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都市伝説は、本物だった。  作者: 日向神 命
第1章 テケテケノキョウフ
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シュウゴウ 

 メールを読んだ俺は、12時を過ぎた頃に家を出た。

 俺の家は、学校から歩いて30分ぐらいの距離にある。このまま行けば集合時間には十分間に合うだろう。

 そういえば昨日、慧のほかに誰か死んだのだろうか? 死んだとしたらたぶん、新藤彩瀬のテケテケに追われていた涼太先輩、エリス先輩、金地、耀人先輩のうち誰か――――いや、メールを送ってきた涼太先輩は生きてるか……。

 そんなことを考えているうちに真名美の家の前まで来ていた。真名美の家は、俺の家から学校に行くまでの道沿いにあり、俺の家から10分ぐらいの距離だ。

 真名美はもう学校に行ったんだろうか……。

 思考が真名美に変わったとき、上から聞き慣れた声が降ってきた。

「あ、優くん……。ちょっと待って、一緒に学校行こ……」

 2階の窓から身を乗り出した真名美の声だった。


  ■  ■  ■  ■


「おまえ、もう大丈夫なのか?」

「……うん」

 俺と真名美は、学校に着くまでこれだけしか言葉を交わさなかった。

 気まずい空気の中、トラックが爆発した跡の残る校門を通り、校舎内に入った。部室のドアの前まで来たとき、いつもと違うことに気付いた。

 いつもは、ここまで来ると部室の中からワイワイガヤガヤとでも表現できそうなほどの話し声が聞こえてくる。

 しかし、それは聞こえない。

 ――――やっぱり、誰かが死んだのか……。

 直感的にそう思った。

 真名美もそう思ったのか、少しうつむいていた。

 俺は深呼吸して……。

 ――――よし。

 ドアを開ける決心がついた。ゆっくりと部室のドアを開ける。

 前に俺と真名美が一緒に来たときはいろいろ言われた(主にひやかしを)。他の部室まで聞こえて俺たちが付き合ってるって噂まで立てられたくらいだ。いや、まあ俺は構わないんだが。

 しかし、今日はそれもなかった。

 部室の中は葬式みたいに重苦しい空気だ。部室にいるのは、涼太先輩、紅葉先輩、奧真先輩、金地、そしてソファに寝ている誠の5人だけだった。

「慧は……?」

 涼太先輩が震える声で訊いてくる。

「慧は……殺されました……」

 枯れたと思っていた涙が、ポロポロと床に落ちた。

 真名美はいつのまにか俺の左腕を抱きしめて、自分の顔を隠していた。制服の袖が濡れていくのがわかった。

「そうか……。昨日だけで2人も……僕達は仲間を失ったのか……ッ」

 涼太先輩が目元を拭った。

 え? 2人? ここにいるのは7人だから、3人死んだんじゃないのか?

「先輩」

「ん……? 何だ?」

「耀人先輩とエリス先輩は……?」

 どちらかは確実に死んでいるのでおそるおそる訊くと、涼太先輩は答えた。

「耀人は死んでないけど、来てないんだ」

 耀人先輩が死んでない……ってことは、死んだのはエリス先輩か……。

 じゃあ、耀人先輩は今何してるんだ?

「耀人先輩は何で来てないんですか?」

「さっきメールしたら、家のパソコンを使ってテケテケを倒す方法のサイトのロックを解除しようとしてるって返信がきた」

「そうですか」

 そのとき、ふと疑問に思った。

 そういえば、なんでロックなんてかけられてるんだ? そんなことして誰に得があるんだろうか?

 そして俺は1つの結論に至った。

 もしかして、裏に誰かがいるんじゃないのか……?


  ■  ■  ■  ■


『6時になりました。まだ校内にいる生徒は、速やかに下校して下さい。繰り返します。6時に………』

 昨日は校門を出たときにテケテケがいたが、今日はいなかった。

「いつ出るか分からないから、みんな気をつけて帰って」

 涼太先輩が言った。

 できるだけ人と一緒にいることにしたため、俺は家の方向が同じ真名美と紅葉先輩と帰ることになった。

 ちなみに、涼太先輩と金地、奥真先輩と誠が一緒だ。

「また明日、葬式で会いましょう」

 金地が去り際に手を振る。

 明日は、慧とエリス先輩の葬式が執り行われる。俺と真名美と紅葉先輩は家が近所だからというのもあって、慧の葬式に出席することになっている。他の5人はエリス先輩の葬式に行く予定だ。

 あと、これは俺の予想なのだが、金地は『明日生きて会おう』というような意味も含めて今のセリフを言ったんだろうと思う。

 そういえば、耀人先輩はまだロックを解除できないのか?

 耀人先輩は自分で「出来る」と言ったことはだいたいすぐ出来る人だ。出来ないことは最初から「出来ない」と言う。なので、必ずやってくれるはずなのだが、それにしては遅すぎる。100重ロックでもしてあったのだろうか。

「ねぇ、家まで走ろうよ。テケテケが出る前に」

 真名美が俺の肩を叩く。

「そうだな」

 俺は真名美の頭を撫でてやる。

「もう、子ども扱いしないでよ」

 ぷんぷんと怒る真名美。

「そのセリフは子どもが言うものだ」

「紅葉先輩まで……」

 あ、真名美が拗ねた。ぷいっ、と顔を逸らす。これはこいつの拗ねたときのクセだ。

「ははは――ッ。悪かったよ」

 そう言って真名美に手を伸ばすと、腕を力強く握り返してきた。

「ゆ……優くん……。あそこ……」

 真名美が指差した方を見ると、道路の向こうにあるゴミ捨て場がゴソゴソと動いていた。

 暗いし、車の陰に隠れていてよく見えないが、なんとなく予想はついた。

 街灯を反射する血塗れの目玉が、ぎょろりとこちらを見た。

「まさか……また……」

 紅葉先輩も分かったようだ。アレが何なのか。

 ソレはゆっくりとこっちに来る。徐々にカラダの輪郭がはっきりしていく。

 気付いた時には、2人の手を引いて走っていた。

 後ろからは、気色悪い足音が聞こえてきた。

 テケテケ、テケテケと。

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