ジョショウ ~テケテケノキョウフ~
この作品は残酷な描写が多々あります。耐性の無い方はご遠慮ください。
「…ッハァ……ハァッ……ハァッ……」
クソッ…………。何であんなのがこの世にいるんだよっ……。
今、走る俺達を追いかける何かがいる。そいつは、人間の上半身だけの怪物。手を使い、ものすごいスピードで走ってくる。
「……おい優……!何だよあいつはッ……」
俺の右隣を走る慧が、息を切らしながら尋ねてくる。
「……俺に、訊くな……よっ……」
ペチャペチャというとても不快な音を立てながら、追いかけてくる。
奴の名は「テケテケ」。都市伝説とかでよく聞く、あいつだ。
「やばい!!もう、すぐそこ……ッ!!」
慧が叫んだときにはもう、テケテケは俺たちの前にいた。
一呼吸遅れて、俺の右側に熱くドロドロした液体が降り注ぐ。反射的に触れる。
街灯にてらされて、俺の手にベチョリとついた赤い液体が光った。
それが慧の血だと気付くのに、さほど時間はかからなかった。
右側を見ると、腰から上がない、人の下半身があった。血は延々と噴き出し続けている。
すぐ後ろには上半身が落ちていた。血溜まりの中のそれは、もう動かぬ肉塊と化していた。
恐怖に歪んだまま動かない慧の顔が、彼の死を物語っていた。
吐き気がこみ上げてくる。口を手で覆うと、不思議と吐き気は治まった。
前を見るともう、テケテケの姿は無かった。
俺はその場で膝をつき、呆然としていた。
止まること無く噴き出す血が、俺を赤く染め上げる。
8月3日、俺の親友が死んだ。