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都市伝説は、本物だった。  作者: 日向神 命
第2章 クチサケオンナノキョウフ
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シュウショウ〜クチサケオンナノキョウフ〜

「お前……憶えてないのか……?」

 周りの音が消えた気がした。

 俺のさりげない一言に対する真名美の言葉が、想像もしなかったから。

 その後いろいろ質問した結果、真名美の頭からは、慧、奧真先輩、エリス先輩、金地についての記憶だけが跡形もなく消えていることが分かった。幼馴染は俺1人だけ。都市伝説研究部は6人。2年B組は39人だという。全てからこの4人の存在が消えている。

 一体どういう事なんだ? 真名美の中からあの4人の存在だけがきれいさっぱり消えているなんて……。まるで、パズルのピースが1つだけ欠けてしまったかのように。

 俺は考えた。4人に共通する点は何か。

そしてそれは、すぐに思い至った。

 そう、4人とも、この夏テケテケに殺された部員なのだ。

 真名美が4人を忘れていることと、4人ともテケテケに殺された部員だということは、間違いなく何か関係がある。

 だが、いくら考えようとも答えには辿り着けず、俺は頭を抱える。

 微妙な雰囲気の中、観覧車は下に到着した。俺達は遊園地のスタッフさんの指示に従って観覧車を降り、遊園地の出口へと向かう。

 突然、俺と真名美のケータイが同時に鳴った。

 2人同時ということは、おそらく涼太先輩だろう。そう思って画面を見た俺は、戦慄した。


 送信者のところには


  唯山耀人


  と、そう表示されていたから。


「なんだよ、これ……ッ」

 来るはずのないメール。死んだはずの人間の名。

 とにかくメールを開いてみる。

『都市伝説に関係している地を発見した。地図を送っておくから、その場所に行ってみてほしい』

 少し長めの文章を要約すると、そんなことが書いてあり、最後に画像が添付されていた。

「どういうこと……? なんで耀人先輩から……」

 真名美が不安そうにこっちを見る。

 と、俺のケータイの着信音が鳴った。画面には、今度こそ涼太先輩の名が表示されていた。

 急いで通話ボタンを押して電話に出る。

『優……! お前にもメールは届いてるか!?』

 焦っているような声音で、涼太先輩が尋ねてくる。

「はい、届いてます。今、真名美も一緒にいるんですけど、同時に届きました」

『真名美もいるのか。……今どこにいるんだ?』

 それに対し、おそるおそる答える。

「あ……ゆ、遊園地……です。隣町の……」

『はぁ……? お前らは学校をサボってなにやってんだ……』

 額に手を当てて呆れている涼太先輩の顔が容易に思い浮かぶような声音だった。

『まあいい、話を戻そう。まず、届いたメールは時間指定のものだろう。だから、今頃死んだはずの耀人からメールが届いても不思議じゃない。俺が気になるのは、なぜ今なのか・・・・・・ということだ』

 確かにそうだ。どうして今日に指定したのか。そもそも時間指定などせずに、書いたそのときに送ればよかったはずだ。

『だけど、唯一それを知っている耀人はすでにこの世にいない。真相は闇の中ってやつさ。……とにかく、俺達にできることはメールに添付されていた地図の場所に行ってみることだ。明後日行くことにしよう』

「え? 明日行きましょうよ? なんで明後日なんですか?」

 俺が素で聞き返すと、再度呆れた声で涼太先輩は答えた。

『お前、熱で頭がおかしくなったんじゃないだろうな? 明日は金曜で学校があるだろうが』

 だから俺はこう言った。

「休めばいいんじゃないですか?」

 それを聞いて、再三呆れた声で涼太先輩は言った。

『あのなぁ……平日の昼間に学生が外をうろついてたら、補導されかねないぞ。お前らが誰にも怪しまれずに、隣町まで遊びに行けただけで奇跡に近い。あと、普通に考えてそんなことしてはいけないだろう。だから、明後日だ』

 最もな意見である。状況が状況なだけに、感覚が少し麻痺していたようだ。

 そこまで正論を言われたら、納得せずにはいられない。

「……わかりました。行くのは明後日ですね」

『あ、あと、明日はちゃんと学校に来るんだぞ? 話したいこともある』

「はい。……では」

 短く返事をして通話終了のボタンを押そうとしたとき、真名美の顔が視界に入り、ふと疑問を口にした。

「あ、先輩? 都市伝説研究部って、全部で何人でしたっけ?」

 先輩はさも当然のように答えた。

『何人って……。6人に決まっているだろう?』


 ◼︎ ◼︎ ◼︎ ◼︎


やはり、4人が存在していたという事実そのものが消えている。真名美からも、涼太先輩からも、そしておそらく他の全ての人間からも忘れられているんだ。

 だが、何故だ? 俺の記憶だけは改竄されずに、まだ4人の存在を憶えている。

 が、その理由は今はわからない。もしかすると、それもすべて明後日わかるのかもしれない。

 俺は明後日を待ち遠しく思いながら、薄暗くなった遊園地を後にした。

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