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都市伝説は、本物だった。  作者: 日向神 命
第1章 テケテケノキョウフ
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アラワレタカイブツ

10人の部員たちですが、話の中で紹介できそうにないのでここで軽く紹介しておきます。


篠崎優しのざき ゆう

本作の主人公。お人好しなところがある。2-Bの生徒。


高瀬真名美たかせ まなみ

優の幼馴染。茶色のポニーテールが特徴。優しいが、少し鈍感。2-B。


葉風紅葉はかぜ もみじ

黒い長髪が特徴的。少しツンデレという性格を持っている。3-A。


石田誠いしだ まこと

頭が良く、運動神経抜群だが、面倒臭がりでいつも寝ている。1-C。


唯山耀人ゆいやま ようと

パソコンでの情報収集がとくい。だが、普段はエロサイトを見ている変態。3-B。


大谷慧おおたに けい

優の親友で幼馴染。


明智涼太あけち りょうた

都市伝説研究部部長。責任感がある。3-A。


零宮奧真れいみや おうま

明るく、人付き合いがいい。3-C。


雷同らいどうエリス

副部長。金髪碧眼のハーフ。3-B。


石巻金地いしまき きんじ

勉強も運動もそこそこできる、全ての高校生の平均みたいな人間。1-C。


「テケテケは……本当に……!?」

 8月3日、下校しようとしていた俺達の前に、奴は――――テケテケは現れた。

 道路を挟んだ向こう側に、上半身だけの、非科学的な妖怪がいる。足が震えているのがわかった。

 突然、紅葉もみじ先輩が震える指でテケテケをして言った。

「ね、ねぇ……あの後ろにも………」

 その声も手と同様、恐怖で震えていた。

 先輩が指差した方を見る。瞬間、その場にいた全員は戦慄した。『テケテケ』の後ろで何かがゴソゴソと動いて――2体目のテケテケが出現したからだ。

「2体……いたのか…………?」

 涼太りょうた先輩が後ずさりながら声を絞り出す。

 


 1体目は、顔立ちからして大人の女性だったとわかった。たぶんこの人が『カシマレイコ』だ。20代前半……ぐらいだろうか? その顔は血で赤黒く染まり、本当の年齢は分からない。右の眼球が無く、眼孔は空洞だ。しの体も血に染まり、そのせいで女性の裸(上半身だけ)ではあるが、色気など到底とうてい感じられない。ちぎれた腰部の断面からは、細長い臓器――――小腸だろうか?――――が10cmほどぶらさがっていた。だが、不思議なことに血は出ていなかった。

 2体目の顔が見えた。そのとき部員の1人、石巻いしまき金地きんじが呟いた。

彩瀬あやせ……ちゃん……!?」

 金地は依頼者である多田峰ただみね妖香あやかや、襲われた新藤しんどう彩瀬あやせと同じ1年C組。つまり、彩瀬の顔も知っている。だから、十中八九じゅっちゅうはっく間違いない。

 新藤彩瀬は『テケテケ』に殺され『テケテケ』になっていたのだ。

 だが、まだテケテケ化してあまり日が経ってないせいか顔にそこまで血はついてなく、制服もボロ布と化していたがかろうじて服の役割を果たしていた。

 2体とも、こちらを睨んだまま動く気配はない。

 とりあえず、この状況をどうやって回避しようか。考えろ……俺。

 現在、俺達と奴らの距離は20メートルほど。逃げても時速100kmの怪物にはすぐに追いつかれる。どうすれば逃げられるだろうか。

 そのとき、右から冷凍食品を運ぶトラックが走ってきた。よし、これはチャンスだ! トラックが通ると同時に3方向に散れば、奴らもトラックが邪魔で来れないはず。そしたら、少しだけ逃げ切れる可能性が上がる。

「みんな、俺が合図したら一斉に逃げろ」

 俺が小声で伝えると、俺の意図など分からないはずなのにみんな頷いてくれた。

 ――――ありがとう。

 声に出さずに心の中で礼を言う。

 あと少し。トラックが近づいてくる。3…2…1…。

「今だっ!」

 叫ぶと同時に、10人の部員たちは3方向へと散る。

 俺と慧は右、俺達2人の家に向かう道。真名美、紅葉先輩、石田いしだまこと零宮奧真れいみやおうま先輩の4人は校舎に向かって走り出し、涼太先輩、雷同らいどうエリス先輩、金地、耀人先輩の4人は左方向、商店街側へそれぞれ逃げた。

 走りながらちらりと後ろを見ると、『テケテケ』はあろうことかトラックの荷台を突き破って追ってきた。トラックは中の冷凍食品をぶちまけながら横転して校門にぶつかり、大きく炎上した。

「な……」

「おい優! 1体こっちに来た! どうするんだよ!?」

 あせりながら、俺の右を走る慧が訊いてくる。

「逃げるしかないだろ! とにかく走れ!」

 だが、いくら全速力で走ろうと、化物との距離は縮まっていくばかり。

「やばい!! もう、すぐそこ……ッ!!」

 慧が叫んだときにはもう、テケテケは俺たちの前にいた。

 一呼吸遅れて、俺の右側に熱くドロドロした液体が降り注ぐ。反射的に触れる。

 街灯にてらされて、俺の手にベチョリとついた赤い液体が光った。

 それが慧の血だと気付くのに、さほど時間はかからなかった。

 右側を見ると、腰からうえがない、人の下半身があった。血は延々と噴き出し続けている。

 すぐ後ろには上半身が落ちていた。血溜まりの中のそれは、もう動かぬ肉塊と化していた。

 恐怖に歪んだまま動かない慧の顔が、彼の死を物語っていた。

 吐き気がこみ上げてくる。口を手で覆うと、不思議と吐き気は治まった。

 前を見るともう、テケテケの姿は無かった。

 俺はその場で膝をつき、呆然としていた。

 とどまること無く噴き出す血が、俺を赤く染め上げる。

 

 俺の親友は、死んだ。


  ■  ■  ■  ■


「部長! 彩瀬ちゃんが追ってきます!」

 金地が転びそうになりながら言ってきた。

「急げ! 追いつかれたら殺されるぞ!!」

 僕――明智涼太は早口で叫び、後ろを見た。

 速い。逃げられるわけがない。そう思った。だが、諦めない。だって、僕は――――。

 ふいにエリスの横顔を見る。

 ――――まだやりたいことはたくさんある。こんなわけの分からない化物に殺されてたまるか。

 だが、もう追いつかれてしまう!

「クソッ! もう少し! もう少しでロックが……」

 青いスマホを操作しながら、耀人が悔しそうに叫んだ。

 そして、『テケテケ』の気色悪い足音がすぐ後ろに――――。

 刹那、『テケテケ』がエリスの体を貫いた。

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