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都市伝説は、本物だった。  作者: 日向神 命
第1章 テケテケノキョウフ
8/41

テケテケ

「もう誰も殺させない……!」

 うわごとのように叫びながら、2人の手を引いて全力で走る。 

 だが、テケテケの足音がどんどん近づいてくる。

 ――また俺は仲間が殺されるのを見ているだけなのか?

 そんな思考が脳裏を横切る。

「優くん速い……あっ!」

 真名美が転んでしまった。

「真名美!」

 紅葉先輩が手を差し伸べようと真名美に近づく。

 やばい、追いつかれる――――。

 そのとき、ケータイが鳴った。

「もしかして……」

 急いでポケットから取り出す。

 送信者は、耀人先輩。

『件名:テケテケを殺す呪文』

 よし! ロック解除できたんだ!

 すぐに本文を読み始める。

「カシマのカは……仮面のカ――」

「いやああぁっ!」

 真名美が叫ぶ。

「カシマのシは……死人のシ――」

 テケテケが真名美の目の前に――

「カシマのマは、悪魔のマ――ッ!!!」


「ギャアアああああアアアあああああァァああああああぁあああアアああァァぁァァああああぁぁあぁッッッ!!!!!」


 テケテケは夜空に響く断末魔の悲鳴を上げ、消滅した。

「はぁ……はぁ……」

 終わったんだ……。テケテケを倒したんだ……。

「終わった……」

 力が抜けたようにその場にへたりこむ紅葉先輩。

「優くん……怖かったよおおおぉぉぉっ!!!」

 涙をボロボロとこぼしながら、真名美が抱きついてくる。

 その勢いで地面に倒れ込む。

「ありがとう……助けてくれて……」

 俺は何も言わず、ただ真名美の頭を撫で続けた。


  ■  ■  ■  ■


 同時刻。明智涼太と石巻金地もテケテケに追われていた。

「エリス……どうして……」

 涼太が呟く。

 2人を追うテケテケは、金髪碧眼で日本妖怪とは思えない風貌。そして、その顔は2人のよく知る人物――――雷同エリスのものである。

 昨日テケテケに殺された彼女は、今度はテケテケになって彼らを襲っているのだ。

「エリス先輩! 俺たちが分かりませんか!?」

 金地が叫ぶ。

「先輩が殺そうとしているのは、同じ部活の仲間ですよ!?」

 どんなに叫んでも、彼の言葉は届かない。

 血塗れの顔を一切変えずに追ってくるテケテケ。

「速く! 少しでも時間を稼ぐんだ! 耀人がロックを解除するまで!」

 涼太は振り向かずに走る。

 そのとき、着信音が鳴った。ケータイには、唯山耀人と表示されている。

 ――ついに!

 振り返ると、金地が少し後ろにいた。そのすぐ後ろには、テケテケが――

「金地ッ!!!」

「――――ッ!!」

 声にならない声を出し、金地は臓器と血ををばら撒いた。

 そして涼太の目の前にテケテケが――。

「カシマのカは仮面のカカシマのシは死人のシカシマのマは悪魔のマ!!!」

 早口で本文を読み終える。


「ギャアアああああアアアあああああァァああああああぁあああアアああァァぁァァああああぁぁあぁッッッ!!!!!」

 

 そしてテケテケは消えた。

「エリス……金地……」

 涼太は涙を流しながら、目の前で死んだ2人の名を口にする。

 そして、何も無い虚空を見上げた。


 ――エリス……。僕は君のことが、好きだった……。


 この思いは、誰にも届かない。


  ■  ■  ■  ■


 零宮奧真と石田誠が走っていた。

「やばい――! 追いつかれる――ッ」

 奧真が叫ぶ。直後、その体は肉塊へと化した。

「このままじゃ、僕も殺されるな」

 仲間が殺され、自分も殺されそうだというのに、ありえないほど誠は冷静だった。

 頭も、運動神経もいい彼だが、最悪の欠点がある。誠は、全てがなるようになればいいと考える人間なのだ。

 ただ適当に生きて、死ぬときは何の抵抗もせずに死ぬ。自ら行動を起こさず、周りに流されたまま生きていく。

 それが石田誠の人生。

 少なくとも、彼自身はそう思っている。それにはある理由があるのだが――。

「興味がないと、恐怖もないんだね」

 誰に言うでもなく、そう呟いたとき、メールが届いた。

 耀人からで、件名は『テケテケを殺す呪文』。

 ――ふぅん。僕はここで生きるのか。

 そして、彼は静かにゆっくりと文面を読み上げる。

「カシマのカは仮面のカ。カシマのシは死人のシ。カシマのマは悪魔のマ」

 

「ギャアアああああアアアあああああァァああああああぁあああアアああァァぁァァああああぁぁあぁッッッ!!!!!」


 テケテケは悲鳴を上げて消滅した。

「……うるさいな」

 耳を塞ぎながら、誠は呟いた。 


 ■  ■  ■  ■


 生き残った6人を、電柱の上から見下ろす人物がいた。

「3体とも消されちゃったかあ……。やっぱ一筋縄じゃいかないよね――」

 妖艶な笑みを浮かべ、

「――篠崎優」

 多田峰妖香は呟いた。

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