トウチャク
結論から言うと俺の心配は杞憂に終わり、何事もなく涼太先輩と合流できた(もちろん本物だ)。涼太先輩に今朝のドッペルゲンガーのことについて話しながら歩いていると、すぐに目的の地へと到着した。
「ここに、都市伝説の秘密が……?」
地図の場所には、大きな家────屋敷と言った方が適当だろうか────があった。俺逹の目の前には大きな門。そこから東西にのびる白い塀。門の向こう側には途轍もなく広い庭があり、そこに大きな木造の屋敷がある、という感じだろうか。
芝生だったであろう庭には雑草が高く生え伸びていて、手入れはもう何ヶ月も、下手すると何年もやっていないようだ。
門にかかった表札には「石田」と書いてある。この名字を見て思い浮かぶ人間がいるのだが、偶然だよな?
「すみませーん! どなたかいらっしゃいませんかぁー!」
あらん限りの大声を出すが、屋敷には届かないようだ。
「仕方ない。入るか」
そう言うと、涼太先輩は門の敷居を跨ぎ、敷地内へと侵入した。
「え、勝手に入って大丈夫なんですか?」
真名美が驚きの声を上げる。涼太先輩はこういうことはあまりしなさそうなイメージだったため、俺も少し驚いた。
「入り口からで聞こえないなら、屋敷の前まで行くしかないだろ?」
それもそうだなと思い、俺も敷居を跨いで入った。
敷地内に入ると、その庭の広さが十二分にわかった。学校のグラウンドの2倍くらいはあるんじゃないだろうか?
2、3分ほど邸内を歩いて、ようやく屋敷の玄関前に着いた。壁面や扉の一部には蔦が這っている。庇の隅には大きな蜘蛛の巣があった。
「じゃあ、押すぞ?」
俺と真名美がコクンと頷くと、先輩が古びたインターホンを押した。音は鳴らなかった。
「あれ……?」
「そのインターホンは壊れてますよ、先輩」
ふと扉がガラリと開き、中から声がした。聞き覚えのある声。中から出てきた人物はというと────
「誠───⁉︎」
都市伝説研究部の1年、石田誠その人だった。




