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都市伝説は、本物だった。  作者: 日向神 命
第1章 テケテケノキョウフ
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ジョウホウ

 そして俺達は、8月3日の朝から『テケテケ』について調べ始めた。

 …………まあ、そんな情報は5分ちょいで見つかったのだけど。都市研部ウチには情報収集のスペシャリスト、唯山ゆいやま耀人ようと先輩がいるからだ。

 唯山耀人。

 青龍高校3年B組。パソコンの扱いが慣れているため情報収集がトクイ。あらゆるサイトの情報を集め、比較し、この膨大なネットの海から正しい情報のみを見つけ出すことができる天才。しかし、普段部室ではエロサイトを見たりしている変態。(さすがに動画は見ないが)

 なので、俺達都市研部員の一部は『変態先輩』と呼ぶことがある。主にふざけるとき。

「で、何がわかったんですか? 変態先輩」

 少しふざけて問う。

 すると先輩はパソコン画面から目を離し、こっちを向いて言った。

「『変態先輩』はやめてくれっていつも言ってるだろ?」

「わかりました。では、『耀人変態』で」

「さっきよりヒドくなってる!?」

「おっと。『先輩』と『変態』って似てるから間違えちゃいましたー(棒読み)」

「絶対わざとだよね!?」

 とまあ、よくあるようなコントをしたあともう一度、今度は真面目に訊き直す。

「で、何がわかったんですか? 耀人先輩」

「今のコントは必要だったのか? ……まあいい。今から説明するよ。みんなを集めてくれ」


  ■  ■  ■  ■


「――――ということらしい」

 唯山先輩の30分ほど続いた話を、都市研部員9人は黙って聞いていた。

 皆深刻な表情を浮かべている。

 今回先輩が調べて分かったのは、

1、『テケテケ』の話を聞いた者は狙われること。

2、『テケテケ』に捕まった者は上半身と下半身が切断されて死ぬこと。

3、『テケテケ』に殺されたは『テケテケ』になること。

4、『テケテケ』は上半身のみの女の姿で、両手を使い時速100~150㎞で追いかけてくること。

 この4つと、『テケテケ』が出現するきっかけになったらしい、ある事件のことだ。

 その事件は北海道で起きた列車事故だ。

 

 何年か前、冬の北海道のとある駅で『カシマレイコ』という女性が誤って線路に転落し、電車にかれた。上半身と下半身とに切断されたが、あまりの寒さに血管が収縮したために出血が止まり、即死できずに数時間もがき苦しんで死んでいったという。その後上半身が両手を使って立ち上がり、無くなった下半身を求めてどこかへ行った。という記録があるらしい。その『カシマレイコ』という女性の上半身が『テケテケ』だという話らしい。


 まあ、俺達がもう『テケテケ』の話を聞いてしまっている以上、『テケテケ』との遭遇は必然。時速100~150という速さから、見つかれば逃げることはできない、と言っても過言ではない。

 そこでふと、疑問が浮かび上がった。

「なぁ、先輩。『テケテケ』を倒す方法とかないんですか?」

 俺が訊くと、先輩は悔しそうに答える。

「あるにはあるんだが、なぜかそのサイトがロックされていてね……。今必死にロックを解除しようとしているところなんだが、なかなか複雑で……」

「そうですか」

 ていうかこの人、ロック解除したりできんのかよ! すげーな!

 そのとき、HRホームルーム開始を告げる鐘が鳴り、俺達はそれぞれの教室へと向かった。

 言い忘れていたが、今日は授業がある。1学期にある事件のせいで学校閉鎖して、授業日数が足りていないんだと。その事件は……何だったかな……? 思い出せない。


  ■  ■  ■  ■


 今日の授業はとても短く感じられた。四六時中『テケテケ』のことを考えていたからだろうか。休み時間のたびに都市研部員であり同じクラスでもある高瀬たかせ真名美まなみ大谷おおたにけいが何か話しかけていた気がするが、あまり会話を覚えていない。

 ボーッとしながら歩いていると、

「――ねぇ、優くん! ねぇってば!」

「え、何!?」

 突然真名美に肩を叩かれ、驚く俺。

 次に、慧が言う。

「部室、過ぎてるよ!」

「は?」

 あわてて後ろを見ると、確かに部室のドアがあった。

「ゴメン、考え事してて……」

 俺が謝ると、真名美は両手を腰に当てて少し前かがみになり、まさに『ぷんぷん』という擬音語が似合うような体勢で怒った。

「もう! 今日の優くん、なんか変だよ! ずーっと何か考えてて、心ここにあらずって感じかな? 私や慧くんが話しかけても何も答えてくれないし……」

 こんな状況で言うのも変だが、怒っている真名美もいつものように可愛い。その体勢といい、揺れる茶色のポニーテールといい、声といい……。しかも、上目遣いだし。

 そこまで考えたとき、見てはいけないものを見てしまった。

 前かがみになった彼女の襟元から、胸の谷間が覗いているのだ。ピンクの下着もバッチリ見えていた。

 えーっと……。見なかったことにしよう。そうだ、それがいい。

「と、とにかく部室に入ろう」

 まずはその格好をやめさせなければ。

 そう考えた俺は、部室のドアを開けて中に入った。続いて真名美、最後に慧が入ってドアが閉まる。

 部室には、すでに俺達3人を除く全員が揃っていた。

「やっと揃ったな」

 そう言いながら、3年の葉風はかぜ紅葉もみじ先輩が冷蔵庫|(なぜかこの部室には置いてある)から冷たい麦茶の入ったコップを3つ、丸いお盆に乗せて持ってきてくれた。

 きっと今日は暑いからだろう。この先輩はとても気が利く人なのだ。だが――――

「わざわざ注いだりなんかしてないから」

 ――――俗に言う『ツンデレ』という性格なのだからちょっと面倒臭い。

 都市研部のみんなはこの性格のことをちゃんと理解してるからいいのだが、クラスではどうなのだろうか?

 そんな疑問を頭に浮かべながらソファに座る。全員が座ると、『テケテケ』についての話を始めた。


  ■  ■  ■  ■


『6時になりました。まだ校内にいる生徒は、速やかに下校して下さい。繰り返します。6時に………』

 下校を促す放送が鳴り響く。

 あたりは夕焼けでオレンジ色に染まり、町は下校する生徒で溢れている。全校生徒800人を優に超える学校で、ほぼ全員が部活に入っているため、この時間は高校生が大勢外にいるのだ。

「じゃあ、また明日部室で」

 俺達も校門付近で別れようとしていた。そのとき。

「ね、ねぇ。あそこ、何かいない?」

 真名美が、学校を出てすぐ前にある薄暗くて細い路地を指差して言った。声が少し震えている。

「え、どこだよ?」

 他の部員たちもそちらを見る。薄暗くてよく見えない。何かが動いている。ペタ……、ペタ……と、こちらに向かってくるその物体はついに、俺達に姿を見せた。

「え…………?」

 街灯を反射して不気味に光る、血まみれの女性。その下半身は無く、手だけで歩いている。

「まさか……本当に……!?」

 伝説通りの姿。そう、それは――――


「……テケテケだ」


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