プロローグ
作風変えて頑張ります
「おお、勇者よ。よくぞ我がアビガラス王国へ参った」
俺は普通に学生をして、普通に社会に出て、普通に余生を過ごすものだと思っていた。なのにこの状況は何なのだろうか。
辺りを見渡せば俺以外にも呆然としており、この状況を受け入れられないクラスメートが多い。中には歓喜の表情でガッツポーズしている奴もいたが。
「何なのよこれは…」
とある女子生徒、渡辺さんのそんな言葉を皮切りに自分たちの身に起きた謎の現象を口々に呟く。
「俺たち教室にいたはずなのに」
「どうなってんだよ」
「分からないわよ。いきなり光ったと思ったらここにいるんだもの」
「ふひひ、異世界召喚ですな。チートですぞ。チート無双の始まりですぞ!」
「バカじゃね?現実見ろよ」
「でもここ知らない所だよ?普通じゃない」
「一体どうなってるのよ」
混乱の助長して行く中で何故か俺の視界の先で異常なまでに冷静な二人が見えた。あれは武内さんと皇さんだ。
「静まれ!王の御前であるぞ!!」
シンっ、と一際大声を出す騎士にクラスの皆は口々に騒ぐのを止めた。
「よい。いきなり他の世界から呼ばれて混乱するのは無理もない」
王様は王座の上で踏ん反り返りながら騎士を制した。
成り行きが分からない。いきなり剣で刺される事はないだろうが不安は募るばかりだ。本当に大丈夫なのだろうか。
「そなたらを呼んだのは他でも無い。我らの宿敵である『人形王』を倒して欲しいのだ」
これはまるで俺たちが物語の主人公になったような王道ファンタジー。
だと、この時までは思い込んでいた。
だが違った。この物語は紛れ込んだ異物によって世界が瞬く間に蹂躙される話であった。
異物の名は元の世界でも『天災』と呼ばれる異端児たち。
この勇者召喚はそんな天災児たちによる異世界蹂躙劇の幕開けでしかなかったのだ。
俺はこの悲劇を眺めるただの観客。
国が滅びる程度で済むのを願うだけしか出来ないのだった。