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都市伝説は、本物だった。  作者: 日向神 命
第3章 ドッペルゲンガーノキョウフ
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ジョショウ〜ドッペルゲンガーノキョウフ〜

 綺麗な満月の夜のことだった。

 月明かりの差す部屋で、電気も付けず、少女は怒りのままにベッドをナイフで刺し続けていた。

 少女の名は、零宮(れいみや)梨璃(りり)

 都市伝説研究部に所属しており、8月3日にテケテケの襲撃で命を落とした零宮奥真の妹である。

 だが、テケテケの存在を知らない彼女は、奥真の死因は都市伝説研究部にあると考えていた。

「あの妙な部活の人達の所為でお兄ちゃんはいなくなった……」

 涙を流しながら、しかしその涙を拭おうともせず、ベッドにナイフを突き続ける。

 裂かれた毛布の中に詰まっていた羽毛が部屋中に舞う。

 月が雲に覆われ、部屋が暗くなった瞬間、梨璃は背後に人の気配を察した。

「誰……? どこから入ってきたの……?」

 人影は彼女の質問には答えず、逆に少女に問いかけた。

「お兄ちゃんを殺した人達のこと、嫌い?」

 人影が発した声は恐ろしく冷たく、まるで身体が凍りついてしまいそうな声音だった。

「殺したい?」

 人影が問う。

 梨璃はしばしの逡巡の後、答えた。

「はい……。お兄ちゃんを私から奪った奴ら……。嫌い……。大嫌い……。殺したい‼︎」

 剥き出しの憎悪を込め、梨璃は叫んだ。

 雲が動き、月明かりが差し込んでくる。人影の姿が露わになった。

 前髪は眉より少し上で綺麗に揃っており、腰よりも下まで伸びた長い黒髪。その先も真っ直ぐに切り揃えられている。まるで、おかっぱをそのまま伸ばしたような髪型である。

 服装は梨璃も見憶えのあるもので、青龍高校の女子の制服の夏服であった。しかし白を基調とした水色のラインの涼しげな色ではなく、真っ黒で紫色のライン。

 その色合いに、梨璃は言い知れない恐怖を覚えた。

「そう。じゃあ、あなたのその憎悪を使わせてもらおうかしら」

 日本人形のような少女は、妖艶な笑みを浮かべて言った。

「え……ッ⁉︎」

 訳がわからず驚く梨璃。少女はその首を掴むと、なにやら呪文のような言葉を唱え始めた。

「う……あ……ッ」

 苦しみだした梨璃の首に、黒く光る不気味な文字が浮かび上がる。それは首から上下に広がっていき、数十秒で彼女の身体を黒に染め上げた。

「あなたは、ドッペルゲンガーを産み出す者となるのよ……。ふふっ」

 笑いながら少女が首から手を離すと、漆黒に染まった梨璃は力無くベッドに倒れ込む。

 既に意識の無い梨璃に向かって、

「そうそう、私の名前は多田峰妖香」

 少女は────多々峰妖香は最初に受けた質問に答えた。

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