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宇宙で城見屋くん  作者: らい麦
3/3

出会い、始まり。謎の城見屋くん

 出会いは1ヶ月前、だったか。


 まだソメイヨシノが咲き乱れていた春のこと。


 春特有のポカポカ陽気に当てられてかなーり眠かったのを覚えている。机にうつ伏せになってウトウト、だ。


 眠い。でも寝るな。あぁでも眠い。と、心の中で葛藤しながら。


 あぁこれはもう。ちっさいオッサンがステッキ振り回して催眠術でも使ってるんだろうな……と、ぶっ飛んだ妄想をし始めた時。


 ガラリ。


 と、教室の戸が開かれた。


 先生か?


 俺は耳だけをかたむけ相変わらず机にふせっていた。


「はいはい皆静かにね~。自分の席にちゃんとつきなさい。今日は転校生が来てるわよ~」


 ザワリザワリと教室がざわめく。


 転校生、ねぇ。


「はい。じゃあ城見屋くん入ってきて」


 教室が一斉に静まりかえった。


 ゴクリ……とクラス全員が息を潜めているようだが、ただの高校生。


 一体何が珍しいのやら。


 コツコツ……。


 コツコツ。


 コツ。


 ピタリ。


 お、止まった。


「城見屋白雪です。よろしく」


 透き通った爽やかな声で。


 たったそれだけ。


 それだけ喋っただけなのに。


 きぁぁぁぁっと女子達が黄色い声をあげ、俺はビクッと身体が反応した。


 今まで静かだったのに急に大声て!


 ビックリするだろ!


 と、心の中だけでツッコミを入れた。


 女子達はアイドルを見たかのような反応をして、囁きあっているのが聴こえた。


「ちょうカッコイイんだけど」

「彼女いるのかな」

「むさ苦しいこのクラスに花がきたわ~ん」

「静かになさ~い」


 カツカツとチョーク音。


 先生はパンパンと手を叩き注意をしているようだ。


 いつもより騒がしいと思ったらそういうことか……。


 俺は寝ぼけ眼で顔をあげ教卓を見たんだ。



 ー城見屋白雪ー


 しろみや しらゆき


 黒板にそう書かれた名前。


 教卓に立つのは見慣れない男子……。


 はっは~ん。


 確かに女子が口を揃えて騒ぎたくなる理由がわかる。



 だってよ。


 だってな


 ……転校生はさ。


 男の俺から見ても格好よすぎ。


 つか転校生で格好いいとか嫉妬するよな。

 顔は日本人というかハーフのような顔立ちだし、スラリと背が高いし。

 男らしい男子というより中性的で優男。

 二次元か芸能界から飛び出してきましたか? ってくらいかっこよすぎる。


 だがしかーし!


 見た目で騙されちゃだめだ。


 もしかしたら腹黒いかもしれないだろう?

 服装だって軽そう。

 だしー。


 シャツとかズボンから出してるしクリーム色のセーター着用してるしさ。

 だらし無いったらありゃしない。

 服装の乱れは心の乱れっていうだろ。



「えっと……じゃあ席は山下君の隣でいいかしら。山下君は左から一番目の列、4番目の子よ」


 先生が山下君と、名前を呼ぶと山下が手を挙げここだよと教えた。


 が、


 城見屋は首を振りそれを拒否した。


 ざわり。


 再び教室がざわついた。


 ちぇっ。行動ひとつにいちいちバラを飛ばす野郎だ。少女漫画かってんだ。いけ好かないなー。


「あの席は寒いから窓側にしてもらえるかな。そうだね……あの一番奥の窓側、スペース空いてるしあそこでいいよ」


 ードキリ。


 城見屋は俺を見ていないか?


「え、けど城見屋君」


 突然の拒否にたじろく先生だったがそれを救ったのはクラスのお調子者だ。


「やめなよ城見屋ぁ。転校生だから知らないと思うけどあいつと関わると不幸になるぞ」


 クラスの大半は振り返って俺を白い目で見た。


「そうよ城見屋くん」


「噂じゃあ彼をイジメた男子が交通事故にあって病院送りにされたって聞いたわ」


「彼と喋ると良くない災いがふるって」


「私達もあいつとクラスが同じってだけで何度も不幸になったわ」


「そうね」


「それでもなんで教室にいるのかなぁ~」


 ここぞとばかりクラスの連中は俺へ不満をぶちまけた。


……色んな噂が飛びかっているんだな。


 まぁ大半は本当のことだけれど。


「ふ~ん……そう。じゃあ先生も不幸に?」


 城見屋は興味無さそうに軽く流し先生をちらりと見た。


 先生はモゴモゴと口を濁らせる。


「あのそうね……」


「城見屋ぁ~やめとけって。あいつと絡むとろくなことになんねーよ」


「君には聞いてないよ。ちょっと静かにして貰える?」


 シーン……。


 一瞬の沈黙。


 場が凍る、とはこのことか。



「あー……そうね。私はまだ、ないかしら」


「そう。じゃ、僕が彼の隣に席を構えても大丈夫だね。あっは。別に怯えなくても死にはしないよ」


 ザワザワ。え、やだ。耳がザワザワする。


「なんか……素敵、城見屋くん」

「ひゃあ~あんなタイプ初めて」

「痛い目見てもしらね~ぞぉ」

「ねぇ私達で城見屋君を守りましょうよ!」


 オイコラ!


 株上がってるぞ転校生!


 カッコイイ奴は何をやっても許されるのか転校生?!


 つかこっち来るな!


 なんて心の叫びも虚しく城見屋は「山下。机運んで」などと思いやりもかけらもなく山下に命令し、山下は断ることもなく机を俺の隣に運び、机を並ばせたんだ。


「よろしく」


 ガタリと席に着いた城見屋はムカつくぐらい爽やかに微笑んだ。


 ま、当然俺は無視だけれどね。


「あっは。根が暗いねぇ~。根暗君だっけ。根暗い闇夜君」


 誰だよ。

 おま、それ誰だよ。


「悠遠譲だっての」


 ブツリ……と俺はうっかり言葉を返した。


 む。しまった……。


「はい悠遠譲ね。よろしく譲」


 うぐぐ……。


 なんか腹立つ。俺の怒りをよそに城見屋は優雅に笑っていた。



 これが。


 俺と城見屋との出会い。



 この出会いが俺の人生を狂わせる最初の1ページだった……。

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