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掌編小説集4 (151話~200話)

冷静

作者: 蹴沢缶九郎

銀行に現れた強盗が、拳銃をちらつかせて怒鳴った。


「お前ら、一歩も動くな!! 動いた奴はこの拳銃で撃つ!! これは脅しじゃない!! 」


そして上空に一発、拳銃を威嚇発砲した。銀行内の空気が一気に凍りつく。強盗は女性行員に銃口を向け、自身が用意したバッグに金を詰めるよう急かしている。


その時、一人の勇敢な若者が強盗に飛びかかった。だが、強盗はそれよりも早く引き金を引き、撃たれた若者はその場に倒れた。そんな光景を目の当たりにした数人の客達が悲鳴をあげて出口に走るが、強盗は逃げる客達の背中にも容赦なく弾丸を撃ち込んだ。自分達の置かれた立場をようやく理解した行員や客は、やっと静かになる。



初めからそうしていれば良く、何事も冷静さを失ってはダメなのだ。悲鳴を上げる、逃げる、ましてや取り押さえようなどとは言語道断。そんな事をしては相手を刺激するだけだ。先の若者も客達も、冷静さを失わなければ撃たれずにすんだかもしれない…。

それに比べて俺は冷静だった。例えば強盗が手にしている回転式拳銃。あのタイプの拳銃は装弾数が五発、もしくは六発だ。初めの威嚇発砲で1発、若者に向けて一発、逃げる客達にそれぞれ四発、つまりもう弾が入っていない事がわかる。冷静さを保てば、それぐらいの観察は容易である。


撃たれる心配のなくなった俺は、悠々と出口に向かって歩き出した。そんな俺に強盗が怒鳴った。


「おい!! お前も撃たれたいのか!? 動くな!!」


おもわずこぼれる笑みが止められない。俺は知っているのだ。もう弾がない事を…。撃てるものなら撃てばいい。



構わず歩き続ける男に、強盗は懐から取り出した新たな拳銃の引き金を引いた…。

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