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戦場に舞う二つの円舞曲  作者: ワカメ
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第5話 幼馴染

「だだいま戻りまじだ〜」


 教室に入りながそんな事を言い、集まる視線を気にすることなく、引きずって来た鋼鬼を席に上手いようにうつ伏せにし座らせ、自分も何事も無かったように席に腰を下ろすと。


「はぁ、まったく君たち第四班にまともに授業を受ける意思のある奴はいないのか、まぁ、お前達二人はないとは思うが、織姫さんもその遅刻癖は何とかならないんですか?」


 その名前を聞いた瞬間に自分は来た時には空いていた窓際の机に目を向けていた。

 そこには、開けた窓から吹き込む風に綺麗な桜色の長い髪を揺らす幼馴染の姿があった。

 彼女は窓の外を見ていたが、佐藤に指摘され、一瞬佐藤の方に顔を向けたがそれだけで、また窓の外に目を向けた。

 これはいつも通りの反応なので、佐藤も諦めた様に授業に戻ろうとしたが、また余計な事を言う奴がいた。

 まぁ、余計な事を言うのはあいつしかいないのだが。


「まぁこれも仕方がない事なんじゃないんですか? だって彼女は僕たち、いや、人類を守る為の生贄なんですから、このぐらいの非行は許されるってもんじゃないですか」


 そんな事を言われた本人はまったく動じていない様子だったが。


「デメェ‼︎ もゔいぢどいっでみやがれ‼︎」


 自分が我慢出来なかった。

 気がつけば脚は霧崎の方に向かっていた。

 誰も自分を止める奴なんていないと思っていたが。


「がっ!」


 一瞬で俺の喉元に回された太く力強い腕に歩みを止められ、歩みを止めた張本人は。


「はいどうどうどう、落ち着けよ馬鹿、誰もテメェの切れた姿なんて見たくねんだよ」


 それはさっきまで伸びてたはずの鋼鬼だった。


 自分はビシビシと鋼鬼の腕を叩きながら。


「はなぜよ、ごうぎィィ」


 完璧なヘッドロックを決められた状態で何とかでた言葉だったが。


「あっ? 嫌に決まってんだろうが、今離したら彼奴に殴りかかるんだろ、そんな事されたら俺にまで迷惑がかかるんだよ」


 そう言う鋼鬼だが、どうやら自分と鋼鬼の間で大きな行違いがあるらしい、自分は純粋に息ができないでかなりヤバイ状況なだけなのだが。

 でも確かに自分以外の人には鋼鬼が言った様に見えているのかも知れないと思いながら、すでに声は出なくなっているので、腕を叩く手に力を込めたが、それも段々と力が入らなくなっていき、意識も遠くなって行くそんななかで。


「それにさっきのお返しもしてないしな」


 それがきっと先程の殺人未遂の事を言っていると思い必死に抵抗しようとしたが、時すでに遅し、抵抗する力などなかく、意識はどんどん遠くなって行く、そして思い出す幼い時の記憶、これがきっと走馬灯なんだと思いながら、気がつけば目の前には見慣れぬ川と反対岸には死んだ家族がこちらを手招きしていた。

 あぁ死んだのか、そんな事思いながら、ゆっくりと反対岸に脚を進ませながら。


「まさか死因が友人のヘッドロックなんて笑えないよなぁ〜はは………いや本当に笑えないんだけど⁉︎ いや早いよ俺の物語は始まったばっかりだよ⁉︎ この短命なご時世だけど、流石に十七歳は早すぎるよ! まだ童貞だって捨ててないだよ! クソが‼︎ 絶対鋼鬼だけは許さね! 末代まで呪ってやるからな‼︎」


 そんな独り言を叫んでいると。


「まだ死ぬにははやいぞ」


 とどこからともなく鋼鬼の声が聞こえた。


「いや殺したのお前だから」

 

 となんとなくツッコミを返すと。


「百五十ジュールチャージ‼︎」


 と謎の言葉が聞こえ。


「帰ってこい龍也‼︎」


 その言葉を最後に景色が暗転し。


「お………おきろ………た…や…」


 そんな声が聞こえゆっくりと目を開けると見慣れた顔があり。


「俺が誰か分かるか?」


 と訪ねてきたので。


「あぁ分かるよ、俺を殺そうとしたクソったれ鋼鬼だろ」


 そう返すと。


「そこまで分かるなら問題はないな、それでちょっとは落ち着いたか?」


 ゆっくりと体を起こしながら。


「おがげざまで落ぢ着いだよ、末代まで鋼鬼呪ってやると決心するぐらいにばね」


 嫌味を兼ねての返しだったが。


「そんだけ恨み言が言えんなら大丈夫だな、そんじゃ昼休みにもなったし飯食いに行くぞ」


「ぢょっとは悪いと思えよ、でっ今日の昼飯ってなんだっけ」


 とそんな事を言いながら、胸などに貼られているパッドを外し立ち上がると。


「変に味付けされたレーションに決まってんだろ」


「ならぞれを半分で許じてやるよ」


「はいはい分かったよ」


 そんな会話をしながら教室を出ようとしていたが。


「嫌々、なに何事もなかったかの様に出て行こうとしてんだお前ら? まだ授業中だし、それにお前はそれで良いのか? 死にかけたんだぞ?」


 先程まで自分が倒れていた所に未だ片膝をついたままの佐藤がおり、時計を確認したがまだ三十分も時間があった。


「まぁ結果的には死んで無いんで別に、あと鋼鬼席に戻ろうか」


 そう相方に告げると、残念そうに。


「そうだな」


 そして二人が席に戻ると、佐藤は心底呆れた様にため息をつきながら、AEDを片付け、教卓に戻ると。


「なんかもう授業をする気力が無いので、今日はここまでにする、では午後は確実指定の場所にて実習に勤しむように、以上解散」


 それを言うと佐藤は教室から出て行き、ほかのクラスメイト達も各班に分かれて想い想いの行動を開始し始めていた。

 かと言う自分も、とある机の前まで脚を伸ばし。


「あっ、あの桜このあど鋼鬼と食堂に行くんだけど一緒にどうかな?」


 と幼馴染に声をかけていた。

 そして返ってきた返事は。


「落ちこぼれの分際で話しかけないでもらえるかしら」


 そう言い残し、桜は席を立ち上がり出口に向かって歩き出したが。


「おいおいそりゃねえだろ織姫、俺達同じ班の仲間じゃねぇか」


 鋼鬼の発言に桜は嫌そうな顔をしながら。


「古城だったかしら、悪いけど私は貴方達落ちこぼれを同じ仲間だと思ったことなんて無いは」


 それを聞いてもなお、何かを言おうとする鋼鬼に。


「もういいよ鋼鬼、桜もごう言ってるじ二人で行ごうか」


 そう伝えるとまだ納得はしてない様だが引き下がってくれた、相方に感謝しつつ。


「ごめんね桜、余計なごとで時間使わぜぢゃって」


「えぇそうね、それが分かる程度の知能はあるのね、ならそろそろ私のことを気安く桜と呼ぶのはやめてもらえないかしら」


「………ぞうだね、ごめんざく………織姫ざん」


 それを最後に彼女は再び自分に背を向け出口の方に脚を進ませながら、自分にだけ聞こえるような小さな声で。


「嘘つきのくせに」


 その言葉が胸を刺し鈍い痛みがはしる、手で押さえても鈍い痛みは消えない。

 その間にも桜は出口に向かって歩き続ける、何か言おうとしても言葉が出ない、そんな情けない自分を悔やんでいると。


「流石はアマテラスの搭乗者なだけあって言うことが違うねぇ〜、まぁ精々あと数回の命を大切にするんだね、ははは」


 また霧崎がつっかかっていったが今回は少し違った。


「えぇありがとうご忠告痛み入るは、まぁ貴方達がビショップ程度の敵に遅れを取らなければまだ生きれたのだけど」


 嫌味には嫌味をと言わんばかりの返しに霧崎は舌打ちをつき。


「それなら朗報だ、明後日には僕の僕だけの神機〈陽炎〉が完成する予定なんでね、君の願いも叶えてあげられそうだよ」


「そう、なら精々頑張ることね」


 それだけ言うと桜は教室から出て行き、残された霧崎は同じ班のアキラと凛を呼ぶと不機嫌そうに教室を出て行き、それに続けとほかのクラスメイト達も教室を後にした。

 残されたのは自分と鋼鬼だけだった。


「んじゃ俺達も行きますか?」


 気を使ってくれたのか、鋼鬼から話しかけてくれた。

 自分もそれに乗っかるように。


「ぞうだね、行ごうか」


 そう返し自分も教室から出ようとした瞬間。


 バッシィィィ‼︎


 と言う音と共に背中に激痛が走り、横に立つ相方に訴えかけるような視線を送ると。


「いつまでしょぼくれてんだ、そろそろ元気出せよ、お前がそんな調子だと俺まで調子が狂っちまうんだよ」


 これが鋼鬼なりの励まし方だ、不器用なやり方だけどいつもこれには励まされてきた、だから今回も。


「ありがとよ」


 そう言いながらお返しと言わんばかりに背中を叩き返すと。


「おうよ、じゃ行くか」


 そしてお互いに食堂に向けて一歩を踏み出そうとしたところで。


「とその前にそろそろ鼻の詰め物取ったらどうだ?」


 そんな鋼鬼の発言で自分が未だに詰め物をしていたことを思い出し、鼻から詰め物を抜き取り。


「こんな見てくれじゃあんな事を言われても当然だね」


「だな」


 そんな軽い冗談を言い、互いに笑い合いながら食堂に脚を向けた。



一年ぶりになりますがこれからはこちらも投稿していくつもりです。

こちらと、もう一つの作品である「村人勇者の英雄譚」もぜひ読んでみてください。

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