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第1話(5)

「ところでディールさんは魔術師なんですよね」


話題を変えよう。そのうちウォルンと呼んでくれるはずだ……。


「ただの魔術師ではない。飛ぶ鳥を通す勢いの大魔術師だ」


それ逃がしちゃってるよ……。しかし下手に突っ込むのも危険な香りがする。俺の危険回避センサーがそう告げている。


「そうでした。寝耳に水魔法の大魔術師であるディールさんは、どんな魔法が使えるんですか?」


「ようやく僕の素晴らしさに海岸の波打ち際を見たか」


なんでもいいのかよ!


ってかもう何言ってるかわかんないぞ、ディール。


「どんな魔法が使えるか、なんていうのは愚問すぎてお茶を腹にぶちまけるようなものだ」


へー、そーなの?


「僕の炎は大地を溶かし、水は海を作り、風は宮殿すら地の果てまで吹っ飛ばし、土は何者もを通さない。召喚は凶悪な悪魔すら呼び出し、言語は植物まで意志疎通を可能にする。転移は行ったことのある場所ならどこへでも移動可能だ。驚きのあまり叫びながら転がってもいいのだぞ」


叫びながら転がるってどういう状況だよ!


でも、強いらしいことはわかった。魔法も色々使えるみたいだし……。


ん?


植物と意志疎通が可能……?


「ということは、もしかして魔獣と話せたりするんですか……?」


「話せる、というのとは少し違う。言語変換の魔法をかけて、意志疎通を可能にするだけだ」


どう違うのかわかりません。


「そこのブラウ、いや、ルーティコと話せますか?」


「だから話せるのとは違うと言っているだろう。まあいい。見ているがいい」


ディールが大仰に杖を高く掲げ、なにやら呪文のようなものを唱えると、ブラウは光に包まれた。すぐその光は消える。


『なにしやがるこのうさんくさいの!!』


?!


ブラウがしゃべった?!


いや……。なんかちょっと違うな、ブラウが何を言っているのかわかるだけだ……。


「どうだ。ひれ伏したくなっただろう。崇め奉りたくなっただろう」


『なんなんだこいつ……』


ブラウさんブラウさん? ちょっと正直すぎますよ?


「ブ、ブラウ……?」


『ごしゅじんさまのおつれのかた、さきほどはありがとうございます。あのふしぎなまほうでけがもなかったし、びりびりしてうごけなくなったりしなかったです。いつもはごしゅじんさまにくすりをかけてなおしてもらっていたので、ごしゅじんさまもたいへんたすかったとおもいます。ぼくからもおれいをいいます』


なにこの子、ちょうかわいい!


「くそなまいきなルーティコだな」


「そんなことないですよ。すごくいい子じゃないですか」


意見が真っ二つに割れた。


「ピュピュイッ?」


ノノルがなあに? なあに? って感じにこちらを見上げてくる。


ハッ……!


そうか!


ノノルとも……。ごくり。


「じ、じゃあ、このファフゥンも同じ魔法かけてくれますか?」


「昼飯前だよ」


どういう状態?!


ディールはチラッとノノルを見ただけだった。


ノノルを光が包み、そして消える。


あれ? さっきのアレは?


『ごちゅじたまー、ごはんたべたーい』


ノノル……。おまえってやつは……。


かわいいから許す!!


「ノノルは何を食べるんだ? 俺は今食べ物持ってないんだ、悪いな」


俺はそんなことさえ知らない。ノノルのご主人様失格だろうか。


『んーん。ごちゅじた、わうないないー。ののゆ、とてくゆ。とてくゆ、い?』


まずい……。魔獣に萌えそうだ。これは罠か……? 罠なのか?


「あ、ああ、い、いいぞ」


本日のどもり大会優勝者はウォルン、ぶっちぎりでいただきましたー!


『ん。いてくゆ!』


「気をつけて行くんだぞー」


木々の間に駆けて行くノノルに向かって声をかけた。


「ところでディールさん。ノノルに魔法かけたとき、呪文がいらなかったのはどうしてですか?」


先程気になったことを訊いてみる。


ディールは特に意に介した様子もなく、さらりと答えた。


「呪文? そんなものはいらないよ。ルーティコのときはそのほうがかっこいいかと思ってそれっぽくしてみただけだ。かっこよすぎて気絶しそうになっただろう?」


「そ、ソウデスネ……」


んなわけあるかい!


ディール自身に意志疎通の魔法をかけるべきだ、早急に。知らず俺は、拳を固く握っていた。

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