第6話 模擬戦
「毎度のことながらこの色付きレーションはなんとかならんのか?」
「文句言わずに食べなよ鋼鬼、それに肉や魚に野菜が食べたかったら戦闘員にでもなるしかないんだから、俺たちには無理な話だよ」
「分かってるけどよ、この差別はなんとかならないのものかね」
「差別じゃなくて区別なんじゃないのかな?」
そんな事をぼやきながらも黙々と食べる二人に。
「よっ、お前らも昼か?」
声のした方を向くと、わらわらと屈強な身体付きの漢達が自分達と同じお盆に盛られたレーションを持ってこちらに向かって来ていたので。
「先輩達もお昼ですか?」
「少し早いが、雪乃さんに言われてな」
そんな事を言いながら自分達の隣に座る先輩達、そして彼らもご飯を食べながら。
「そういえばお前らまたなんかやらかしたんだって? おかげで雪乃さんが呼び出されて帰って来たときにはそりゃもう鬼の形相だったぞ」
うっ、とレーションをすくうスプーンを持つ手が止まった。
「そんなに怒ってましたか、でも俺達そんなに悪いことしてないと思うんですが」
「お前らな、医療キットを一つ無駄に使わせといて、お咎めなしなんてありえないだろうが、たくこれだからお前たちは」
先輩は少しの間頭を抱え。
「まぁ、お前達にこんな事言っても意味ないか、でもな少しでも申し訳ないって気持ちがあるなら、今日ぐらいは時間どうりに出勤して雪乃さんに謝っとけよ」
忠告をくれた先輩に対し。
「分かりました」
と返す自分と。
「うぃ〜、なら屋上で一休みしてから向かいますよ」
とやる気のない返しをする鋼鬼。
そんな鋼鬼を相方としてひと睨みしたが、鋼鬼何も感じ取ってくれず。
「んじゃ行くぞ龍也」
そう言いながら、お盆を取り立ち上がる鋼鬼、自分もそれに続けと立ち上がり。
「お先に失礼します先輩」
「お先に〜」
そんな二人を見ながら先輩達は。
「雪乃さんに何されても知らんからな」
そんな忠告に鋼鬼は。
「雪乃さんになら何されたってご褒美だよ」
と返した鋼鬼に先輩達は。
「違いねえ」
と賛成の声を出し皆が笑い、そんな笑い声に包まれながら、食堂を後にした。
その後はいつも通りの順路で屋上に向かい。
「いや〜、やっぱりここが一番昼寝にはもってこいだなぁ〜」
と言いながら伸びをして寝転がる鋼鬼と。
「確かにそれは分かるけど、今日こそは時間通りに行くんだよ、分かってるよね?」
そう念押ししながら腰を下ろす自分に。
「わーてるよ」
とやる気のない返事が返って来た。
本当かよと疑いながらも、自分も目を閉じしばらく沈黙していると唐突に。
「そろそろだな」と鋼鬼が言ったので、自分も「そうだね」と返し目を開け、屋上から見える広大な荒地の方に目を向けた。
するとまもなくしてズシンズシンと言う音と軽い揺れ、そして一五メートルほどの大きさの機体が姿を現した、それも一機ではなく二機三機と増え、反対側からも同じように機体が現れた。
「どうやら今日は模擬戦のようだな、んでどこの隊かは分かるか?」
「無茶言うなよ、機体を見ただけでどこの隊なんて分かるわけないだろ、でももしかしたら右側の隊は霧崎君達かも」
「どうして分かったんだ」
と言いながら立ち上がり柵の前まで移動して来た鋼鬼が。
「あぁ、なるほどなあの黒鬼の装甲か」
「うん、黒鬼シリーズは起動力特化のオールラウンダーなのに、それを殺すほどの装甲をつけるのは、霧崎君ぐらいなもんだし」
「だよなぁ、あんなに装甲を盛るなら、近距離特化の青鬼シリーズにでも乗ればいいのにな、まぁあの臆病者の霧崎には無理か」
「それならいっそのこと遠距離狙撃型の赤鬼シリーズにでも乗ればいいのにね」
「そりゃ、あいつのチンケなプライドが許さないんだろ」
こんな感じで知らないうちにディスられる霧崎君を哀れんでいるうちに戦闘は開始された。
そして開戦の合図とともに放たれた巨大な爆発音とともに、霧崎君達とは逆側に位置する隊の赤鬼が倒れた。
「やっぱり凄いね凛さんは、あれほどの早打ちで、完璧に相手の頭部を撃ち抜いてる、これが実弾だったら終わってたね」
この模擬戦の間は弾丸はペイント弾が使われて、近接戦もなるべく寸止めが決まっている。
「だな流石は姉さんの再来とまで言われただけはあるな」
「まぁ実際姉さんの妹だしね」
そんな会話を繰り返しているうちにも戦闘は進み、はやくも終盤に差し掛かっているようだった。
青鬼が黒鬼の懐に飛び込み、黒鬼のブレードを持つ右腕を左手に装備する盾で払いガラ空きになった胴体に目掛け勢いそのままにタックルをかまし、なすすべなく弾き飛ばされ、数度のバウンドし地を抉りながら止まり、黒鬼は立ち上がろうとしたが、機体の首部にブレードを突きつけられ、二人の戦いは終わった。
「アキラ君も凄いよね、あそこまで滑らかに機体を動かせるのって、やっぱり元々の運動神経の良さが影響してるのかな?」
「そうだろうな、まぁなんやかんやで優秀なんだよなあの班」
そして最後に霧崎君の乗る黒鬼は装甲に物を言わせたゴリ押しで勝っていた。
そんな戦いを見た後に無意識だったが。
「俺にもっと高い身体能力さえあれば、今頃は俺もあそこであんな事してたのかなぁ?」
自然に出た発言だったが、鋼鬼はそれを聞き逃さず。
「今更そんなこと言っても後の祭りだろうが、まっ、俺ももっと脳波数値がもう少し高ければって思うがな、今はこれでも結構満足してんだぜ」
そんな聴いてて恥ずかしいと言ってのける鋼鬼にこちらも照れながら。
「嬉しいこと言ってくれるじゃんかよ」
そう返すと鋼鬼も少し恥ずかしかったのか。
「だろ? てかそろそろ行かないと遅れるな」
少し照れながらそんな事を言う鋼鬼に。
「そうだね、そろそろ行こうか」
と返し屋上を後にし、整備塔を目指した。
そして結局いつも通り遅れ雪乃さんにしこたま怒られたのは言うまでもない。
村人勇者の英雄譚という作品と交互に投稿して行くつもりです




