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第1話(3)

ミィウはまたもや魔獣語(と言っていいのかわからないが)で魔獣たちに話しかけると、スタスタと歩き始める。


「もう行くのか」


慌てて追いかける。


「どこか寄るところでもあるの?」


「ないけど。本当に俺、魔獣なんて倒せないぞ」


「ウォルンは回復に徹してくれればいいわよ。ブラウもモクルも強いから。ギーギルごときに遅れは取らないわ。麻痺毒を無効化できるなら、あんなの雑魚よ、雑魚」


「ギーギルって集団で襲っくるんだぞ」


「知ってるわよ」


「しかも最近数が増えてるんだぞ」


「なんで戦うわけでもないのにうじうじ言ってるのよ。最高の回復魔法術師が」


戦うわけじゃないからだよ!


ん? 最高、の、回復魔法術師?


「最高の回復魔法術師ってなんだ?」


「あんたそうじゃないの? ウォルンほどの回復魔法術師なんて見たことも聞いたこともないけど。だいたい、あんた殺られるわけでもないのにいちいちビビりすぎなのよ」


「恐いんだよ! 悪いか!」


「威張ることではないわね。ほら、さっさと行くわよ」


さっさと行くも何も、さっきからどんどん進んでるじゃないかあああああああああああああー!


************


「着いちゃったじゃないか……」


「来なかったら依頼こなせないでしょ、何言ってるのよ」


薬草集めしかしたことないんだ! 戦闘経験なんてないんだ! ギーギルの集団に囲まれても俺、ちびったりしないかな。


攻撃が一切効かないとわかっていても恐いものは恐い。寝てても、いいかな。


「あんた今、変なこと考えたでしょ?」


「へへへ変なことって?」


「逃げようとかそのあたり?」


「いや、寝ててもいいかなって。寝てたら恐くないだろ」


「あんたすごいんだかヘタレなんだかわかんないわね。眠ってて、攻撃されたらどうするの?」


「攻撃されても効かないから」


「あんた変だけどすごいのね」


言いながら頭を抱えている。そんな変なこと言ったかな……。


「それにしても、来ないわね」


「来なくていいのに」


「バカなこと言ってないで、囮にでも何にでもなりなさいよ」


なんてこと言いやがる。


「この辺りなんだっけ? 目撃情報が多いのは」


「そうよ。ギーギルが現れたら、私たちに魔法かけといてね。最高のやつ」


「それはいいけど……」


「けど、何よ? 寝たりしないでよね」


「それは……」


「腹くくりなさいよ」


「あ……う……わかった」


俺とミィウが話している間も、モクルとブラウは辺りを警戒している。


「グルルルル……」


モクルが唸った。


「来たみたいね」


ガサガサと街道の脇の木々の間から出てくる出てくる、大量のギーギル。


「ピュピュピュイッ」


ノノルが俺によじ登ってきた。うん、恐いよな。そう思いながらノノルを抱きかかえる。ちょっと重い。


まずノノルに常時回復魔法をかけて、っと。


ミィウ、ブラウ、モクルにもかける。


ずっとかけっぱなしか。


これけっこう疲れるかも。


神経を集中させる。


ミィウたちは俺のまわりを取り囲む。どう考えても標的は俺とかノノルになるよな、そうだよな……。


「ブォオオオオオオオー!」


ギャー! 恐ぇえ! 恐ぇえよ!


しかし目をつぶるわけにもいかず、ミィウたちに魔法をかけ続ける俺、健気。ミィウに聞かれたら、健気が泣いて逃げ出すわね、とでも言われそうだが。


ブラウはでかいのに早い。一撃一撃の攻撃力はさほどでもないが、ギーギルが反撃も避けることもできずに数多の攻撃をくらって次々と倒されていく。


モクルはギーギルと似たり寄ったりの素早さだが、一撃が重い。あのギーギルをほぼ一撃で倒していく。


そして、ミィウ。ブラウとかモクル、必要だったのか? ってぐらいの反則的強さ。


武器は鞭。ほとんど動かずにしなるその鞭でギーギルを倒していく。材質は何なんだろうな、小さい鎌みたいなトゲがいくつもついていて、ギーギルの肉を切り裂いていく。


なんかすごく楽しそうだ。悪い笑いが聞こえてくるのが、恐い。ギーギルの集団を見たときよりも強烈な恐怖だな、これ。


あっという間にギーギルの集団は血臭を漂わせる肉塊と化していた。


まさに、地獄絵図ってやつだな。


ミィウはもうギーギルが出てこないか確かめているようだ。


「もう終わり? あっけないわね」


いやいやいやいやいやいやいやいや、何言ってんの?! こんだけ大量のギーギルの死体に囲まれて、あっけない?


確かに倒すのは早かったけど。


「それにしても楽だったわー。麻痺毒の効果無効にできるのって、こんなに楽だと思わなかったわ」


ふーん。よくわからないけど、そうなのか。


「お役に立てて何よりです」


それはともかく。


「で、このあとどうするんだ? このまま放置ってわけにもいかないだろ」


「ウォルンは何か欲しい素材ある?」


「ギーギルの毛皮って高く売れるんだっけ?」


「売るのが目的ならいらないも同義ね」


「そんなことないだろ」


「そんなことあるわよ。依頼の報酬に、獲れた素材の価値も含まれるのよ」


魔獣倒したことなんてないからな! 知らなかったんだよ!


「買おうと思ったら売値より高くなっちゃうから、欲しい素材があれば先にギルドに申請しておきなさいよ」


「ギルドに?」


どういうことだ?


「私はこれからブラウに乗ってギルドに報告してくるから、見張りよろしくね」


無理です!


サーッ、と血の気がひく。


「モクルもいるから大丈夫よ」


それなら安心だな。


モクルとノノルと共に、ブラウに乗ったミィウが去って行くのを見送った。

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