シスコンと女子校生
作者はあまり格ゲーをしません。なので格ゲー描写は想像です。
「お姉ちゃん、ゲームしよ」
「うん。いいよ」
私の妹はゲームが好きだ。
中学生にもかかわらず部活に入らず、家に帰宅すればいつもこのセリフである。
私もそれに付き添うために部活には入っていない。
休みの日も、寝る前も、テスト前も、いつもゲームをしている。
にもかかわらず、テストの点数はいい方という。
ちなみに、私は妹が家で勉強しているところは見たことがない。
年は私の方が3つ上なのに、私よりもスペックが高い。
声を大にしては言えないが、私がテスト前の時も付き添ってるので、勉強してる時間はない。だから、いつも赤点ギリギリである。
そして、
『K.O.パーフェクト』
「もう、お姉ちゃん。手加減しなくていいのに」
「いやいや、妹には接待プレイをしなきゃいけないのがお姉ちゃんという生き物だから………」
私にも接待プレイをしていた時期はあった。
妹が小学生の頃は本当に接待プレイをしていた。
ギリギリで私が負けるように調整していたのだ。本当に。
けれど、中学生になってからは本気で戦ってギリギリで負けるようになり、一週間後くらいで体力の半分までしか削れなくなり、一ヶ月後くらいで数発くらいしか攻撃が当たらなくなり、そして今では一発もダメージを与えられなくなった。
もしも与えられてもガード越しの削りダメージくらいだ。
『K.O.パーフェクト』
「お姉ちゃん、パーフェクトじゃつまらないよ。本気だしてよ」
「ハハハ」
……………。
どうしよう。泣きたい。
妹が泣くよりもましだけど、辛い。
しかも私が接待プレイだと言う嘘も信じてくれてるし、心が痛い。
「ごめんね。私ちょっと調子悪いみたいだから今日はやめるね」
「えっ!?お姉ちゃん調子悪いの?じゃあ無理しちゃダメだよ」
……………。
…もうやだ。辛い。
嘘なのに信じて、それに心配もかけて、どうしようもない。
お姉ちゃん失格だ。
「辛いなら寝てた方がいいよ。お母さんには私が言っておくから」
……………。
……寝よう。
あれから寝て起きたら6時だった。
もちろん朝である。
「とりあえず、お風呂入ろ」
お風呂から上がり、お母さんと昨日のことを話した。
さすが、お母さん。私の嘘だって分かってた。
でも、あれから夕飯も食べずに寝ていたから少し心配だったみたいだ。
親にも心配かけてしまった……………。
早くご飯食べて、学校行こ。
今日は学校に早くついてしまった。
まあ、家にいると心が傷むので仕方ないが。
けれど、どうしよう。
妹につまらないと言われてしまった。
このまま妹に、つまらないから嫌いとでも言われたら、一生立ち上がれない。
どうしよう。
これは大問題だ。
どうすれば解決するだろう。
まずは、つまらないと言われた原因を解消しなければならない。
なら私が強くなれば解消できる。
だが、私が強くなれば一緒にやる妹も強くなってしまう。
どうすれば妹に楽しんでもらえるだろうか。
………そういえば、うちのクラスにゲームが強いと噂されている人がいたな。
その人に頼めば解決できるのではないか。
「という訳で光ちゃんお願い」
「別にいいけど、それならあなたを鍛えればいいと思うのだけど、なぜ私が雪穂の妹の相手をするの?」
「時間がないからだよ」
「そんな話だったっけ?」
「そんな話だったよ」
急がないといつ嫌われてしまうか分からない、それに鍛えるために妹と遊べなかったら意味がない。
「はいはい。シスコンシスコン」
「シスコンじゃないよ」
「どこが?」
「お姉ちゃんとして当然のことしてるだけだよ」
妹に楽しんでもらう、それだけでシスコンな訳がない。
「妹のために全ての時間を費やしてるのによく言えるわね」
「それは、お姉ちゃんならみんなしてるよ。妹がいないから分からないんじゃないの?」
「そう?なら『光ちゃんとは楽しいから好き。お姉ちゃんとゲームしてもつまらないから嫌い』って言われても平気なの?」
「妹が幸せならそれでもいいわ。けど妹を泣かせたり幸せにできなかったら許さないから」
「あんたはどこの親バカだよ」
「親じゃなくてお姉ちゃんだよ」
「やっぱりシスコンじゃん」
「もうそれでいいよ」
という訳で友人の光を連れて来た。
昔からゲームが上手いから大丈夫だろ。
それに、私が小学生の時によく連れて来たこともあるし、妹も覚えているかもしれない。
「ちゃんと接待プレイで負けるのよ。ギリギリで負けるのよ。決して勝っちゃダメだからね」
「分かった分かった」
「もし負けず嫌いで勝って妹を泣かしたらあんたを泣かすからね」
「せっかく善意で来てるのに、帰ってもいいんだよ?」
「それだけ本気なの。あとあんた優しいからどうせ帰らないでしょ」
「帰らないけど、これだからシスコンは」
こんな感じに長々と話していると
「ただいま、お姉ちゃん。ゲームしよ………ってあれ?お客さん?」
「やあやあ冬美ちゃん、久しぶりー覚えてる?」
「ああ、もしかして光ちゃん?久しぶりー元気してた?」
「元気元気。冬美ちゃんがゲーム強いって聞いたから来ちゃった」
「てことはもしかして私と遊びに来てくれたんですか?嬉しいです。さっそくしましょうか」
あの、お姉ちゃん、置いてきぼり。
私、空気。
………。
『K.O.ドロー』
「わあー。光ちゃんとやると楽しいです。もっとやりましょう」
「ゴメンねー。私ちょっとトイレ行きたいから待っててくれる?あと久しぶりでトイレの場所忘れちゃったから雪穂付いて来て」
「えっすぐそこだから分かると思うけど」
「いいから来て」
なぜか強引に連れていかれた。
接待プレイも上手いし。
妹から楽しいって言われてたし。
私の体力も一緒にゼロになった気分だよ。
「ねえ、冬美ちゃんなんであんなに上手いの?」
「でも、あれを接待プレイできる光の方が上手いじゃない。しかもドローだし」
「はあ?ちゃんと見てたの?私、本気だったんだけど」
「えっ、そうなの?てっきり狙ったのかと」
「ドローなんて狙えないわよ。それに最初から勝とうとしたのにあの結果だったのよ?」
「それは、妹が強かったからじゃないの?」
「あのゲーム、大会があるの知ってる」
「知らない」
「あなたは知らないと思うけど私、一応あのゲームのチャンピオンなのよ?」
「大会で出てた人の中ででしょ?」
「私、その大会で体力が半分も切らなかったほどの腕なのよ?冬美ちゃん何者なの?」
「超絶可愛い天使な妹」
「黙れシスコン。こっちは真面目な話してるんだよ」
「私だって真面目よ」
「あんたは知ってるのに知らないふりしてやってるから腹立つのよ」
「急に何の話?」
「あんたの妹取るわよ?」
「何でそんな話に!?」
どうしてそんな話になった?
「ちょっとした八つ当たりだから気にしないで。それよりもどうしよう。次戦ったら確実に私が負ける」
「何でそんなこと分かるの?」
光がゲームに関して弱気な発言をするなんて珍しい。
「見てて………分かる訳ないか。最初は私が優勢だったのよ。でも、すぐに対応されてって、押しきったと思って気がついたら私の体力もなくなったのよ」
「別に妹を楽しませるだけだから負けたっていいじゃない」
「嫌よ。ゲーマーとしてのプライドが傷つくわ。それに、恋敵には負けたくないものよ」
「恋敵って………えっ?どゆこと?」
えっと相手は妹で。
それの恋敵だから。
妹が好きな人?
であってるっけ。
「えっ!?妹の好きな人知ってるの?」
「何でそうなるのよ。あんたが好きだって言ってるの」
「妹が?」
「私が」
「……………」
「……………」
……………。
「えっ!?」
「何で驚くのよ」
「いや、驚くでしょ」
「知ってることなんだから驚かないでしょ」
「いや、知らなかったよ」
「……………」
「……………」
「えっ!?知らなかったの?」
「知らなかったよ。どうして知ってると思ったの?」
「だって、嫌なこと言われても帰らないって知ってたし…」
「あれは普通に優しいからでしょ?」
「……………」
「……………」
「えっと、一応返事は?」
「それ聞きたいの?」
「まあ、本気だし」
「ごめん。私は妹が好きだから」
「ハハ、だよねー知ってた」
「……………」
「……………」
空気重っ。
どうしよう気まずい。
とりあえず部屋戻ろっか。
「あんま長くいると、妹が心配するだろうし、戻ろっか」
「うん」
「お姉ちゃん達遅い。私、暇だったんだよ」
「ごめん。冬美、話したいことがあるんだけどいいかな?」
「別にいいけど、どうしたの?そんなに改まって」
「好きです。私と付き合ってください」
頭が回らな過ぎていきなり告っちゃったけど。
今思うと最低なことしてるよな。
「ごめんなさい」
「「えっ!?」」
私と光が驚いた。
「私、その、ずっと前から光ちゃんのことが好きなので」
私の妹は、小学生の時から光のことが好きだったらしい。
でも、よく家に遊びに来てたからまだ大丈夫。まだ大丈夫。
と思っていたが、遊びに来なくなってからはめっきり来なくなってしまい、気持ちを伝えられなかった。
そして、当時ケータイを持っていなかったため連絡先が分からず、どうしようか悩んだ結果、ゲームが上手くなることだった。
ゲームが上手くなり、私が相手できない程になれば来てくれるのではないかと考えたらしい。
その読みは見事に的中し何とも言えない感じになった。
そして、私達の今はというと。
「お姉ちゃん、あ~ん」
「あ~ん」
「ねえ、雪穂。私とは口移ししよ?」
このように。
冬美が私とイチャつくことにより、私は幸せになり。
光は冬美に嫉妬し、冬美が幸せになり。
光は私とイチャつこうとして、私が受け入れ、光が幸せになり。
冬美は私に嫉妬し、私が幸せになり。
バランスがとれて、平和になった。
ハッピーエンド(?)だった。
読んでいただきありがとうございました。