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戦場に舞う二つの円舞曲  作者: ワカメ
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第2話 息の合う二人

「テメェのせいで、トイレ掃除までやらされる羽目になっちまったじゃねぇか!」

「元はと言えば、鋼鬼がいきなり殴って来たのが原因じゃないか⁉︎ そんな事もわからないなんて、もお脳の全てが筋肉になっちゃったんじゃないの⁉︎ この脳筋バカ‼︎」

「はっ、俺が脳筋バカなら、テメェはひょろひょろバカってことか⁉︎」

「何だよひょろひょろバカって⁉︎ ついに言語能力まで退化しちゃったの? この手遅れバカが」

「テメェ、もう許さね‼︎ ぶっ飛ばしてやる」

「上等だかかって来いよ‼︎」

「お前らは喧嘩しないと手が動かせないのか⁉︎」


 俺たちの喧嘩は、雪乃さんの拳骨一発で終了を告げた。


「雪乃さん邪魔しないで下さい! こいつだけは一度絞めておかないとならないんです」


 鋼鬼が批判の声をあげたが、雪乃さんの笑顔と、限界まで引きしぼられた拳を確認し、大人しく引き下がった。


「全く、怒りたいのはコッチの方だよまったく、お前達のトイレ掃除が終わるまで食事が出来ないんだからな」

「俺たちの監視を辞めて食堂に行けばいいじゃないですか?」


 俺は当然の事を呟いた。

 それに対しての雪乃さんの反応は、溜息一つつき。


「お前らは監視がなかったら何をしでかすか分からないんだよ、分かったらサッサッと済ませてくれ」


 雪乃さんまで迷惑をかける訳には行かない。

 この時にだけは、鋼鬼と同じ事を思っていたと思う。


「サッサッと終わらそうか鋼鬼」

「だな、サッサッと終わらせるぞ龍也」


 こうして、真面目にトイレ掃除を行い、三十分足らずで、終わる事が出来た。

 そして疲労で通路に座り込んでいた俺たちに対して、雪乃さんは優しい声で。


「やれば出来るじゃないか、ほらこれはご褒美だよ」


 と言い、俺たちに缶ジュースを放ってくれた。

 それを受け取ると、鋼鬼がはしゃぎ出した。


「おお‼︎ こんな高価な物貰っていんですか⁉︎」


 鋼鬼がはしゃぐのも無理はない。

 かつては、どこでも手に入る、缶ジュースだったが、あの人類を壊滅にまで追い込んだ、未曾有の災害によって、今では、缶ジュース一本でも、数千円もする高価な物になってしまっていた。

 正直、本当に貰って良いものかと思ってしまう。


「これ本当に貰っていんですか?」


 ついつい気になって聞いてしまった。

 その問いに対しての解答は、雪乃さんからではなく、隣で高価な缶ジュースをがぶ飲みしてる鋼鬼からだった。


「こんな高価なもん滅多にありつけねぇんだから、雪乃さんのご厚意に甘えとけ」

「お前はどうしてそんなに何食わぬ顔が出来んだよ、それにさっき、整備士長の事を雪乃さんと呼んでなかったか? 殺されるぞ早く謝っとけ」


 それを見ていた雪乃さんは可笑しそうに笑って、一息ついた所で。


「もお勤務時間じゃないから、雪乃で構わないよ、それに、そこの無神経なバカの言う通り、他人のご厚意には甘えれば良いんだよ、それに私は、金を持ってても使う機会が無いから、こんな時に使うしか無いんだよ、だから遠慮する必要なんてないさ」


 そう言われると、断る理由がなくなってしまい、ありがたく頂く事にし、缶ジュースを口にした。

 久々の甘味に、ジュースを飲む手が止まらない。

 その姿を雪乃さんは微笑ましそうに見つめていた。


「どうかしましたか? そんな嬉しそうな顔をして?」


 俺は気になり訪ねた。

 その問いを聞くと、雪乃さんはさらに嬉しそうな顔を作り。


「なに、あれだよ、お前達みたいなバカで手のつかないガキでも、可愛い所があると思っただけさ」


 可愛いと言われると照れてしまい、うまく返答出来なかったが、代わりに相方の光輝が返答してくれた。


「確かに雪乃さんから見れば、俺たちなんてガキかもしれませんけグハッ‼︎」


 話の途中で鋼鬼は吹っ飛んだ。

 鋼鬼が元いた位置には、雪乃さんの右拳があった。

 きっと目にも止まらない、右ストレートを放ったと理解して、吹っ飛んだ相方の隣にまで歩み寄り、安否確認を済ませ、雪乃さんの方に向きなおると。


「私はまだ二十四歳だよ、これ以上舐めたことを抜かすと殺すよ」


 とてもドスの効いた声で、こっちまで震えてきてしまう。


「たく、私はもう行くよ」


 それを言うと一人足早にこの場所から去っていったが、途中で足を止め、「龍也、そこに伸びてるバカを部屋までちゃんと運ぶんだよ」と言うと今度こそ、この場を後にした。

 俺は去って行く雪乃さんに聞こえるように、感謝の言葉を口にし、雪乃さんが、軽く右手を上げたのを確認してから、鋼鬼を肩に担ぎ部屋を目指し歩き出した。

 そしてしばらく歩いたところで。


「なぁ、やっぱり雪乃さんって良い女だよな」


 意識を取り戻して、最初の言葉が感謝の言葉じゃない事にイラッとした。


「意識が戻ったんなら、自分の足で歩けよ」


 肩を離そうとしたが、鋼鬼に力強く捕まれ、引き離す事が出来なかった。


「まだ、クラクラするんだ、済まんが部屋まで頼むよ」


 俺は渋々返事を返し、もう一度担ぎ直してから、話題を戻す事にした。


「確かに雪乃さんは俺たちみたいな出来損ないにも優しく、見捨てず接してくれる、良い人だと思うよ」

「だよなぁ〜、俺たちとまともに接してくれるのなんて雪乃さんぐらいだよなぁ〜」


 そこまで言い、しばらくの間、沈黙が生まれたが、気にする事なく歩いて行き、しばらく歩いた所で。


「俺やっぱ、雪乃さんの事が好きだは」


 鋼鬼がいきなりカミングアウトしてきたが、それは既に知っている事だった。


「知ってるよ、でも雪乃さんには彼がいるから、今も、そしてこれからもずっと雪乃さんは彼を想い続けるよ?」

「分かってるよ、だから今だって告白もできず、悶々としてんだろうが」


 光輝にしては弱腰だが、それも仕方ない。

 雪乃さんの想い人には、どう足掻いても敵わないと分かっているのだから。


「けどなぁ、いつか必ず雪乃さんを振り向かせてやんよ」

「そっか」


 俺は短く返答した。


「そうだよ、お前も頑張れよ」

「なにがだよ」


 ここから先に二人の会話はなく、静かに部屋までの道を歩いて行った。

明日も投稿できると思います。

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