ツギナルカイイ
『……高校生連続殺人通り魔事件について、2ヵ月たった現在も、警察は犯人の手掛かり1つ掴むことが出来ず、調査を断念することを発表しました。次のニュースです……』
テケテケが皆を殺してから、2ヵ月もの月日が流れた。
俺達は、1週間後の文化祭で展示する都市研新聞を発行するため、いろいろと忙がしい日々を送っていた。
まだ、4人の死という現実を乗り越えられたわけではないが、いつまでも引きずっているわけにもいかない。
他の皆がどう考えたのかは分からないが、俺としては、死んだ4人の分も生きて行こうと思った。
ピンポーン。
「優くーん」
チャイムの音と、俺を呼ぶ声が聞こえた。
真名美だ。
真名美はあの日から、学校に行く前に必ず俺を呼びに家まで来るようになった。
ガチャ、とドアを開けると、いつも通り制服姿の可愛い幼馴染み、高瀬真名美が待っていた。
「学校行こ」
「なぁ、いつも言ってるけど、お前は家で待ってていいんだぞ? 俺が迎えに行くからさぁ」
真名美の家からここに来ると、学校までが少し遠くなるからだ。
「いいの。私が勝手に来てるだけだから」
そう言うと、真名美は玄関に座る。
「まぁ、お前がいいんなら俺はいいけどさ……。ちょっと待っててくれ」
鞄を取りに自分の部屋へ向かう。
ベッドの上のシーツは真っ白で、あの日慧の血で真っ赤に染まったとは思えない。
――あれからもう、2ヵ月か……。
俺は机の上から鞄を取り、玄関に急いだ。
■ ■ ■ ■
「おはよう、2人とも」
部室に行くと、耀人先輩が挨拶してきた。
「「おはようございます」」
真名美と俺は揃って挨拶する。
あの日から、みんな色々あったが、一番立ち直ることができなかったのは耀人先輩だ。自分のせいでみんな死んだ、もっと速くロックを解除できていれば……と嘆いていた。
そして、1ヵ月ほど不登校になった。
学校に来なくなった耀人先輩がまた学校に来るようになったのは、紅葉先輩のおかげだ。だが、何をしたのか紅葉先輩に訊いても顔を赤らめて黙秘権を使用するし、耀人先輩に訊いてもさらっと話を変えられて教えてくれなかった。
まぁこの話は置いといて。
「何か記事になる物は見つけましたか?」
途中経過を訊いてみる。
「ん? まあね。優は?」
「俺はあんまり……」
そうか……。もう見つけないとヤバイよな。
都市研部では、記事にするものを最低でも1人1つは見つけなければいけないことにしている。ちなみに一番遅かった人は罰ゲームが待っているらしい。
早く探さないとな……。
「真名美は見つけた?」
「バッチリ!」
即答かよ……。
こりゃほんとヤバイな……。今日は授業中にでもネットで探そうかな。
と、校則を破ることを決意したとき、HRの予鈴が鳴った。
■ ■ ■ ■
「はぁ……」
部室に向かうために廊下を歩きながら、俺は深く溜息をついた。そりゃ溜息もつきたくなるさ。
なぜなら、授業中にケータイで記事になりそうな物を探していたが見つからず、挙げ句ケータイを扱っていたことはばれてしまい没収され、今まで職員室で説教を受けていたからだ。
それだけならまだしも、学食を買うためのお金を家に忘れてきてしまうし、真名美におごってもらっているのを誰かに見られて噂が立ったり、なんかよく転ぶし、体育でボールが顔面に直撃したりと不幸が続く。
これほどまでに不幸だと、もしかしたら俺の右腕はあらゆる異能の力を打ち消す能力を持っているんじゃないかと思えるほどだ。
そんなことを考えながら部室のドアを開けると、なにやら不穏な空気が流れていた。
「優か。ちょっとこれを見てくれ」
涼太先輩が2つ折りされた紙を差し出してきた。
「何ですかこれ?」
訊きながら受け取り、開いてみる。
――そう、これが俺達を襲う、次なる怪異の始まりだった。