方から襲って来るスキルの数々は普通なら過剰な攻撃だと思う。


「…けどレンには足りない」


 水の輪っかと糸は砂に変える。音は地面から反射板を出して押し返した。

 でもそんなのは百も承知だと言いたいのかあの人たちの表情に変わりは無かった。


「当然そうなるよな」

「分かってるよ。僕らのスキルだけじゃ傷一つ付けられないって」

「だが、これならどうだ!!」

「「っ!?」」


 突如としてそれは起こる。

 周りを埋め尽くしていた薔薇が脈動すると形を変化させ、人型の人形が次々に作成される。

 前はこんな力使ってなかった。逃げていたから使えなかったのもあるかも知れないが、数の有利を更に強調した。


「菊池!!武田!!」

「「おう!!」」


 スキル【不協和音】と【精神誘導】で人型の人形があの人たちの姿そっくりになっていく。

 どれを攻撃すれば良いか分からない。それは十分に驚異だ。


「どうだ!!これが加賀への恨みで生まれた新技だ!!」


 沢山の見分けのつかない敵は確かに恐ろしい。でも、それは普通であればだ。レンたちには関係ない。


「……【レンだけの軍隊】」


 ノドカの邪魔になるから数体だけ出す。

 

「……確かに凄い。でもそれレンの劣化版」

「そもそも本物に見えるようにしているだけだ。能力まで使える訳ではないのだろ?」

「ぐっ…」


 身体能力は再現出来ても魔法やスキルまで使用は無理。だってあれは植物だから。

 それにレンには見える。たとえどれだけスキルで上塗りしてもあれに命を感じない。多分ノドカも分かってると思う。


 現に言い当てられてあの人たちはたじろいでいる。

 この人たちが他に何もしないとは限らないからさっさと終わらせる。ご主人様も待ってるだろうし。


「……邪魔な植物は砂になれば良い」


 生み出したレンを数体歩かせて植物にぶつける。それだけであの人たちの姿をした植物は砂に変わった。

 これだけで十分だった。前に会った時からさして成長してない。

 

 レンは次々と植物を潰して行く。

 殴りかかったりして抵抗はしているけど触れた先から砂にするレンの力なら当たった所で問題なかった。

 相性で言えばあの人たちにとってレンは天敵だ。


 作った先から潰されては堪らないだろう。一応消しても頑張って作ってるが無意味だ。少しずつ押してる。

 ノドカの出番はないと思った矢先、それは起こった。


「…っ?!」


 動かしていたレンの複製同士がぶつかり合って互いを消してしまった。

 レンの制御ミス?そんな筈ない。レンの複製は手足と同じ感覚で動かせる。


 だから原因があるとしたらそれは向こうにある。

 そう考えて、レンは足元を見れば、水で出来た車輪が幾つも配置されていた。

 

「……これが原因」


 確か名前は【水車輪】。レンにとって忌々しい記憶が蘇る。

 レンの攻撃でご主人様が死にそうになったあの時の記憶。半分も身体を失ったご主人様にレンは自分までも死んだと錯覚させられる程の絶望を味わった。

 あの人たちはレンが不愉快になっているのを知ってか知らずか、レンの攻撃が外れたのを煽って来る。


「そうだ!ただ植物を出しただけだと思うなよ。他にも俺のダンジョンマスターの力で全員を配下にする事でこのダンジョンそのものに全員のスキルを合わせる事が可能になったんだ!!」


 つまりレンが注意してやろうともこの【水車輪】が突如現れて邪魔をするし、他のスキルで妨害をされるらしい。

 とても面倒。下手をすればレンはあの時の二の舞を踏む可能性があった。

 このダンジョンを全て砂にしようにも互いを高め合ってるからか前みたいに全部砂に出来る気がしない。


 やった先から多分再生されちゃう。前は広範囲に展開してたけど、今回はこのフィールドだけ。力を圧縮してるから再生するのがとても速い。


「……レンだけだったら厳しかったかも」


 でもここにはレン以外にも『天災』がいる。



「ならレンが存分に戦える場を作るとしようか」



 レンに気を使って前に出なかったノドカが前に出る。


「一人だろうが二人だろうがここは俺たちの腹の中だ」

「勝てると思うなよ。特にこのダンジョン内なら少なくとも山崎と互角に渡り合ったんだ!」

「俺たちの努力の結晶だ!」 


 あの人たちが勝手に騒いでるけど、ノドカには無意味。だってノドカの『天災』はあの人たちにとって厄介だから。

 

「それがどうした?見ている限り、この程度なら()()()()()


 ノドカは武内様と同じ『武の天災』になるんだと思ってた。でもそれは間違いだった。

 実の所ノドカは何でも率なくこなせる。


 家事だってマイラン並みに出来るし、魔法だって一度見れば何となく理解していた。

 武内様がお城で暴れた時も『氣』を習得したし、【麒麟招来】も何度も見て使えるようになってた。


 ノドカが才能を開花させた時は本当に驚いた。

 レンやマイラン、皇様の力だって()()出来るようになった。



「……『模倣の天災』スイレン・ノドカ」



 同じ『天災』同士だと難しい所が幾つあるらしいけど、あの人たち程度のスキルなら問題ないみたい。


「こ、これは?!」

「嘘だろ!?」


 ノドカは今、あの人たちのダンジョンを把握した。

 そしてダンジョンを『氣』と魔力を併用して掌握し組み替え始める。

 咲いていた薔薇が枯れ、張られていただろう罠が次々に破壊されて行く。


「ここから先は私のダンジョンだ」


 一歩も動かずあの人たちの空間を半分以上も奪ったノドカは凄いと思う。

 でも、そもそもやる必要は無かった。身体能力からしてノドカに劣ってるだろうし、【麒麟招来】まで出来るノドカにあの人たちが着いて来れると思えない。

 

 やったのはレンのため。

 レンが最後にこの人たちと決着を着けるお膳立てをしてくれたんだ。


「……ありがとうノドカ」

「気にするな。私はお前を守ると誓ったからな」


 強くなっても昔と変わらない笑みを浮かべるノドカはやっぱりノドカだ。

 皇様や武内様のように『天災』の領域に足を踏み入れても一緒にいてくれる。


 だからレンは頑張れる。

 レンはあの時のトラウマから打ち勝つ。


「……【砂の王】」


 出したのは砂だけで構成された巨人。このダンジョンのせいで天上一杯に留まってるけど十分だ。


「ま、待て!」

「それで押し潰されたら死んじまう!!」


 この人たちを殺しはしない。

 でもレンの前に、ご主人様の前にもう二度と現れる気がなくなるように徹底的に洗ってあげる。


「……じゃあ、さよなら」


 巨人が動く。

 あの人たちがスキルを解除しようとするが弱まればその分ノドカが掌握してしまうから逃げるのは不可能。


「う、うわわっ!!今井【水車輪】を!!」

「相手は砂だぞ!?一部動かしても無意味だ!!」

「安藤!!早く【薔薇の迷宮】を解除してくれ!!つぶされちゃうよ!!」

「やってるがあいつに奪われた!!どうにも出来ない!!」

「くそぉぉおお!!」


 巨人の口に飲み込まれたあの人たちはしばらく砂の中で振り回され続ける。

 これでレンたちの勝利だ。


「もう大丈夫だなレン」

「……うん」


 ノドカが掌握してた【薔薇の迷宮】を解除して外に出る。

 今のレンはとても気分が良かった。あの時の罪を清算出来たみたいで晴れ晴れとしたこの空みたい。

 ありがとうノドカ。レンを見守っててくれて。

どう料理しようかと考えましたがこの人たちはこうするべきでしょう。だってモブだし(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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